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聖女になりて
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私の場合はうさぎだったわ。
新曲のダンスレッスンを終えて帰ろうとレッスン場を出た時、目の前の草むらの中に何か光るものがあったの。
最初は週刊紙か何かのカメラかと思った。でもそれにしては光は弱かったし、ぼんやりとずっと光ってた。
気味が悪かったけど、見なかった振りをしても後味が悪そうだから意を決して草むらの中を覗いてみたの。
そしたら、そこにいたのが弱く光るうさぎだった。
最初は不気味だったけど、弱ってるみたいで丸くなったまま全然動かなかったから、心配でちょっと触っちゃったの。
そしたら光に包まれて、急に地面がなくなってどんどん落ちていって。
最初はバラエティー番組のドッキリかと思ったわ。
でも落ちてる時間がやたら長いし、それに目の前にいた光るうさぎも一緒に落ちちゃってるし、どうなってるのか全然理解できなかった。
パニクってたら急に浮いて、地面に着地した。それと同時に、目の前にいたうさぎがこの杖に変わったのよ。
もう何が何だかわからなかった。
辺りを見回すと、そこは寂れた村のはずれのようだったわ。
日本の地方の、じゃなくてテレビの向こう側でしか見たことのない、中東とかの戦争中の村のような。
ますます持ってパニックになってた私に、一人のおじいさんが声を掛けてきた。
おそらく村の人だったんだろうけど、詳しくはわからない。何を言ってたのかわからなかったから。私も必死でコミュニケーションを取ろうとしたんだけど、おじいさんが何を言ってるのか全然わからないし、私が何を言いたいのかも全然わかってもらえなかった。
二人して困ってたんだけど、おじいさんがついてこいみたいなジェスチャーで歩き始めたの。
私は迷ったわ。でも一人で何ができるわけでもなし、とりえずついていった。
案内されたのは大きな建物だった。と言っても、木でできた掘っ建て小屋みたいなものだったけど。導かれるままに中に入ると、そこには多くの人がいたわ。多くの怪我人と、泣いている子供達が。
…………。
ごめんなさい、今思い出しただけでも気分が悪くなって……。
そこは本当に戦争中の難民キャンプみたいだった。テレビで何回か見たことあったけど、あれは綺麗な部分しか撮ってなくて、本当の現場はこういうものなんだと思い知らされた感じ。
私は気分が悪くなって、呆然としてた。
促されるままに壁の一角に腰を下ろして、ずっと俯いてた。
ぐるぐると色んなことを考えて、どうしていいかわからなくて、怖くなってずっと泣いてたの。
それから二日くらいかな、私はそこに座ってた。
涙も枯れ果てて、あまりの状態に思考も停止してた。
一日に二回、おじいさんが食べ物とお水を持ってきてくれてたの。と言っても、固いじゃがいものようなものと、コップ一杯くらいの水だけど。
私は食欲もなくて、水を一口飲んだだけだった。
その時、一人の男の子が私の目の前で倒れたの。私と一緒で、ずっと泣いてた子だったわ。
私は突然のことでどうしていいかわからなくなって、目の前が真っ白になった。
助けを求めて回りを見たわ。でも、他の人もそんな余裕はないし、いたとしても諦めの目でその子を見てた。
私はどうしていいのかわからなくなってその子を見た。
苦しんでるその子をみて、私はどんどん怖くなっていった。
そして、恐ろしい考えが浮かんだのよ。
そのまま眼を瞑って見なかったことにすればいい、って。
私も、他の人と同じだった。その子のことを助けてあげられる程の余裕なんてなかった。
私はぎゅっと眼を閉じた。他の人の呻き声や、子供達の泣き声がやけに大きく聞こえたように感じた。
私は暗闇の中で、必死に倒れた子の顔を忘れようとした。でも忘れようとすればする程、瞼の裏側に現れるの。
お願いだからいなくなって。そう願ったわ。
その時、ふっと香澄の顔がちらついたの。
私は私が嫌になってた。急に訳のわからないところに来て、言葉も通じなくて、どうすればいいかわからなくて、それなに急に目の前で子供が倒れて。それなのに、私は何もできなくて。
でも違った。私にはできることがあった。
前に、ダンスのレッスン中に香澄が脱水症状を起こして倒れたことがあったの。
あの時の香澄の症状と、目の前の子供の症状が似ていることに気付いた。
私はあの時に学んだことをやったの。
まず、その子に私の水を飲ませた。少しずつだったけど、自分で飲んでくれたから助かったわ。
そして、私と同じようにあまり飲んでない人の水をもらって、私は着ていた服を脱いで四つに破いて濡らしたの。本当は冷水の方が良かったんだけど、そんな贅沢も言ってられないし、そもそも伝わらないだろうし。
濡れた布を額と後頭部と腋の下にはさませて、なるべく静かなところで寝かせたの。
男の子の顔色が少し良くなって、私は安心したわ。
夜になって、なかなか寝付けないようだったから、私は歌を歌ってあげたの。
歌詞は伝わらないだろうけど、ちゃんと寝てもらいたかったから、心を込めて『忘れられない子守唄』を。
しばらく歌っていたら、男の子は眠りについたわ。本当に安心した。
