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夜は更けゆき、暗闇は心を開かせる

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「すごいな。王を前にしても堂々とした振る舞い……完璧にどこぞの王女か貴族の娘だった」

 アデル様に褒められて、私は嬉しいよりも……ギクッとした。元王女なんですとは言えないし……。

「ええーっと、授業の賜物です」

「授業といっても、付け焼き刃だろう?それに普通は緊張するものだ」

「緊張はしてました!でも案外お優しい陛下でしたので、ホッとしました。アデル様のこと、とても大切に思っているのですね」

「あ、あれは……」 

 言葉に詰まるアデル様。陛下の溺愛ぶりが伝わってきた。

 戸惑うアデル様を見れて、私は満足だった。ここまで来てよかったと思った。屋敷にいたら見れない、知らないアデル様がここにはいた。

「さて、休むか」

「はい………って……あの?一緒のお部屋で!?ベットは一つなんですけど!?」

「しかたない。夫婦で来ているからな。広いから端と端で寝れば問題ないだろう」

「そ、そっか!そうですよねー!」

 だ、大丈夫よ!割と私はそのあたりは柔軟性があるの。なぜなら孤児院では小さな子たちの寝かしつけもしていたからだ!そう!アデル様を小さな子たちだと思うのよ!そんな理屈が頭の中を回る。

 私はパスッとフカフカの枕にふわふわの布団に幸せな心地に………ならなかった!

 やはり、気になる。微動だにしないアデル様をつい意識してしまう。ね、寝れない。

 もう目をつぶっているのかしら?そーっと視線だけ動かす。よし。寝てる。お疲れだったのね。私も寝るわよ!寝るんだからね!もう寝れるはず!

 ………ハイ。寝れない。孤児院の子たちなんて妄想役に立たなかった。モゾモゾ私が動くと、パチッとアデル様が紫の目を開けた。思わず、あっ!と声をあげてしまった。

「寝れないのか?」 

「えーと……豪華すぎて……そう!部屋が豪華すぎなんです!」

 まあ、確かになぁとアデル様が頷いた。

「じゃあ、眠れるようにおとぎ話を一つしてやるよ」
 
「おとぎ話ですか?」

 暗闇の中にある弱い明かりの中でアデル様が静かな声で語っていく。

「昔、魔道具を作るのが得意な男の子がいた。作って両親に褒められることが嬉しくて、自分が何を作っているかもわからないくらい作り続けた。男の子が好きな女の子にも喜んで貰えた。だから単純に純粋に作っていた。中には作ったことで世界を変えてしまうものすらあった。だけど、幼くてその作った物がどう使われるか、どんな結果をもたらすか考えていなかったんだ」

 こちらを見ずに、天井を見たまま話を続ける。

「ある日、その男の子は大切な物を失くしていく。最初は両親。次は女の子……一人ぼっちになったとき、自分が作った物で、使ってはいけないと言われていた黒い箱を作動させてしまった。黒い箱は世界を暗い闇へと包んだ」

「なぜ大切な人達はいなくなっていったんですか?黒い箱ってなんですか?」

 私が口を挟むと無言になる。寝て……しまった?

「質問は受けつけてない。話は終わりだ」

 起きてた。そして一方的に話を止めた。

「ええーっ!?もう!?」

 寝ろ!と言われてしまう。逆に話の途中じゃなかった?気になって寝れないわよと思ったが、私は長旅と陛下の謁見で疲れていたらしく、気づくと………朝になっていたのだった。

 朝日が眩しく小鳥はさえずってる。隣にいるはずのアデル様は起きて、もういない。

 この状況で熟睡しちゃった私って………いったい……。
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