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本編
23. 決闘ですわ 後編
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私とギードは、互いに剣を押し合う状態になった。ギードが大剣を押し込んでくる。凄い力だ。足が地面にのめり込みそう。
「まずい!いくらお嬢でも、あの大男とまともに組み合ったら……」
「ルイーゼ!」
「大丈夫!」
私は足を踏ん張ると、全力で剣を押した。二つの剣は、徐々に相手の方へ傾いていく。
「何だと……!?」
ギードが焦った声を出した。
魔獣にはスピードだけでは勝てない相手もいる。基礎体力と腕力は、お祖父様に鍛えられたのよ。今でも鍛錬は欠かしてないわ。
「ギード!手抜いてんじゃねえぞ!」
「抜いてねえよ、全力だ!こいつ、細っこい癖に何てぇ馬鹿力だ!」
「仕方ない。強化!」
魔法士のローマンが、ギードの腕に強化魔法をかけた。拮抗していた力勝負が、こちらの劣勢になる。
「ちょ、そんなのあり!?」
「フン。仲間が手伝っちゃ駄目なんてルールは決めてねえよ」
オスカーの指摘に、ローマンが返した。正式な決闘のルール破りではあると思うけど。
「そういうことなら……強化!」
ユリウス様が、私の腕に強化魔法を掛けた。私はまた、相手に向かって剣を押し返す。
「ちっ、そっちも魔法士か。強化!」
ローマンがさらにギードへ強化を掛けてきた。また、押し返される。
「こっちも強化!」
「もう一回、強化!」
強化魔法の応酬である。何度か掛け合った後、ローマンの声が止まった。
「ローマン、何してんだ!」
「もう魔力切れだ」
「何だってえ!?」
ユリウス様が、ダメ押しで強化を唱える。私は、全力で剣を押し返した。
「どっせーい!!」
ついにギードは大剣を落とし、尻餅をついてしまった。さらに剣を向ける私を、ギードが手を挙げて制する。
「待ってくれ!降参だ!」
「それなら、決闘は私の勝ちで良いわね」
「ああ、仕方ない。負けを認める」
ギードは素直に参ったという顔だが、エアハルトはまだ「何で俺たちがこんな新米に……」と呟いていた。
「やったあ!さすがルイーゼ!」
「ユリウス様の強化魔法のおかげです!」
ユリウス様は、私の手を取って喜んでいる。ふと、夕べの彼の手が脳裏によぎった。
私は思わず、手を引っ込めてしまう。
「ルイーゼ……?」
ユリウス様が怪訝な顔をする。私は慌てて、"暁の栄光"の三人の方を振り返った。
「あなたたち。約束通り、有り金を渡してもらうわよ」
「あ~……。勘弁してもらえねえかな。俺たち、あんまり金がねえんだよ。それでベルクフェンリルの退治を請け負ったんだ」
さすがに、それは虫が良すぎるだろう。私は腰に手を当てて、彼らを見下ろす。
「勝負に負けて賭け金も払わないって、有り得ないでしょ」
「そんなこと言われても、無い袖は振れねえ」
「"赫焉の獅子"の孫娘にケンカ売っといて、約束まで反故にするとか……。あんたたちも恐れ知らずだねえ」
「何だって!?あの剣聖レオポルドの孫!?」
「そうそう。しかもルイーゼは、レオポルド公の正統な後継者だよ」
彼らは愕然とした顔になり、土下座する勢いで謝りだした。
「すまん!いや、すいません!俺たち、あんたが剣聖の身内だなんて知らなくて」
「私が剣聖の孫であろうがなかろうが、脅して獲物を横取りするのは、やって良いことではないでしょ。ランツゼルトの憲章を忘れたの?」
我々は、力に秀でているからこそ、人一倍身を律しなければならない。ランツゼルトの定める規約の一つだ。
「は、はい。それは本当に反省してますので……」
「言葉だけでは信用できないわね。……そうね、お金は無しでいいわ。その代わり、お仕置きさせてもらうわよ」
「ルイーゼ、どうするの?」
「お仕置きといえば、お尻ぺんぺんでしょ?」
ニヤリと笑った私に、オスカーがヒュゥっと口笛を吹いた。
「尻を叩くのなら、四つん這いがいいっすね」
「ルイーゼ、強化をかけようか?」
この主従、ノリノリである。
私は「勘弁してくれ~」と平謝りする彼らを促して、四つん這いにさせた。
「せぇのっ!」
三人の尻を、順々に剣の鞘で思いっきり引っぱたく。
ビターン!と良い音がする。
