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気持ち
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英二兄ちゃんとは最終的に私の死後の手続き等の話をした。
英二兄ちゃんは私が『死』という言葉を口にする度に辛そうな顔をする。
ミミの前でもその言葉は極力口にしない様に気をつけているのだが、今回ばかりは話が話なだけに、仕方がない。
誰かに辛い顔をさせたい訳ではないのだが、今の私の状況はそれが難しかった。
学生時代も、社会人になってからも、結構コミュニケーション能力の高い方だった私は、人を笑わせる事が得意だった。自画自賛で申し訳ないが見た目が大人しそうな私は、少し面白い事を言うだけで、そのギャップからか、明るい人に見られる事が多かった様に思う。得だ。
それなのに、今、私の周りに居ると、辛そうな顔をされる。……だからこそ、もう誰にも会いたくない。
しかし、書類のアレコレを確認出来た事は良かった。会わなければわからない事とは、やはり多いのだと思う。
『顔を見ながら話す』って大切だ。
帰り際に、
「また、会えるように祈ってる」
と英二兄ちゃんは言った。お互い無理だと分かっていても、
「うん。またね」
と私も笑顔で答えた。
「話出来た?」
英二兄ちゃんをホテルまで送って来たミミは私にそう言った。
しかしもう面会時間は残されていない。私はミミとの会話もそこそこに、
「うん。話が出来て良かったよ。ミミ、ありがとうね」
とミミにお礼を言った。ミミはいつも私が『ありがとう』と言うと悲しそうな顔をするのに、今回だけは少しだけ嬉しそうな顔をした。
「また、明日来る」
ミミはそう言うと私の洗濯物を入れた袋を持って帰る。
彼は私の下着まで洗濯してる。……これってどうなんだろう。
「ミミ、嫌じゃない?」
「何が?」
「私の世話。洗濯物とか……全部。今は家の事も全部」
と私が言えば、
「食事の用意以外、元々やってただろ?今更どうした?」
「確かに。でも……申し訳ないな……って」
「俺が生きていく上で掛かる費用を払ってもらってるじゃん」
とミミは少しぶっきらぼうに言った。
私はミミが『生きる』って言う言葉を使ってくれた事が本当に嬉しくて、少し言葉に詰まってしまった。……一言でも口にすると、涙が零れそうな私は、頷くだけで精一杯だった。
英二兄ちゃんは私が『死』という言葉を口にする度に辛そうな顔をする。
ミミの前でもその言葉は極力口にしない様に気をつけているのだが、今回ばかりは話が話なだけに、仕方がない。
誰かに辛い顔をさせたい訳ではないのだが、今の私の状況はそれが難しかった。
学生時代も、社会人になってからも、結構コミュニケーション能力の高い方だった私は、人を笑わせる事が得意だった。自画自賛で申し訳ないが見た目が大人しそうな私は、少し面白い事を言うだけで、そのギャップからか、明るい人に見られる事が多かった様に思う。得だ。
それなのに、今、私の周りに居ると、辛そうな顔をされる。……だからこそ、もう誰にも会いたくない。
しかし、書類のアレコレを確認出来た事は良かった。会わなければわからない事とは、やはり多いのだと思う。
『顔を見ながら話す』って大切だ。
帰り際に、
「また、会えるように祈ってる」
と英二兄ちゃんは言った。お互い無理だと分かっていても、
「うん。またね」
と私も笑顔で答えた。
「話出来た?」
英二兄ちゃんをホテルまで送って来たミミは私にそう言った。
しかしもう面会時間は残されていない。私はミミとの会話もそこそこに、
「うん。話が出来て良かったよ。ミミ、ありがとうね」
とミミにお礼を言った。ミミはいつも私が『ありがとう』と言うと悲しそうな顔をするのに、今回だけは少しだけ嬉しそうな顔をした。
「また、明日来る」
ミミはそう言うと私の洗濯物を入れた袋を持って帰る。
彼は私の下着まで洗濯してる。……これってどうなんだろう。
「ミミ、嫌じゃない?」
「何が?」
「私の世話。洗濯物とか……全部。今は家の事も全部」
と私が言えば、
「食事の用意以外、元々やってただろ?今更どうした?」
「確かに。でも……申し訳ないな……って」
「俺が生きていく上で掛かる費用を払ってもらってるじゃん」
とミミは少しぶっきらぼうに言った。
私はミミが『生きる』って言う言葉を使ってくれた事が本当に嬉しくて、少し言葉に詰まってしまった。……一言でも口にすると、涙が零れそうな私は、頷くだけで精一杯だった。
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