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聖女・館花 円香
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整った大人びた顔立ちだが、どこか幼さが残る。ぱっと見の印象だと優弥よりも年上に見えなくもないが、よくよく見ると中学生と思えなくもない。
聖女と呼ばれた女の子、館花 円香はそんな子だった。
実際、円香は十七才。優弥よりも一つ下である。
そんな年下の、ややつり目気味の目に睨まれて、優弥は目を泳がせながらたじろいでいる。
「えっと……、ごめんなさい」
優弥は円香に向かって頭を下げた。
周りの人達は何が起きたのかわからないようで、ざわざわと声を上げながら様子を伺っている。
「ユ、ユウヤ殿?」
優弥の隣でヴェルディス隊長が困惑気味に声を掛ける。
「聖女とお知り合いなんですか?」
「いえ、俺が一方的に知ってるだけです。彼女は、元の世界では有名人なので」
優弥がヴェルディス隊長と話しているのを不思議そうに見ながら、聖女が優弥に訊ねる。
「あなた、その人の言ってることがわかるの?」
「え?」
何を言っているのか優弥には理解できなかったが、よくよく考えるとおかしなことに気付く。
「隊長、さっき彼女が何て言ったかわかりますか?」
「は? いや、まったくわかりませんが……」
隊長は困惑気味に答える。
「館花さん、今、隊長が何て言ったかわかりましたか?」
「え? タイチョー、ってその人のこと? 何言ってるのか全然わからないわよ」
円香も隊長と同じように困惑気味に答えてくれた。
(どういうことだ?)
優弥が二人に話し掛ける言葉には何も違いはない。
それなのにヴェルディス隊長と円香は優弥の言葉を理解しているが、お互いの言葉を理解できていないようだ。
「き、貴様っ! 聖女様の言葉がわかるのか!」
いつの間にか、ヤスティス国王が優弥の目の前まで迫ってきていた。
「え、え?」
優弥は思わず身を引く。
「聖女様に歌を歌ってくれと頼め!」
ヤスティス国王は優弥の肩を掴み、ものすごい勢いでガクガクと揺らす。隣のヴェルディス隊長がヤスティス国王を制止させようとしているくらいに激しかった。
ヤスティス国王の行動は人に頼んでいる態度とは思えないが、このままでは円香と落ち着いて話すことが出来ないと判断し、優弥はヤスティスを手で制して円香に向き直る。
「ヤスティス国王が歌を歌ってほしいと」
「そのおじさん、国王だったんだ……やけに偉そうだったから……」
円香は驚いた、というよりも若干引いてるようだ。
優弥は苦笑していた。確かにあまり良い王とは感じてはいなかったが、言葉が通じない円香までそう思うとなると、ますますもって王としての器に疑問を感じてしまう。
「とりあえず、目の前の問題を終わらせないと、落ち着いて話ができないわね」
円香はため息混じりにそう言った。
ベンチに座っている人達のざわめきは収まらない。
不安そうな目で円香を、そして優弥のこともチラチラと横目で見ている。
「逃げないでよね」
鋭い視線と共にそんな言葉が飛んできた。
「も、もちろん」
わざわざ会いに来たのだから逃げるわけがないのだが、円香の視線と言葉に圧倒され、少し弱腰に答えてしまった。
それが悪い方に取られてしまったようで、円香は疑いの目で見ている。
優弥は苦笑で返すしかなかった。
円香は短いため息を吐いてか、一本の杖を掲げた。
それは入ってきた時からずっと右手に持っていたものだ。
白く、綺麗な杖で、オレンジ色でキラキラとしたラメのような装飾が施されている。先端のデザインは特殊で、ソフトボールくらいのオレンジ色の球体が付いており、その周りに同じ色の棒状の物が浮かんでいる。まるで太陽を彷彿とさせるようなデザインだった。
円香はその先端の部分を口許まで持ってくる。
そして、すぅっと小さく息を吸って目を閉じた。
そして、聖女はゆっくりと歌い始めた。
それは小さな歌声だったが、皆はちゃんと聞こえているようだった。
「あの杖には音声拡大魔法がかかっているんだな」
優弥が不思議に思っていると、教えてくれたのは以外にデルバー副隊長だった。こういった時の役割はヴェルディス隊長なのに。
「音声拡大魔法は魔法使いがよく使う魔法の一つだ。遠くまで魔法を届けたい時、もしくは広範囲に届けたい時に使用する」
「そんな魔法が……」
そう驚いたのはヴェルディス隊長だった。もちろん優弥も驚いていたのだが、ヴェルディス隊長も知らなかったようだ。
「身体強化魔法の一種だから誰でも使いやすいし、魔法使いにとっては初歩の魔法だが、他の者にとってはあまり馴染みのない魔法ではあるかな」
「そうなのか」
ヴェルディス隊長が驚いているのが嬉しいのか、デルバー副隊長が照れながら詳しく説明してくれる。こんなに饒舌なのはなかなか珍しい。
「ぶおっほん!」
しゃべっていると、ヴェルディス隊長の隣にいたヤスティス国王がこちらを横目で見ながら咳払いをした。
どうやら話し声が少々大きくなってしまったようだ。
三人はばつが悪そうに押し黙り、おとなしく聖女の歌声に耳を傾ける。
元の世界ではトップアイドルグループの一員だった円香の歌声は十七才ながらに素晴らしいものだった。
そこにいる誰もが頬を緩めてその歌声に耳を傾けている。
あの杖にかかっている音声拡大魔法のおかげで皆に歌声が届く。マイク代わりに使用しているのだろう。マイクはマイクだけで音を大きくできはしないのだが、そこを魔法の力で補っているのか。まったく大したものだ。
なんて呑気に考えていた。しかし、優弥は途中で気付いた。
この中で唯一言葉がわかるかるので歌の歌詞の、というよりもその歌の意味に。
(もしかして、とんでもないことをするつもりなんじゃ……)
聖女と呼ばれた女の子、館花 円香はそんな子だった。
実際、円香は十七才。優弥よりも一つ下である。
そんな年下の、ややつり目気味の目に睨まれて、優弥は目を泳がせながらたじろいでいる。
「えっと……、ごめんなさい」
優弥は円香に向かって頭を下げた。
周りの人達は何が起きたのかわからないようで、ざわざわと声を上げながら様子を伺っている。
「ユ、ユウヤ殿?」
優弥の隣でヴェルディス隊長が困惑気味に声を掛ける。
「聖女とお知り合いなんですか?」
「いえ、俺が一方的に知ってるだけです。彼女は、元の世界では有名人なので」
優弥がヴェルディス隊長と話しているのを不思議そうに見ながら、聖女が優弥に訊ねる。
「あなた、その人の言ってることがわかるの?」
「え?」
何を言っているのか優弥には理解できなかったが、よくよく考えるとおかしなことに気付く。
「隊長、さっき彼女が何て言ったかわかりますか?」
「は? いや、まったくわかりませんが……」
隊長は困惑気味に答える。
「館花さん、今、隊長が何て言ったかわかりましたか?」
「え? タイチョー、ってその人のこと? 何言ってるのか全然わからないわよ」
円香も隊長と同じように困惑気味に答えてくれた。
(どういうことだ?)
