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第81話〈ルシウス視点〉
しおりを挟む「あぁ…もうダメだ。これじゃあ、アナベルとダンスを踊る事も出来ない…」
僕は途方に暮れていた。
全く役に立たない他の生徒会メンバーに期待するのを諦めて、孤軍奮闘してきた。
…アナベルと舞踏会でダンスを踊る為に。
ふと思う。何故、僕はこんなにもアナベルとダンスを踊りたいと思っているんだろう?
今までだって何度かアナベルと夜会に参加して来たし、ダンスの練習だって一緒にした。
それに結婚すれば、嫌でも夜会だ、舞踏会だと、この先何回だってアナベルとダンスを踊る機会はあるはずなのに…。
「なんでかな…?」
と小さく呟いた時に、後ろから、
「なんでだか、教えてあげましょうか?」
と声が聞こえた。
振り向くと、そこには、ニヤニヤしたグレイ・アンダーソンが立っていた。
「何をだ?」
僕は、自分の心の声を口に出していたのだろうか?
「殿下がどうしてこんなにお1人で頑張っているのか…それはベルとのダンスの為ですよね?
だから、ベルが俺と舞踏会に参加する事を許可しなかった…。
俺とベルが踊るのは許せませんか?」
と相変わらずニヤニヤしている。
「…アナベルは僕の婚約者だ。他の男と踊るのは…許可出来ない」
僕は、この男とアナベルが踊っている姿を想像して…胸が苦しくなった。
僕は…やっぱり病気なのだろうか?
最近、良く胸が痛くなる。
やはり医者に診てもらうしかないようだ。
「ふーん。なるほど。でも、好きでもない女が他の男と踊るぐらい別に良いでしょう?」
「ダ、ダメだ!そんな事は…ダメなんだ」
何だか泣きそうになってきた。
なんでこんなに悲しいんだ…。
するとアンダーソンは、
「ベルが他の男と仲良く踊っているのを見るのは辛いですか?腹立たしいですか?…それって何故だかわかりますかね?」
と僕に訊ねた。
この男は、僕が今、何故悲しくなっているのか、その理由を知っているような口ぶりだ。
僕自身がわからないのに、何故この男がわかるんだ?
「わからない…。お前には、理由がわかるのか?」
「わかりますよ。それは…殿下がベルに恋をしているからです」
この男…『恋』と言ったか?恋?恋をすれば人は幸せになるのだぞ?
そう小説に書いてあった。
僕は今、辛く、悲しいんだ。これは恋じゃない。
この男…僕が恋を知らないと思って馬鹿にしているのか?
僕はきっと憮然とした表情をしていたに違いない。
すると、アンダーソンは、
「殿下のその苦しい気持ちは『嫉妬』ですよ。小説にはそんな気持ちは書かれていませんでしたか?」
『嫉妬』?確か、ヒーローの婚約者にヒロインが苛められていたが、それが嫉妬からくるものであると書かれていた。
だが、僕は誰も苛めてなんかいない。
この目の前の男には、イライラさせられているが…苛めてはいないだろう?
そんな事をしたら…アナベルに嫌われてしまうかもしれないじゃないか。
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