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第25話
しおりを挟む「待て待て。それはあくまでも俺の想像……」
とのセドリックの言葉に被せる様に、
「いえ。公爵様の仰る通りです。あの人が部屋をこっそり出たのか、執事……いえ、もうあの人の召し使いみたいになってる……エドがどうにか部屋へ戻そうと説得している所へ私が通り掛かりました。
私は直ぐに自分の身を隠して2人の話をこっそり聞いたんです」
とジュリエッタは固い表情でそう言っ
た。
「ジュリエッタ、何を聞いたの?」
私はセドリックから母の話を聞く前にジュリエッタに尋ねた。
「あの人は『ジュネ公爵がクロエ……お姉さまに私がジュリエッタを害そうとしていた事を話せば、間違いなくお姉さまは自分を何処か遠くへやるだろう。今のうちに家にある金目の物を持って逃げるから、手伝え」とエドに言っていました。それをエドは必死に止めていて。私……それを聞いて、公爵様の怪我が私のせいだと知って……」
とジュリエッタの声は段々と小さくなっていく。
自分の母親が自分に刃物を向けようとした事を知ってショックを受けている筈だ。
私は、
「今、ちょうど公爵からその話を聞こうと思っていた所だったんだけど、ジュリエッタ……貴女、お母様が……そうなった事に心当たりがあるの?」
と優しく尋ねた。
流石に『刺そうとした』と言葉にするのは憚られる。
ジュリエッタは、
「正直に言って、心当たりはあります。しかし……まさか……そんな事で、私を……」
と涙を流した。
セドリックは、
「ジュリエッタ嬢も自分がした事でこんな事になるとは思ってもみなかっただろう。俺だって前侯爵夫人に理由を聞いて……そんな馬鹿げた事で、と思ったんだ。
ジュリエッタ嬢、君が謝る必要はないが、謝罪は受け入れるよ。それで君の心が救われるのであれば。
まだ心の整理がつかないだろう。クロエには俺から話すから、君はゆっくり休むと良い」
とジュリエッタを気遣ってそう言った。
しかしジュリエッタは、
「では1つだけお話させて下さい。私は自分がした事がこんな事態を招くとは思っていませんでした。あの人を……正気に戻す為には仕方ないと、そう思って」
と顔を上げてセドリックへそう言った。
セドリックは、
「君の気持ちはわかっているよ。大丈夫だ」
と頷くと、ジュリエッタは頭を下げて部屋を出て行った。
廊下にはナラが待っていたようだ。ナラはジュリエッタを気遣うように背中を擦ると、部屋の中の私に目で『任せておけ』というように頷いた。
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