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第30話

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母は、

「ラルフ!ねぇ、本当はジュリエッタの事など愛していないのよね?私に語ってくれた貴方の気持ちが本物でしょう?」
とラルフに必死に話しかける。

……ガチ恋め。


「……俺は、あなたを愛した事などない。全ては金の為だった。他のご婦人方も全員そうだ。だけど……間違いだった。
俺は本物の愛を知ってしまった。俺みたいな男が近づく事も許されないような方だけど……それでも好きなんだ……ジュリエッタ嬢が」
とラルフは冷たく母に告げた。

私は、

「はっきりと言ってくれてありがとう。貴方はジュリエッタに何と言われたからあの手紙を母に書いたのかしら?」
とラルフに尋ねると、

「……『俺に熱を上げてるオーヴェル前侯爵夫人は自分の母親だと。母親と関係のあるような男性を好きになる事はないけれど、母と手を切ってくれたら……気持ちが変わるかもしれない』と言われました。
そんな風に言われなくても、彼女を好きになった頃から、ご婦人方の相手をするのが苦痛になっていたので、手を切るつもりではいたんです。ただ……」
と俯いた。

「ジュリエッタの言葉が貴方の背中を押したのかしら?」

「ずるずると関係を続けてしまっていましたが、彼女の言葉が切っ掛けになった事は確かです」

「でも……ジュリエッタと貴方を付き合わせる訳にはいかないわ。あれでもオーヴェル侯爵家の娘なのでね」

「!!……わかってます。俺なんか……釣り合わない……」

「貴方に問題がある訳ではないの。確かに貴方が今までやってきた事は褒められた事ではないけど、反対しているのはそんな単純な事ではないわ。
今だにオーヴェル侯爵家の隙を見つけて潰そうと企む貴族が居るの。貴方が利用されてしまうわ。
母の件でも、随分と非難されたのよ?ジュリエッタまで……となると私もさすがに抑えられない」

「……貴族とは……難しいんですね」

「そうよ?隙を見せれば、直ぐに足を引っ張られてしまう。人間の汚い部分を綺麗な物で隠しているだけ。
貴族ならばそれを理解していなければならないのよ。私の目の前の人は全く理解していないようだけど」
と私が母に目をやると、母は真っ赤になった。

私は母に向き直る。

「ジュリエッタがラルフにそんな事を言った意味が分かる?貴女の目を覚まさせたかったのよ」

「なっ……!?」

「情けないと思わないの?娘にそんな思いをさせるなんて」

「あの子に今まで散々迷惑をかけられていたのよ!どうして私が自由にするのはダメで、あの子は許されるの?!」

「ジュリエッタだって許されていないわ。だから修道院に入っているんじゃない。貴女も許されない。だから修道院へ行くのよ。至極最もでしょう?」
と私が呆れたように言えば、母は口を震わせた。
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