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後夜祭⑴
しおりを挟む「あれ?栄人どこ行った?」
「さっきまでいたけどな…」
「え~後夜祭栄人を誘おうと思ってたのに~」
尊と徹がそんな会話をしているなんて知らず、俺は今風紀委員長室の前にいる。
覚えているだろうか、文化祭初日に輝樹先輩が俺たちのクラスに会長たちを迎えに来たとき行った言葉を……
俺はその言葉のお陰で今日は朝からドキドキしっぱなしだ。べ、別に何も期待とかしてないし…ただ、輝樹先輩と後夜祭を過ごすだけだし…
俺らしくもなく部屋の前で無駄足をふんでいる。うっ、なんか分からないけど緊張する…
「部屋の前でいつまでも何してるんだ?」
「ッ!はぁ~~~~~~~びっくりしたぁ…輝樹先輩驚かさないでくださいよ…」
「栄人がいつまでも入ってこないからだろう。そんなところで油売ってないで早く入って来い。」
「はい…」
ちょうど扉に背を向けていた時、いつも間にやら開いた扉から輝樹先輩が出て来てて、俺の耳元で囁く。わざわざ囁く内容でもないのに…
そして促されるがまま風紀委員長室へ入る。
風紀委員室には入ったことあるけど、ここは始めてだ。所謂輝樹先輩の部屋みたいなもの。
「適当に寛いでくれ。あ、そうそう。そこの窓から花火が見えるぞ。後夜祭の花火はキレイだと有名だからな、見といて損はないと思うぞ。」
そう言ってキッチンへ行ってしまった。
黒を基調にシンプルにまとめられた部屋は輝樹先輩らしく整理整頓されている。ベッドにテレビ、ソファーやシステムデスクまであり一人暮らしが出来そうなほど揃っている。おまけに今先輩が行ったキッチンまで。
ソファーに座り、窓の方へ目を向ける。もう外は暗がり初めており、花火が映えそうな空だ。
「ほら、カフェオレ。」
そう言って渡されたカフェオレからはほのかに甘い香りが鼻をくすぐる。先輩の方はブラックコーヒーのようだ。解釈一致だわ、出来る男って感じがする。
二人並んでソファーに座り、雑談をする。後夜祭の過ごし方は様々らしいが、校庭のところでイベントが催されており、そこに参加する人が大半らしい。後は校舎内の部屋で静かに過ごす人や帰る人もいて本当に色々なんだとか。
いろんな話をして先輩と俺の間に穏やかな時間が流れる。
「それで、栄人はこのまま何もしないで帰るつもりか?」
ドキッ
「え、何言って…」
「気づいているだろう、俺の気持ちに…いやこういう言い方は良くないか…俺は栄人、お前のことが好きだ。もちろん、恋愛的な意味で。だから、キスもしたいし触れていたいと思う。栄人がそう言うことが苦手なんだと思って避けてきたが、そうも言ってられない状況だと思ってな。」
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