隣国へ嫁ぐワガママ王女に付いて行ったら王太子に溺愛されました

初瀬 叶

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その45

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「なんなのよ!なんで、あの男は私を褒めないのよ!」

地獄のお茶会から部屋へ戻るなり、殿下は癇癪を起こした。
中庭からの帰り道の段階で既にかなり不機嫌であったので、私は部屋に着くなり、部屋の中の投げたら壊れそうな物をそそくさと片付けていく。
壊されては堪らない。


殿下はクッションを投げたり、長椅子の背を殴ったりしている。本当にこの人は、一国の王女なのだろうか。


しかしさっきの殿下の言葉について考える。
『なんで、あの男は私を褒めないのよ!』
殿下は確かにそう言った。

で、殿下の何処に褒められる要素があったのだろうか?


「普通、男は女の容姿を褒めるもんでしょう?なのに、何も言わなかったわ!失礼な男!」

ああ、ドレスや自分の容姿を褒めて貰いたかったのか。

私だって、気合いを入れて仕上げたんだから、褒められたかった。
しかし、殿下が最初に何も挨拶せずに着席した段階で、殿下の株は下落の一途だ。
会話…といって良いかわからない程の会話の中にも、殿下が褒められる要素はなかった。

しかし、ここで、私が口を挟んでも、火に油を注ぐだけだ。
私は嵐の過ぎるのを待った。


十数分後、落ち着いた頃を見計らって、殿下を着替えさせる。

お茶会の為に着た、デイドレスもぐちゃぐちゃだ。

一頻り暴れた殿下は、疲れたから寝ると言って寝室へ行った。

私は部屋を片付けながら、溜め息をつく。

この調子で3か月後、殿下とアーベル殿下は婚約出来るのだろうか?


2時間程経ち、夕食時になった頃殿下を起こす。

相変わらず、殿下はこの部屋で夕食を召し上がるのだが、この態度も、この国に馴染もうとしていないと、とられるのではないか…そう思うけど。

「殿下…今日は夕食をダイニングでお召し上がりになりませんか?」
そう私が提案しても、

「嫌よ!あんた、まさか自分が楽したいって思ってるんじゃないでしょうね?」

確かに、夕食を部屋で食べるとなると、私がセッティングも給仕も全て行わなければならない。
しかし、それが面倒で言ってるわけではないのだが、殿下にはそう見えるらしい。

「まさか!とんでも御座いません」
そう否定するも、

「おあいにく様。あんたを楽させるつもりないから、早く夕食の準備をしてちょうだい!」

私は結局、厨房へ夕食を取りに行く事になった。大きな溜め息をつきながら。


夕食を乗せたワゴンを運びながら、3か月後に思いを馳せていると、正面から、今、1番会いたくない人がやって来るのが見える。
私はキョロキョロと周りを見回し、隠れられそうな所を探すも、見当たらない。

そんな私の姿を見て、
「おい。逃げるなよ」
と声を掛けられる。隠れられなかった…。


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