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その5
しおりを挟む「まず、家庭教師の方に今日の欠席を報告に行きましょう」
そうロレッタ様は言うと、私と共に1つの部屋に入っていく。
そこはミシェル殿下と家庭教師が勉強する部屋だという。
「またですか?これでもう何日目でしょうね?
というかまともにこの席に着いた日の方が遥かに少ないのですが…仕方ありませんね」
ロレッタ様が殿下の欠席を告げた後の教師の第一声がこれだった。
どうもミシェル殿下が勉強をサボるのは今日が初めてではないらしい。
教師は大きな溜め息をつくと、部屋を出ていった。
ロレッタ様は、
「さぁ、次は王妃様へ報告書を書くわよ」
「報告書ですか?」
「ええ。ベルガ王国への輿入れが決まってから、ミシェル殿下の我が儘が更に酷くなったの。
今まではそのまま放置だったんだけど、手に負えなくて。
王妃様へ助けを求めたんだけど…一々報告に行くのも馬鹿らしいぐらい多いのよ。
だから、まとめて報告書を上げる事にしたの。
ミシェル殿下の発言と、私達の対応。それと、被害ね」
「被害ですか?」
「そう。今はあの寝起きで投げつけて来る物は枕しか置いてないけど、最初のうちは寝台の周りに色々と置いてたものだから、かなりの物が壊されたわ。
それに、私達だって、毎回避けられる訳じゃない。
花瓶が当たった侍女もいて、怪我をした者もいるの」
「…だから、被害…」
「そう。壊れた物と、侍女が受けた傷の治療にかかった費用も合わせて報告するのよ」
「…わかりました。では、ミシェル殿下はこのまま寝台にずっといらっしゃるのでしょうか?」
「私と貴女が部屋を出て、教師に報告に行ったのをわかってるから、ソロソロ起きてくるでしょう」
「では、教師の方が帰るまで?なら、あの寝起きの悪さは演技なので?」
「いや、あれは元々。物を投げるのは、輿入れが決まってから始まったんだけどね
」
…私は此処を出たら、あれに毎日一人で向き合うのかと思って目眩がした。
この仕事…私には無理なんじゃないかしら?
「あ、でも明日からは貴女が起こすのよ?一刻も早くアレに慣れないと…ね」
私は此処を出るよりも早く、アレに向き合う事が決定した。
反射神経ってどうやったら良くなるんだろう…。
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