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犬、やめました。
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しおりを挟む「あげるつもり無かったし……。それに、それ、パーティで貰ってたような凄いものじゃないし……」
「なんでだよ。これ凄いじゃん」
「え⋯⋯」
フィギュアを眺めながら興奮したように言う彰は意外と満更でもなさそう?
「限定のシリアルナンバー入りだろ。これ博物館でめちゃくちゃ並んだんじゃねぇの?」
ナンバーが入っている所をトンと指さし言った。
「あ、うん……そうなんだけど」
「お前、俺がトリケラトプス好きなの覚えてたんだな」
「……うん」
覚えていた。
恐竜が好きで、その中でもトリケラトプスが一番好きな事。
彰の部屋を見た時、大人になってもまだ好きなんだって知った。
だって、無機質で必要最低限の物しか置いていないあの部屋に、トリケラトプスのフィギュアが飾られているんだから。
「遥が俺の為に考えて並んだんだろ」
「うん」
「そんなの、パーティの来場者に貰った車や時計やマンションなんかより、断然嬉しいに決まってる」
めちゃくちゃ嬉しそうな顔に胸がギュッと掴まれる。
私、馬鹿だな。
彰も私と一緒なんだ。
オモチャの指輪で喜んでいた私と。
金額なんかじゃなく、何をあげたら喜んでくれるのかを必死になって考えて、それで動いてくれた事が何よりも嬉しいんだ。
確かに物も嬉しいけど、自分の事を考えてくれた気持ち自体が、とても嬉しいんだ。
今さっき、そう感じたばかりなのに
……なんで気が付かなかったんだろう。
「ありがとう。嬉しい」
暗くて無駄に広い駐車場で、やけに嬉しそうな彰の顔が白い歯を輝かせた。
「うん」
その顔に嬉しくなって、頬が一気に緩んで、胸が締め付けられる。
「大事にする」
と言いながら突然、私の首の後ろに手をかけたと思うと、そのまま引き寄せるようにして顔を近づけられてドキッとする。
微笑む彰は、首の角度を少し変えながら私の視界を独占すると、柔らかな唇を重ねた。
彰の胸元に置いた手から、薬指の指輪の存在に幸せを感じながら、私はそっと瞼を閉じた。
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