それで心に余裕が出てきて、ふと回りを見たの。
驚いたわ。だって、回りの皆も寝てるんですもの。
新曲のダンスレッスンを終えて帰ろうとレッスン場を出た時、目の前の草むらの中に何か光るものがあったの。
最初は週刊紙か何かのカメラかと思った。でもそれにしては光は弱かったし、ぼんやりとずっと光ってた。
気味が悪かったけど、見なかった振りをしても後味が悪そうだから意を決して草むらの中を覗いてみたの。
そしたら、そこにいたのが弱く光るうさぎだった。
最初は不気味だったけど、弱ってるみたいで丸くなったまま全然動かなかったから、心配でちょっと触っちゃったの。
そしたら光に包まれて、急に地面がなくなってどんどん落ちていって。
最初はバラエティー番組のドッキリかと思ったわ。
でも落ちてる時間がやたら長いし、それに目の前にいた光るうさぎも一緒に落ちちゃってるし、どうなってるのか全然理解できなかった。
パニクってたら急に浮いて、地面に着地した。それと同時に、目の前にいたうさぎがこの杖に変わったのよ。
もう何が何だかわからなかった。
辺りを見回すと、そこは寂れた村のはずれのようだったわ。
日本の地方の、じゃなくてテレビの向こう側でしか見たことのない、中東とかの戦争中の村のような。
ますます持ってパニックになってた私に、一人のおじいさんが声を掛けてきた。
おそらく村の人だったんだろうけど、詳しくはわからない。何を言ってたのかわからなかったから。私も必死でコミュニケーションを取ろうとしたんだけど、おじいさんが何を言ってるのか全然わからないし、私が何を言いたいのかも全然わかってもらえなかった。
二人して困ってたんだけど、おじいさんがついてこいみたいなジェスチャーで歩き始めたの。
私は迷ったわ。でも一人で何ができるわけでもなし、とりえずついていった。
案内されたのは大きな建物だった。と言っても、木でできた掘っ建て小屋みたいなものだったけど。導かれるままに中に入ると、そこには多くの人がいたわ。多くの怪我人と、泣いている子供達が。
…………。
ごめんなさい、今思い出しただけでも気分が悪くなって……。
そこは本当に戦争中の難民キャンプみたいだった。テレビで何回か見たことあったけど、あれは綺麗な部分しか撮ってなくて、本当の現場はこういうものなんだと思い知らされた感じ。
私は気分が悪くなって、呆然としてた。
促されるままに壁の一角に腰を下ろして、ずっと俯いてた。
ぐるぐると色んなことを考えて、どうしていいかわからなくて、怖くなってずっと泣いてたの。
それから二日くらいかな、私はそこに座ってた。
涙も枯れ果てて、あまりの状態に思考も停止してた。
一日に二回、おじいさんが食べ物とお水を持ってきてくれてたの。と言っても、固いじゃがいものようなものと、コップ一杯くらいの水だけど。
私は食欲もなくて、水を一口飲んだだけだった。
その時、一人の男の子が私の目の前で倒れたの。私と一緒で、ずっと泣いてた子だったわ。
私は突然のことでどうしていいかわからなくなって、目の前が真っ白になった。
助けを求めて回りを見たわ。でも、他の人もそんな余裕はないし、いたとしても諦めの目でその子を見てた。
私はどうしていいのかわからなくなってその子を見た。
苦しんでるその子をみて、私はどんどん怖くなっていった。
そして、恐ろしい考えが浮かんだのよ。
そのまま眼を瞑って見なかったことにすればいい、って。
私も、他の人と同じだった。その子のことを助けてあげられる程の余裕なんてなかった。
私はぎゅっと眼を閉じた。他の人の呻き声や、子供達の泣き声がやけに大きく聞こえたように感じた。
私は暗闇の中で、必死に倒れた子の顔を忘れようとした。でも忘れようとすればする程、瞼の裏側に現れるの。
お願いだからいなくなって。そう願ったわ。
その時、ふっと香澄の顔がちらついたの。
私は私が嫌になってた。急に訳のわからないところに来て、言葉も通じなくて、どうすればいいかわからなくて、それなに急に目の前で子供が倒れて。それなのに、私は何もできなくて。
でも違った。私にはできることがあった。
前に、ダンスのレッスン中に香澄が脱水症状を起こして倒れたことがあったの。
あの時の香澄の症状と、目の前の子供の症状が似ていることに気付いた。
私はあの時に学んだことをやったの。
まず、その子に私の水を飲ませた。少しずつだったけど、自分で飲んでくれたから助かったわ。
そして、私と同じようにあまり飲んでない人の水をもらって、私は着ていた服を脱いで四つに破いて濡らしたの。本当は冷水の方が良かったんだけど、そんな贅沢も言ってられないし、そもそも伝わらないだろうし。
濡れた布を額と後頭部と腋の下にはさませて、なるべく静かなところで寝かせたの。
男の子の顔色が少し良くなって、私は安心したわ。
夜になって、なかなか寝付けないようだったから、私は歌を歌ってあげたの。
歌詞は伝わらないだろうけど、ちゃんと寝てもらいたかったから、心を込めて『忘れられない子守唄』を。
しばらく歌っていたら、男の子は眠りについたわ。本当に安心した。
それで心に余裕が出てきて、ふと回りを見たの。
驚いたわ。だって、回りの皆も寝てるんですもの。
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