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聖女を求めて
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王都マクルストから西へ三日程歩くとサーベルブラックジャガーの縄張り、マクルバレーン山があり、その山から西は農耕の国ドルバレーンの領土となる。
山に用はないからわざわざ登る必要はないということで、優弥達は山を迂回してドルバレーン領に入った。
ドルバレーンは緑豊かな土地だった。道の両脇には田んぼが広がり、まるで日本の田舎のような風景が続く。マクルストとドルバレーンは友好国ということもあり、国境付近でも牧歌的な雰囲気となっている。
そんな風景を眺めながら西へ二日程進むと、王都ドルバレーンがある。この世界では王都などの首都の名前がそのまま国の名前になるそうだ。優弥としてはややこしいことこの上ないが、ヴァルデールではそれが常識なので気にしている人はいないらしい。
王都マクルストが中世の街並みでいかにもファンタジーなイメージを受けたので、王都ドルバレーンも似たようなものだと勝手に思っていたのだが趣が全く違っていた。
家は木材で出来ているものも多く、街の至るところに木が生えている。建物が均一に並べられていはせず、点々と建っているので自分が今どこにいるのかがわかりにくい。
地面はぼこぼこと隆起し、ところどころ木の根が飛び出ていてかなり歩き難く、城に向かうにつれて上り坂となっている。その訳は、城が一本の大樹をくり貫いてできているからだ。さらに、この国自体がその樹の根の上にある。
優弥達一行は一週間程の旅路を終えてマクルバレーンについて早々、城に向かって根の道を上っていた。傾斜は緩やかなところもあったり急なところもあったりとばらばらだ。建物がまばらに建っているのも相まって、この国に慣れていないとかなり進み難い作りとなっている。
「ユウヤ殿、ここは迂回するように進みます。この先には壁のように根がそびえ立っていますので」
一行の先頭、道案内を勤めるのはヴェルディス隊長だった。
本来なら兵長となった優弥が部隊長としてこの国を訪れるつもりだったのだが、マクルバレーンは慣れていないと城に辿り着くのも一苦労だと言って、ヴェルディス隊長がわざわざ案内役を買って出てくれたのだ。
ヴァルデールに不馴れな優弥にとってはありがたかったが、隊長が兵長と一緒に他国になど来て良いのだろうか。隊長の仕事を分担させるために兵長がいるのに、隊長が一緒にいては元も子もない。
そういった厳しい意見もあった。主にデルバー副隊長からだが。
そんなデルバー副隊長はというと、優弥の後ろに肩で息をしながら着いてきていた。
通常ならば、兵長となって初任務の場合は副隊長が同行する習わしなので、お目付け役として同行していた。
「デルバー副隊長、大丈夫ですか?」
吹き出すかのように汗をかきながら優弥になんとかついてきているデルバー副隊長に声を掛ける。
「だいっ……ゼーハーゼーハー、じょぶだっ……! ゼーハーゼーハー」
デルバー副隊長は魔法部隊を指揮する魔法使いだ。やはり後衛である魔法使いは体力に物を言わせる行動は苦手なのだろうと思った。
しかしそういった認識は正しくないとヴェルディス隊長がこっそりと教えてくれる。
「確かに、魔法使い系の兵は身体を鍛えるのを疎かにしがちではありますけど、旅を行うのに最低限の体力は持ち合わせています。進軍するのだって体力はいりますからね。デルバーは学者肌というか、研究熱心で身体を鍛えるのを特に疎かにしているんです。それでも魔法を使わせたらマクルストでも五指に入る程ですから、副隊長にまで上り詰めたんですけど」
と、複雑そうに苦笑いをした。
優弥は振り返った。サーベルブラックジャガー戦で『溶炎の投石』を見ていなければ、目の前で根に足を捕られてまるで芸人のように派手に転んだデルバー副隊長がそんなすごい人物だとは思えない。
「くはっ……はっ、くそっ! この根めっ! ゼーハーゼーハー……燃やし尽くしてやろうかっ……!」
飛び出ている根を燃やすということは、この国の城に火を点けると言っているようなものなのだが、そんなことを気にする余裕はないようだ。
なんだか憐れにすら思えてくる。
本当に火を点けられて、国交問題に発展させられたらたまらないと思ったのか、ヴェルディス隊長は上るペースを落とし、なるべく城にまっすぐ向かうのではなく、少し遠回りをしてでも地面が落ち着いてる道を選んで進んで行った。
優弥は全く問題なかったが、デルバー副隊長もなんとかついてきて、ドルバレーンに到着して二時間程で上り坂の頂上、ドルバレーン城に辿り着いた。
それは神秘的な光景だった。一本のあまりにも大きな大樹がそびえ立つ。そしてその一面には大きな門が取り付けられていた。
ドルバレーン城はこの大樹の中にある。大樹をくり貫いて作られたのだ。
まるで絵本の中に迷い込んだかのような光景に、優弥は思わず心が弾む。だが、お伽噺のようなお城だけが原因ではない。
その中にいる人物、聖女の存在だ。
ヴァルデールに来て、初めて出会う元の世界の人物。
自分の知っている人ではないだろう。そんな奇跡みたいなことがあるわけない。だが、せめて日本人でいてくれたら。それだけでコミュニケーションが取れるかどうかの問題はクリアできる。
