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聖女の正体
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中はまるで教会のようだった。
広い空間に一方を向いてベンチが均等に並んでいた。
その先は一段高くなって祭壇がある。
その上部には丸くくり貫かれた窓があり、そこから流れ込む光がとても神秘的に見えた。
樹をくり貫いて作られているというからもっと狭いと思っていたら、意外と広かった。これも空間拡大魔法の力だろうかと考えていると、鐘が鳴った。
辺り一面に鳴り響くくらいの大きな鐘の音。
音の感じからすると、どうやらこの城の上の方で鳴らしているようだ。
鐘は四回鳴った。一体何の鐘なのかと思っていると、ぞろぞろと大勢の人が城の中に入ってきて、ベンチに座っていく。
優弥達はベンチに座らず、壁の方に避けていく。
一体何の人達なのだろうか。何やら怪我をしている人が多いような気がするが……。
「もしかして」
優弥ははっとしてヴェルディス隊長を見た。隊長は優弥の意図を読み取って頷く。
「はい、これから聖歌が始まります」
優弥は祭壇の方に目をやる。これからここに聖女が現れるらしい。
優弥の鼓動が高鳴る。ドキドキと痛いくらいに。
緊張していた。どんな人物が現れるのか。ちゃんと言葉は通じるのか。そもそも、本当に優弥と同じ異界人なのか。
ガチャリと扉の開く音がした。
祭壇の脇に大きな箱があり、その隣に扉があったのだ。
やって来た人物はとても恰幅の良い人物だった。しかし、服装はきちんとしていて、威厳たっぷりである。
「あの方が、ドルバレーンの国王、ヤスティス様です」
ヴェルディス隊長がひそひそと教えてくれた。まだ肩で息をしているデルバー副隊長が煩かったので、聞き取るのに大分苦労したが。
ヤスティス国王はつかつかと祭壇の前でやって来て、これまた威厳たっぷりに咳払いをする。
「皆の者、今週もご苦労であった。世界では、まだまだ農耕の大変さが理解されない。怪我をする者も多くいるというのに、治癒魔法使いは戦争に駆り出され、我々は時が傷を癒してくれるのを待つしかない」
優弥は隊長を見た。本当にそんなことがあるのだろうか。兵ばかりを治療して、他の人達が我慢を強いられるだなんてことがあっていいのだろうか。
「確かに、戦争などでは治癒魔法使いを連れていきますが、国にも常駐の治癒魔法使いを残しておきます。我が国では」
そこで優弥ははっとした。
「この国で治癒魔法使いをどこに配置するのかを決めるのは、あの方ですから」
ヴェルディス隊長はヤスティス国王を見ながら冷静に言い放つ。どうやらヴェルディス隊長にも思うところはあるらしい。
「まあ、治癒魔法の使い手は貴重だがな。ウチにだって、六人しかいないんだ。ドルバレーンはもっと少ないかもな」
真剣な目でデルバー副隊長が教えてくれた。疲労で壁にもたれ掛かってさえいなければもっと格好がつくのだが。
「ぶおっほんっ!」
こちらがひそひそと言っているのを横目で見て、ヤスティス国王はもう一度大きく咳払いをした。
「それでは登場していただこう、聖女様!」
ヤスティス国王が入ってきた扉に声を掛ける。
ベンチに座っている人達の視線がその扉に注がれる。思わず立ってしまっている者もいた。
優弥も前屈みになってしまっている。
ガチャリと再び扉が開いた。まずやって来たのは一人の兵士。その兵士の後ろに一人の女性がいた。
その兵士に促されるようにして、女性は祭壇の前まで進む。
「あっ」
優弥は思わず声を上げてしまう。
小さかったので、隣にいたヴェルディス隊長とデルバー副隊長にしか聞こえなかったようだった。
優弥は聖女を見たことがあった。名前も知っている。
知ってはいるのだが、すぐに出てこなかった。
(えーっと、なんだったけかなあ)
クラスメイトに彼女の大ファンがいて、いつも彼女の話をしていた。
優弥はあまり興味がないのでいつも適当に聞き流しているだけだった。
(昨日の歌番組のパフォーマンスが最高だったとか、ドラマにちょっと出てたとか)
それは覚えているのだが、肝心の名前を思い出せない。
なかなか思い出せず、焦ってしまう。焦る必要などまったくないとわかってるのに。
日本人で、しかも名前までわかるという奇跡的な状況に舞い上がっているのかも知れない。
(えーっと、たしか……う、うー……)
優弥は必死に思い出す。クラスメイトとの会話。日常の、何でもないあの日のこと。
クラスメイトが楽しそうに話している顔が浮かんでくる。確かに聞いた、あの子の名前を。
「歌川 香澄ちゃん!」
優弥の声が響き渡る。思い出せた喜びでつい大きく出してしまった。
聖女が驚きながら優弥の方を見た。
そう、彼女は日本のトップアイドルグループの一つ、アイリッシュのリーダーで、センターを任されている歌川 香澄、その人だっー……
「違うわよ」
「え?」
ではないようだ……。
