犬、やめました。【コミカライズ企画進行中作品】

花澄そう

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遥の過去

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その時、背中あたりにゾワゾワっとした感覚が走った。

首だけで振り返ると、後ろにいる男がポニーテールでむき出しになっている、うなじを舐め回していた。
あまりにも気持ち悪くてにわとりになるんじゃないかと思う位、全身にビッシリと鳥肌が立つ。


「はー、やべー。勿体ぶらずに早くぶち込んじまおうぜ」
息を荒らげた後ろのやつは、私のお尻に固いものを押し付ける。

「まぁ待て。こういうのはじっくり調理した方が絶対楽しいから」

他の男よりも一回り大きな体をした、足元にいるやつがそう言う。
大きなガタイなのに体を触る手はしなやかで、その動きにゾワゾワとした何かが広がる。

そいつは怯えている私をじっと見ると、そういう顔が好きなのか、満足そうな顔をして内ももを撫で回して焦らすようにゆっくりとスカートをまくり上げていく。

そしてブラジャーとお揃いのレースのショーツがあらわになった時、ずっと我慢していた涙が頬を伝った。

そして、足の力が抜けて腕を後ろで拘束されたまま、地面にしゃがみ込んだ。


「ん⋯⋯ぅっ⋯⋯」

この涙は、これから起こるだろう事への恐怖よりも、幼少期から散々嫌がらせを受けてきた『男』にひと時でも心を許してしまった事への悔しさだった。




高校になって、男はマシになったと思っていた。

でも、違ったんだ。

私、勘違いしてた。
やっと気付いた。

優しい顔して本当はしたいだけ。
男の優しさには全部裏がある。

ユウトくんだってそうだった。

私の事ばかり考えているって言いながら、自分の快楽ばっか優先していた。
私が痛いっていっても、絶対止めてくれなかった。
私の事なんて何も考えてくれてなかった。

成長した男はやる事しか頭にない、下半身でしか物を考えれない生き物なんだ。

愛とか恋とか、そんな物、どうでもいい。
ただ、やれたらいいだけなんだ。

ユウトくんもアキラだって、みんなみーんな『男』という生き物は『女』の気持ちなんてこれっぽっちも考えてくれない。

ああ、『男』という生き物は、なんてゴミ屑なんだろう⋯⋯
危うく騙されるところだった。


「あーぁ、泣いちゃったじゃん」
「ヤバーっ。泣き顔チョーそそられるぅー!俺、勃ってきたわ」
「ハハッ、お前は最初からだろ⋯⋯ブッ!!」

鈍い音がしたと思った瞬間、目の前にいた1番大きな男が、いきなり目の前から消えた。

その直後、怒りをはらんだ声が私の鼓膜を揺らした。




「何やってんだ、お前ら」
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