ただ儚く君を想う 壱

桜樹璃音

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第5章 存在意義

第7話

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「やっと笑った」

「璃桜、笑ってた方がいいよ」

「女子は笑顔が一番だな」


にこりと笑いかけてくれる3人の言葉に、一気にかぁっと頬が熱くなる。


「………私、男ですよ?」


照れ隠しに、そんなことを言って下を向いた。

そんな私の頭にぐっと体重を乗せてくるそうちゃん。
ぐぇ、と声を出せば、色気無いなー、と笑われた。

周りの二人も、楽しそうに笑っていて。
笑い声が、中庭に響いた。


「璃桜、元気出して」


そうちゃんがいて。

平ちゃんがいて。

左之さんがいて。

まるで、昔から一緒にいたかのように、居心地の良い空間に。
…………家族って、こんな感じだったっけ。

ほほ笑みながら、ふと、そう思った。


その後。

何故かそうちゃんにいじられ続け、他の2人に笑われる私を助けてくれたのは、源さんだった。


「あ、璃桜さん」

「源さん。こんにちは」


通りかかった源さんが、私がいると気付くと、笑って声をかけてくれたのだ。


「やっぱり此処だったんだね。歳さんの部屋に来てみて正解だった」


その言葉から考えると、私を探していたみたいだけれど。

用件を聞こうとすれば、丁度私の肩に頭と腕を載せた、にこにこ顔のそうちゃんに先を越された。


「あ、源さん!今日の昼餉は何ですかー?」

「今から考えるところだよ」

「え、じゃあ、俺の好物で!」


わくわくと目を輝かせるそうちゃんに、昔となにも変わんないと、そう思う。

てゆーか、いい加減。


「重いよ」


ぶんぶんと体を振って肩から落とした、白いけれど筋肉質の腕を見ながら、思ったことを口に出す。


「そうちゃんって、小さいころから食べること好きだよね」

「璃桜だってそうじゃん、俺のおやつ奪ってたくせに」

「いや、絶対そうちゃんの方がおやつ多かったよ」


まぁ、それが不満で彼の目を盗んではそうちゃんの分も食べていたんだけど。


「ところで源さん、璃桜に用があんのか?」


左之さんの言葉に、源さんはそうだったと思い出したように頭を掻いた。


「璃桜さん、今、いいかい?」

「駄目です、璃桜は今俺がいじめているところですから」


私が答えるよりも前に、そうちゃんが返事をする。

………これ、デジャブ。
前にもあった気がする。



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