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後夜祭⑵
しおりを挟む「気づいているだろう、俺の気持ちに…いやこういう言い方は良くないか…俺は栄人、お前のことが好きだ。もちろん、恋愛的な意味で。だから、キスもしたいし触れていたいと思う。栄人がそう言うことが苦手なんだと思って避けてきたが、そうも言ってられない状況だと思ってな。」
ジッと俺の目を見て話す先輩の目は真剣そのもので、その奥にはゾクゾクするほどに獲物を目の前にしたような熱いものが含まれていて流されそうだ。
「返事は求めない。でも、俺の気持ちは知っておいてほしい。俺的には嫌われてはいないと思うんだが…今日だって誘いに応じてくれたしな…?」
二ヤリと笑った先輩の顔が近づいて来るのをどこか他人事のように見ている俺。
あ、キスしちゃう。そう思った時にはもう口先から甘い痺れを感じていて…
うっすらと開けた視界には先ほど瞳の奥に隠れていた欲情を隠すことなく前面に出た熱い視線にどうしようもなく俺は感じてしまう。
真剣に告白した先輩に対して、返事が出来ないのに失礼だと思いつつも抵抗できない俺は優柔不断なんだろうか…
「別にいい。今は俺だけを感じていればいい…」
俺の考えていることが分かるのか、それを肯定してくれる先輩に身を委ねてしまう。
「栄人……」
「ン、ぁ…ふぅんん……ンっこうき、しぇんぱ……」
切なそうに俺の名前を呼ぶ先輩に思わずすり寄る様にキスをする俺に、何を思ったのか優しく包み込むようなキスがだんだんと激しさを増す。
「やっ、あァん…まっアッ…ン」
「待てない」
激しいキスをやめてくれない先輩にキスされ続けること数分…いや、数十分してたんじゃないかな。俺は…
「はぁー、はぁー、はぁー」
肩で息をして、身体を先輩に預けないと座っておけないぐらい骨抜きにされました、はい。
「これだけでこんなになってたら、これから大変そうだな。」
そう言って笑う先輩はどこか一皮むけた感じがする。
っていうか、これからって…これから何があんの?こわいんだが…
ヒュ~~~ッバーンッ
ちょうどその時、窓から明かりがさす。花火の打ち上げが始まったようだ。
優雅にソファーで花火を見ながら、また穏やかな時間が流れる。
「泊まるか?今日。」
不意に先輩から放たれた言葉に思考が停止する。泊まるか?今日…トマルカ?キョウ…
俺まだ何も返事してないし、それはまずいと思う。
「あ、あーっと今日は帰ります。楽しかったです…は変かな。でも、ありがとうございました。」
そう言って部屋を後にする。危ない危ない、雰囲気に流されるところだった。
これじゃあ、キスフレっていうやつみたいだよな…先輩に失礼か?でも、先輩が嫌なら何か言ってくれるよな?
キレイな花火が真っ暗闇に明かりをともす中、俺は新たな悩みを抱えて自分の部屋に帰るのだった。
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