はずれスキル「ゴミ強化」で、ゴミ扱いされて追放された俺が鬼強化された。実家から帰ってきてほしいと言われたけどもう遅い。

アメカワ・リーチ

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「――ゴミ強化!!」

 俺がそう叫んだ瞬間、ティオの体が光りだした。

「なんだ!?」

 奴隷商人たちは一瞬、その光に驚く。
 だが次の瞬間、

「お前ら、やっちまいな!」

 奴隷商人は、俺が何かを叫んだのを反撃とみなして、配下の盗賊たちに命令を下した。

 先ほどまでティオにナイフを突きつけていた男は光のまばゆさにのけぞっていたが、命令を聞いてすぐにナイフを振りかぶった。

 ――だが。

 ティオは目にも止まらぬ速さで、盗賊のナイフを叩き落とした。

「なに!?」

 予想外の反撃にその場にいた誰もが驚いた。
 
「お前ら、ぼーっとしてるんじゃない! かかれ!」

 奴隷商人がそう叫ぶと、周りの盗賊たちが一斉にティオに襲いかかる。

 だが、ステータスが100倍になったティオに、彼らの動きは遅すぎた。
 ティオは、一斉に飛んでくる攻撃を次から次にさばき、一人、一人と武器を斬り飛ばしていく。

「ば、馬鹿な!」

 あっという間に無力化されていく盗賊たち。

 ティオのそのあまりの強さを見て、盗賊たちは一人また一人と逃げていく。

「おまえら! おい!」

 奴隷商人は逃げ出す男たちを見て、狼狽した様子だった。
 だが、その言葉に反応して、ティオの視線が奴隷商人に向いた。

「く、くそ!!」

 奴隷商人は、魔法攻撃のスキルを発動して、ティオを迎撃しようとした。

「“ファイアーランス・レイン”!!」

 それは上級魔法スキルだった。
 だが、

「ハアッ!!」

 ティオの一閃が、なんなく魔法攻撃を弾き飛ばす。
 
「なにい!?」

 ティオはあっという間に距離を詰め、奴隷商人の首にその剣を突きつけた。

「や、やめろ!! 降参だっ!!」

 奴隷商人は両手を上げてそう宣言した。

「よくやった、ティオ。ありがとう」

「ご主人様のおかげで、急にすごい力が湧いてきたんです!」

 ティオは興奮気味に言う。

「俺の強化スキルの力だな。なんでも、ステータスが百倍になるらしいから」

 ステータス百倍なら、ティオのような新人冒険者でも、ベテランの冒険者に勝るとも劣らない力を得ることができるのだ。

「ご主人様……すごい力をお持ちだったんですね」

「ああ、あまり使いどころはないんだがな……」

 今回も、俺自身はティオのことを「ゴミ」だとは少しも思っていなかったが、奴隷商人達がそう思っていたからこそ、“ゴミ強化”の対象にできたのだ。

「なんにせよ、なんとか二人とも無事に済んでよかったが……」

 俺は、ひざまずく奴隷商人を見る。
 さてこの男をどうするか。

「領主様に引き渡しますか」

 ティオはそう言うが、俺は首を振った。

「俺たちが襲われたという証明もできないし、例え証明できてもコネがあるはずだ。たぶん釈放されてまた同じことを繰り返すはず」

 ティオに対する扱いはひどいし、金目のアイテム欲しさに人を襲う人間だ。
 野放しにはできない。

「ではどうしますか?」

「歯には歯を目には目を、だ。別の奴隷商人に引渡そう」

 俺が言うと、

「ひ!? そんな、お助けを! 何でもします! 奴隷をいくらでもあげますから!!」

 奴隷商人は、涙を流し、頭を地面にこすりつけながら許しを乞う。
 だが、いままでティオや他の人間にしてきたであろうことを想像すると、許す気にはなれなかった。

「一度、奴隷の気持ちを味わってみるといい。いい勉強になるはずだ」

「そ、そんな!!」

 奴隷商人の声がダンジョンにこだまするのだった。
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