これから会う人物に思いを馳せ、優弥は緊張と恐怖で胸が高鳴っている。
ヴェルディス隊長が門番と二、三言葉を交わした。
そして、門番の合図をきっかけに、大樹に取り付けられた扉がギギギギと重苦しい音を立てながら開いていく。
山に用はないからわざわざ登る必要はないということで、優弥達は山を迂回してドルバレーン領に入った。
ドルバレーンは緑豊かな土地だった。道の両脇には田んぼが広がり、まるで日本の田舎のような風景が続く。マクルストとドルバレーンは友好国ということもあり、国境付近でも牧歌的な雰囲気となっている。
そんな風景を眺めながら西へ二日程進むと、王都ドルバレーンがある。この世界では王都などの首都の名前がそのまま国の名前になるそうだ。優弥としてはややこしいことこの上ないが、ヴァルデールではそれが常識なので気にしている人はいないらしい。
王都マクルストが中世の街並みでいかにもファンタジーなイメージを受けたので、王都ドルバレーンも似たようなものだと勝手に思っていたのだが趣が全く違っていた。
家は木材で出来ているものも多く、街の至るところに木が生えている。建物が均一に並べられていはせず、点々と建っているので自分が今どこにいるのかがわかりにくい。
地面はぼこぼこと隆起し、ところどころ木の根が飛び出ていてかなり歩き難く、城に向かうにつれて上り坂となっている。その訳は、城が一本の大樹をくり貫いてできているからだ。さらに、この国自体がその樹の根の上にある。
優弥達一行は一週間程の旅路を終えてマクルバレーンについて早々、城に向かって根の道を上っていた。傾斜は緩やかなところもあったり急なところもあったりとばらばらだ。建物がまばらに建っているのも相まって、この国に慣れていないとかなり進み難い作りとなっている。
「ユウヤ殿、ここは迂回するように進みます。この先には壁のように根がそびえ立っていますので」
一行の先頭、道案内を勤めるのはヴェルディス隊長だった。
本来なら兵長となった優弥が部隊長としてこの国を訪れるつもりだったのだが、マクルバレーンは慣れていないと城に辿り着くのも一苦労だと言って、ヴェルディス隊長がわざわざ案内役を買って出てくれたのだ。
ヴァルデールに不馴れな優弥にとってはありがたかったが、隊長が兵長と一緒に他国になど来て良いのだろうか。隊長の仕事を分担させるために兵長がいるのに、隊長が一緒にいては元も子もない。
そういった厳しい意見もあった。主にデルバー副隊長からだが。
そんなデルバー副隊長はというと、優弥の後ろに肩で息をしながら着いてきていた。
通常ならば、兵長となって初任務の場合は副隊長が同行する習わしなので、お目付け役として同行していた。
「デルバー副隊長、大丈夫ですか?」
吹き出すかのように汗をかきながら優弥になんとかついてきているデルバー副隊長に声を掛ける。
「だいっ……ゼーハーゼーハー、じょぶだっ……! ゼーハーゼーハー」
デルバー副隊長は魔法部隊を指揮する魔法使いだ。やはり後衛である魔法使いは体力に物を言わせる行動は苦手なのだろうと思った。
しかしそういった認識は正しくないとヴェルディス隊長がこっそりと教えてくれる。
「確かに、魔法使い系の兵は身体を鍛えるのを疎かにしがちではありますけど、旅を行うのに最低限の体力は持ち合わせています。進軍するのだって体力はいりますからね。デルバーは学者肌というか、研究熱心で身体を鍛えるのを特に疎かにしているんです。それでも魔法を使わせたらマクルストでも五指に入る程ですから、副隊長にまで上り詰めたんですけど」
と、複雑そうに苦笑いをした。
優弥は振り返った。サーベルブラックジャガー戦で『溶炎の投石』を見ていなければ、目の前で根に足を捕られてまるで芸人のように派手に転んだデルバー副隊長がそんなすごい人物だとは思えない。
「くはっ……はっ、くそっ! この根めっ! ゼーハーゼーハー……燃やし尽くしてやろうかっ……!」
飛び出ている根を燃やすということは、この国の城に火を点けると言っているようなものなのだが、そんなことを気にする余裕はないようだ。
なんだか憐れにすら思えてくる。
本当に火を点けられて、国交問題に発展させられたらたまらないと思ったのか、ヴェルディス隊長は上るペースを落とし、なるべく城にまっすぐ向かうのではなく、少し遠回りをしてでも地面が落ち着いてる道を選んで進んで行った。
優弥は全く問題なかったが、デルバー副隊長もなんとかついてきて、ドルバレーンに到着して二時間程で上り坂の頂上、ドルバレーン城に辿り着いた。
それは神秘的な光景だった。一本のあまりにも大きな大樹がそびえ立つ。そしてその一面には大きな門が取り付けられていた。
ドルバレーン城はこの大樹の中にある。大樹をくり貫いて作られたのだ。
まるで絵本の中に迷い込んだかのような光景に、優弥は思わず心が弾む。だが、お伽噺のようなお城だけが原因ではない。
その中にいる人物、聖女の存在だ。
ヴァルデールに来て、初めて出会う元の世界の人物。
自分の知っている人ではないだろう。そんな奇跡みたいなことがあるわけない。だが、せめて日本人でいてくれたら。それだけでコミュニケーションが取れるかどうかの問題はクリアできる。
これから会う人物に思いを馳せ、優弥は緊張と恐怖で胸が高鳴っている。
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