優弥が二人に話し掛ける言葉には何も違いはない。
それなのにヴェルディス隊長と円香は優弥の言葉を理解しているが、お互いの言葉を理解できていないようだ。
「き、貴様っ! 聖女様の言葉がわかるのか!」
いつの間にか、ヤスティス国王が優弥の目の前まで迫ってきていた。
「え、え?」
優弥は思わず身を引く。
「聖女様に歌を歌ってくれと頼め!」
ヤスティス国王は優弥の肩を掴み、ものすごい勢いでガクガクと揺らす。隣のヴェルディス隊長がヤスティス国王を制止させようとしているくらいに激しかった。
ヤスティス国王の行動は人に頼んでいる態度とは思えないが、このままでは円香と落ち着いて話すことが出来ないと判断し、優弥はヤスティスを手で制して円香に向き直る。
「ヤスティス国王が歌を歌ってほしいと」
「そのおじさん、国王だったんだ……やけに偉そうだったから……」
円香は驚いた、というよりも若干引いてるようだ。
優弥は苦笑していた。確かにあまり良い王とは感じてはいなかったが、言葉が通じない円香までそう思うとなると、ますますもって王としての器に疑問を感じてしまう。
「とりあえず、目の前の問題を終わらせないと、落ち着いて話ができないわね」
円香はため息混じりにそう言った。
ベンチに座っている人達のざわめきは収まらない。
不安そうな目で円香を、そして優弥のこともチラチラと横目で見ている。
「逃げないでよね」
鋭い視線と共にそんな言葉が飛んできた。
「も、もちろん」
わざわざ会いに来たのだから逃げるわけがないのだが、円香の視線と言葉に圧倒され、少し弱腰に答えてしまった。
それが悪い方に取られてしまったようで、円香は疑いの目で見ている。
優弥は苦笑で返すしかなかった。
円香は短いため息を吐いてか、一本の杖を掲げた。
それは入ってきた時からずっと右手に持っていたものだ。
白く、綺麗な杖で、オレンジ色でキラキラとしたラメのような装飾が施されている。先端のデザインは特殊で、ソフトボールくらいのオレンジ色の球体が付いており、その周りに同じ色の棒状の物が浮かんでいる。まるで太陽を彷彿とさせるようなデザインだった。
円香はその先端の部分を口許まで持ってくる。
そして、すぅっと小さく息を吸って目を閉じた。
そして、聖女はゆっくりと歌い始めた。
それは小さな歌声だったが、皆はちゃんと聞こえているようだった。
「あの杖には音声拡大魔法がかかっているんだな」
優弥が不思議に思っていると、教えてくれたのは以外にデルバー副隊長だった。こういった時の役割はヴェルディス隊長なのに。
「音声拡大魔法は魔法使いがよく使う魔法の一つだ。遠くまで魔法を届けたい時、もしくは広範囲に届けたい時に使用する」
「そんな魔法が……」
そう驚いたのはヴェルディス隊長だった。もちろん優弥も驚いていたのだが、ヴェルディス隊長も知らなかったようだ。
「身体強化魔法の一種だから誰でも使いやすいし、魔法使いにとっては初歩の魔法だが、他の者にとってはあまり馴染みのない魔法ではあるかな」
「そうなのか」
ヴェルディス隊長が驚いているのが嬉しいのか、デルバー副隊長が照れながら詳しく説明してくれる。こんなに饒舌なのはなかなか珍しい。
「ぶおっほん!」
しゃべっていると、ヴェルディス隊長の隣にいたヤスティス国王がこちらを横目で見ながら咳払いをした。
どうやら話し声が少々大きくなってしまったようだ。
三人はばつが悪そうに押し黙り、おとなしく聖女の歌声に耳を傾ける。
元の世界ではトップアイドルグループの一員だった円香の歌声は十七才ながらに素晴らしいものだった。
そこにいる誰もが頬を緩めてその歌声に耳を傾けている。
あの杖にかかっている音声拡大魔法のおかげで皆に歌声が届く。マイク代わりに使用しているのだろう。マイクはマイクだけで音を大きくできはしないのだが、そこを魔法の力で補っているのか。まったく大したものだ。
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