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第6章 泡沫
第1話
しおりを挟む隊士兼小姓となることが決まってから、十日ばかり経っただろうか。
「璃桜―、行くよー」
「待って、そうちゃん!」
だんだんと幕末での生活にも慣れてきて、前までとは比べ物にならないくらい普通に和装をすることができるようになった。
それに伴って、毎日のサイクルも安定してきて。
今では、太陽が昇ればすぐに目を覚ますことができるようになった。
朝は、小姓として歳三の雑用を言いつけられたり、それがなければ最近増えてきた隊士に混じって稽古をしたり、手合せしたりすることもある。
食事の準備も、お手の物。
源さんと一緒に、丁度暇な人を見つけるのも上手くなった。
平ちゃんとそうちゃんの回数が多いのは、隊務をさぼっているからなのかな、なんて、思うようになった。
そして、一日で一番楽しみな時間と言えば。
「はー、極楽」
勿論、この時間だ。
ぽちゃんとお湯がはねて、ゆらゆらと私の周りに湯気が立つ。
何が、極楽なのかって?
そりゃあ、もう、お風呂に決まっているじゃないですか。
「ふー」
一時はどうなる事かと思ったけれど。
近藤さんと一緒に、八木さんに頼み込んで、毎日決まった時間に内風呂を借りることができるようになった。
けれど、やっぱり周りの人の協力は不可欠で。
他の人に入ってこられたらまずいから。
そうちゃんがいつも、私がお風呂へ入っているとき、風呂に面している縁側で八木さんちの子どもたちと遊びながら見張ってくれている。
「あー、璃桜ちゃんだー!」
一番下の子、勇之介が私を見つけて駆け寄ってくる。
男だから、お兄ちゃんにしてってずっと言ってるけれど、如何してだか私はちゃんのままだ。
理由を聞けば、お兄ちゃんはそう兄ちゃんだけで十分だそうで。
勇坊の声で、私が風呂から上がったことに気付いたそうちゃんが、為三郎の手を握りながら近づいてきた。
「もう出たの」
「うん、十分あったまったよ」
「嘘。一日目はあんなに長く入ってたくせに」
そう笑って、為三郎から手を放したと思ったら、髪をわしゃわしゃと拭われた。
「濡れたままだよ? まだ寒いから風邪ひくでしょ」
「大丈夫だって」
ドライヤーがないこの時代だけれども、どうしても今までの癖で少ししか髪を拭かずに風呂から上がってしまう。
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