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第1章 心と気持ち
第2話
しおりを挟む「いいや、今回は、治安維持だろう? 歳」
「ああ、そうだ。さっきも山南さんが言ってくれたが、京から支点を移した勤王派の奴らを取り締まるのが目的だ」
そう言えば、この時期は、前の年に設置された京都守護職の警備が整ってきた時期。
そのため、京都から大坂へ勤王派の志士が拠点を移し、それによって治安が不安定になった大坂を維持しに行くのが大目的。
「そこで、誰が行くかを決めようと思い、此処に呼んだ次第だ」
「俺行きたい!!」
即刻声を上げた平ちゃんをなだめるように近藤さんは言葉を紡ぐ。
「平助、残念だが、もう決めてしまったんだよ。すまないが、平助は今回留守番だ」
「ええー!! 何でですか!! 近藤さん!!」
途端にぶーっと不貞腐れる平ちゃんを、勿論お決まり通りからかうのはそうちゃん。
「留守番だって、……ぷっ」
「うるせぇ!! 総司だって留守番かもしれねぇじゃねぇか!!」
「俺は行くんですー」
「えええ!! 近藤さん!! なんで総司の奴が行くのに俺は留守番なんですか!!」
「まぁまぁ。まずは誰が行くのか聞こうじゃないか」
源さんのなだめる声に、不貞腐れながらも平ちゃんは黙った。
「気を取り直して……」
ごほん、とひとつ咳払いをして、近藤さんは名前を読み上げた。
「前川邸の中で、この出張に行くのは、山南さん、源さん、総司、新八、左之助、一、それに俺だ」
それを聞いて真っ先に私が思ったのは、歳三は行かないんだということ。
何故かその事実に、心の何処かでほっと安堵しているのは気付かないふりをして、続けて話始めた近藤さんを見上げる。
「残りの人は、隊士たちの指南やその他、京での隊務を頼む」
そう言われては、大きな反論は出来ないのだろう、小さな声が隣から聞こえた。
「ええー、俺も行きたかった」
あからさまにしゅんとしょげている平ちゃん。
そりゃあそうだろう、いつも一緒にいるメンバーのほとんどが、大坂に行ってしまうんだから。
私がいることを伝えれば、1人じゃないって思ってもらえるだろうか。
そう思って肩に手を置いた。
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