もちろん、一回で済ますつもりはない。私は繰り返し、鞘を振った。
「いってえええ~!」
「お助けぇ~!」
彼らの悲鳴が森に響き渡った。
「まずい!いくらお嬢でも、あの大男とまともに組み合ったら……」
「ルイーゼ!」
「大丈夫!」
私は足を踏ん張ると、全力で剣を押した。二つの剣は、徐々に相手の方へ傾いていく。
「何だと……!?」
ギードが焦った声を出した。
魔獣にはスピードだけでは勝てない相手もいる。基礎体力と腕力は、お祖父様に鍛えられたのよ。今でも鍛錬は欠かしてないわ。
「ギード!手抜いてんじゃねえぞ!」
「抜いてねえよ、全力だ!こいつ、細っこい癖に何てぇ馬鹿力だ!」
「仕方ない。強化!」
魔法士のローマンが、ギードの腕に強化魔法をかけた。拮抗していた力勝負が、こちらの劣勢になる。
「ちょ、そんなのあり!?」
「フン。仲間が手伝っちゃ駄目なんてルールは決めてねえよ」
オスカーの指摘に、ローマンが返した。正式な決闘のルール破りではあると思うけど。
「そういうことなら……強化!」
ユリウス様が、私の腕に強化魔法を掛けた。私はまた、相手に向かって剣を押し返す。
「ちっ、そっちも魔法士か。強化!」
ローマンがさらにギードへ強化を掛けてきた。また、押し返される。
「こっちも強化!」
「もう一回、強化!」
強化魔法の応酬である。何度か掛け合った後、ローマンの声が止まった。
「ローマン、何してんだ!」
「もう魔力切れだ」
「何だってえ!?」
ユリウス様が、ダメ押しで強化を唱える。私は、全力で剣を押し返した。
「どっせーい!!」
ついにギードは大剣を落とし、尻餅をついてしまった。さらに剣を向ける私を、ギードが手を挙げて制する。
「待ってくれ!降参だ!」
「それなら、決闘は私の勝ちで良いわね」
「ああ、仕方ない。負けを認める」
ギードは素直に参ったという顔だが、エアハルトはまだ「何で俺たちがこんな新米に……」と呟いていた。
「やったあ!さすがルイーゼ!」
「ユリウス様の強化魔法のおかげです!」
ユリウス様は、私の手を取って喜んでいる。ふと、夕べの彼の手が脳裏によぎった。
私は思わず、手を引っ込めてしまう。
「ルイーゼ……?」
ユリウス様が怪訝な顔をする。私は慌てて、"暁の栄光"の三人の方を振り返った。
「あなたたち。約束通り、有り金を渡してもらうわよ」
「あ~……。勘弁してもらえねえかな。俺たち、あんまり金がねえんだよ。それでベルクフェンリルの退治を請け負ったんだ」
さすがに、それは虫が良すぎるだろう。私は腰に手を当てて、彼らを見下ろす。
「勝負に負けて賭け金も払わないって、有り得ないでしょ」
「そんなこと言われても、無い袖は振れねえ」
「"赫焉の獅子"の孫娘にケンカ売っといて、約束まで反故にするとか……。あんたたちも恐れ知らずだねえ」
「何だって!?あの剣聖レオポルドの孫!?」
「そうそう。しかもルイーゼは、レオポルド公の正統な後継者だよ」
彼らは愕然とした顔になり、土下座する勢いで謝りだした。
「すまん!いや、すいません!俺たち、あんたが剣聖の身内だなんて知らなくて」
「私が剣聖の孫であろうがなかろうが、脅して獲物を横取りするのは、やって良いことではないでしょ。ランツゼルトの憲章を忘れたの?」
我々は、力に秀でているからこそ、人一倍身を律しなければならない。ランツゼルトの定める規約の一つだ。
「は、はい。それは本当に反省してますので……」
「言葉だけでは信用できないわね。……そうね、お金は無しでいいわ。その代わり、お仕置きさせてもらうわよ」
「ルイーゼ、どうするの?」
「お仕置きといえば、お尻ぺんぺんでしょ?」
ニヤリと笑った私に、オスカーがヒュゥっと口笛を吹いた。
「尻を叩くのなら、四つん這いがいいっすね」
「ルイーゼ、強化をかけようか?」
この主従、ノリノリである。
私は「勘弁してくれ~」と平謝りする彼らを促して、四つん這いにさせた。
「せぇのっ!」
三人の尻を、順々に剣の鞘で思いっきり引っぱたく。
ビターン!と良い音がする。
もちろん、一回で済ますつもりはない。私は繰り返し、鞘を振った。
「いってえええ~!」
「お助けぇ~!」
彼らの悲鳴が森に響き渡った。
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