「それはウチのセンターでしょ。私はその隣にいる館花 円香よ」
彼女はものすごく不機嫌そうに答えた。
それを見て、優弥は自分が大失敗をしてしまったことを悟った。
広い空間に一方を向いてベンチが均等に並んでいた。
その先は一段高くなって祭壇がある。
その上部には丸くくり貫かれた窓があり、そこから流れ込む光がとても神秘的に見えた。
樹をくり貫いて作られているというからもっと狭いと思っていたら、意外と広かった。これも空間拡大魔法の力だろうかと考えていると、鐘が鳴った。
辺り一面に鳴り響くくらいの大きな鐘の音。
音の感じからすると、どうやらこの城の上の方で鳴らしているようだ。
鐘は四回鳴った。一体何の鐘なのかと思っていると、ぞろぞろと大勢の人が城の中に入ってきて、ベンチに座っていく。
優弥達はベンチに座らず、壁の方に避けていく。
一体何の人達なのだろうか。何やら怪我をしている人が多いような気がするが……。
「もしかして」
優弥ははっとしてヴェルディス隊長を見た。隊長は優弥の意図を読み取って頷く。
「はい、これから聖歌が始まります」
優弥は祭壇の方に目をやる。これからここに聖女が現れるらしい。
優弥の鼓動が高鳴る。ドキドキと痛いくらいに。
緊張していた。どんな人物が現れるのか。ちゃんと言葉は通じるのか。そもそも、本当に優弥と同じ異界人なのか。
ガチャリと扉の開く音がした。
祭壇の脇に大きな箱があり、その隣に扉があったのだ。
やって来た人物はとても恰幅の良い人物だった。しかし、服装はきちんとしていて、威厳たっぷりである。
「あの方が、ドルバレーンの国王、ヤスティス様です」
ヴェルディス隊長がひそひそと教えてくれた。まだ肩で息をしているデルバー副隊長が煩かったので、聞き取るのに大分苦労したが。
ヤスティス国王はつかつかと祭壇の前でやって来て、これまた威厳たっぷりに咳払いをする。
「皆の者、今週もご苦労であった。世界では、まだまだ農耕の大変さが理解されない。怪我をする者も多くいるというのに、治癒魔法使いは戦争に駆り出され、我々は時が傷を癒してくれるのを待つしかない」
優弥は隊長を見た。本当にそんなことがあるのだろうか。兵ばかりを治療して、他の人達が我慢を強いられるだなんてことがあっていいのだろうか。
「確かに、戦争などでは治癒魔法使いを連れていきますが、国にも常駐の治癒魔法使いを残しておきます。我が国では」
そこで優弥ははっとした。
「この国で治癒魔法使いをどこに配置するのかを決めるのは、あの方ですから」
ヴェルディス隊長はヤスティス国王を見ながら冷静に言い放つ。どうやらヴェルディス隊長にも思うところはあるらしい。
「まあ、治癒魔法の使い手は貴重だがな。ウチにだって、六人しかいないんだ。ドルバレーンはもっと少ないかもな」
真剣な目でデルバー副隊長が教えてくれた。疲労で壁にもたれ掛かってさえいなければもっと格好がつくのだが。
「ぶおっほんっ!」
こちらがひそひそと言っているのを横目で見て、ヤスティス国王はもう一度大きく咳払いをした。
「それでは登場していただこう、聖女様!」
ヤスティス国王が入ってきた扉に声を掛ける。
ベンチに座っている人達の視線がその扉に注がれる。思わず立ってしまっている者もいた。
優弥も前屈みになってしまっている。
ガチャリと再び扉が開いた。まずやって来たのは一人の兵士。その兵士の後ろに一人の女性がいた。
その兵士に促されるようにして、女性は祭壇の前まで進む。
「あっ」
優弥は思わず声を上げてしまう。
小さかったので、隣にいたヴェルディス隊長とデルバー副隊長にしか聞こえなかったようだった。
優弥は聖女を見たことがあった。名前も知っている。
知ってはいるのだが、すぐに出てこなかった。
(えーっと、なんだったけかなあ)
クラスメイトに彼女の大ファンがいて、いつも彼女の話をしていた。
優弥はあまり興味がないのでいつも適当に聞き流しているだけだった。
(昨日の歌番組のパフォーマンスが最高だったとか、ドラマにちょっと出てたとか)
それは覚えているのだが、肝心の名前を思い出せない。
なかなか思い出せず、焦ってしまう。焦る必要などまったくないとわかってるのに。
日本人で、しかも名前までわかるという奇跡的な状況に舞い上がっているのかも知れない。
(えーっと、たしか……う、うー……)
優弥は必死に思い出す。クラスメイトとの会話。日常の、何でもないあの日のこと。
クラスメイトが楽しそうに話している顔が浮かんでくる。確かに聞いた、あの子の名前を。
「歌川 香澄ちゃん!」
優弥の声が響き渡る。思い出せた喜びでつい大きく出してしまった。
聖女が驚きながら優弥の方を見た。
そう、彼女は日本のトップアイドルグループの一つ、アイリッシュのリーダーで、センターを任されている歌川 香澄、その人だっー……
「違うわよ」
「え?」
ではないようだ……。
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