隣国へ嫁ぐワガママ王女に付いて行ったら王太子に溺愛されました

初瀬 叶

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その60

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私は元気に職場復帰した。

しかし、3日ぶりの殿下は…荒れていた。

とにかく機嫌が悪い。
何があったんだ?!

私はユリアに何があったか訊こうとするも、じっと出来る暇がないほどに殿下からの要求が多い。

「髪型が気に入らないから変えろ」
「お茶の味が気に入らないから淹れ直せ」
「足が痛いから揉め」
「肩が痛いから揉め」
「喉が痛いから、ハチミツを持って来い」
「カーテンの色が気に入らないから代えろ」
等々。

命令の度に、私もユリアも右に左に大忙しだ。

夕方になってレジーがやって来たが、レジーの顔色が悪い。

聞きたい事が山ほどあるのに、殿下がその隙を全く与えてくれなかった。


私は、殿下が寝た後に、レジーと話をする事にした。レジーの顔色が悪い事も気になっていたし。

「レジー、大丈夫?顔色が悪いわ」
と私が訊ねると、レジーはしくしくと泣き出した。

レジーの話はこうだ。

アーベル殿下とのお茶会に、ミシェル殿下が着たいと言ったドレスは、お茶会には相応しくない物だった。

レジーは元々平民だ。お茶会には縁はない。
しかし、ミシェル殿下が選んだドレスがお茶会には些か派手である事はわかっていたので、ミシェル殿下にそれとなく進言するも、聞き入れては貰えなかった。

多分、口煩い私が居ないのを良い事に、自分の思い通りの装いをしたかったようだ。それに香水も山のようにつけて。



お茶会で、その姿を見たアーベル殿下は明らかに不愉快そうだったらしい。

しかも、その香水の香りにあてられてアーベル殿下は気分が悪くなってしまった。

いつもにもまして早く終わったお茶会の最後にアーベル殿下は、

「お茶会だというのに、お茶の香りもわからなくなる程の香水をつけてくるなど…。それに、そのドレス…夜会でもそこまで露出はしないのではないか?申し訳ないが、俺にはその振る舞いが理解出来ない』
と言って、その席を後にしたらしい。


レジーは
「私のせいです。私が殿下をお止めしなかったから」
といって泣いている。

一介の侍女が、王女に意見するのは困難だ。
私ですら、一応言葉を選んでいるのだ。
まだ、殿下の侍女になって間もないレジーには無理だ。

「レジーのせいじゃ、ないわ。はっきり言って、殿下の自業自得よ」
と私は言うが、レジーは自分を責めていた。
寝不足になり顔色が悪くなったらしい。

私がいつもダメだと言っている事が、何故ダメなのか理解していない、ミシェル殿下が悪い。

多分、殿下も自分が悪い事に気づいているが、認めたくはないだろう。八つ当たりだ。



機嫌が悪くて扱いにくいが、私にはもうどうする事も出来ない。

ここから、殿下は、名誉挽回できるのだろうか…

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