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第一章:れんごくの国と約束の娘
10.月の国と不幸令嬢
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それからどれくらいたっただろうか。何故かこの国に来てからレミリアは常に頭に靄がかかるように眠くて仕方がなくて、食事も何もとらずただただ眠っていた。
それなのに、何故か飢えることも体が汚れることもない。その不思議な現象に疑問を持ったが、そもそも猛毒を飲んでここに居て、しかも架空の友人だったルーファスが実体化していること自体がおかしいのでその辺りは幸せに免じて考えることを放棄している。
ルーファスはレミリアが目を覚ますと必ず傍らにいて幸せそうに眼を細めているか、髪を撫でるか、優しい声で話しかけるかでレミリアを甘やかした。
そして、昨日、レミリアはルーファスに声をかけた。
「ねぇ、ルー。前に聞いた私ゲツライコウの咲く丘を見てみたいわ」
「ああ、約束いていたね。そうだねふたりで見に行こう。今行く?それとも少ししてから行く?」
「じゃあ明日行きたいわ」
そう答えた、レミリアをルーファスは困ったように笑った。レミリアが初めて見る表情だった。
「明日は無理だよ。だってこないもの」
「えっ?」
「でも、君が目を次に覚ました時というなら大丈夫だよ。君との約束は絶対に守りたいから」
「それって一晩寝たら明日よね?」
その言葉にルーファスは何か考えているようだ。これは多分レミリアに何かを説明しようとしているということがわかった。
「あのね、レミリア、一緒にこの部屋をでようか」
そう言うとレミリアの手をルーファスが優しく握る。びっくりして赤くなるレミリアを見たルーファスはが美しく笑う。まるで極上のビスクドールか何かのような作り物より美しい顔がレミリアの心臓を殺しに来る。
(本当に美しい人って無自覚で怖い)
「無自覚じゃないって言ったらどうする」
「……ルー私の心読めるの?」
「まさか、でも君は顔に出やすいからすぐわかるよ」
レミリアはゆでだこのように真っ赤になる。そして、頭から湯気でもでそうなレミリアをルーファスはニコニコしながら眺めている。少し意地悪なその様子に余計に胸が高鳴る。
そして、ずっと閉じこもっていた部屋を出たレミリアはそれはそれは驚いた。そこはとても美しい宮殿だった。
アトラス王国の王宮も立派だったが、レミリアはここのが美しいと思った。丸い玉ねぎ型の美しい屋根を持つその宮殿は、随所に細やかな細工がされている。そして、白銀の象牙色に輝いている。さらに空に輝く青い大きな満月も相まってまるで月の宮殿のようだった。
「ここ、お城じゃない」
「そうだよ。レミー、僕はちゃんと君に名前を告げていなかったね、僕の名前はルーファス・アイデース・ムーンティア。ここムーンティア王国の王太子だよ」
永遠に続きそうな長い渡り廊下でルーファスはレミリアの前に跪いて手の甲へキスをする。大きな窓から見える青い満月の下で行われたそれはまるで王子様がお姫様に誓いをする絵本の1ページのように美しい光景だった。
あまりの出来事に真っ赤になったレミリアを満足そうに見つめたルーファスが少し憎たらしくなる。
ムーンティア王国はこの大陸にある王国のひとつだ。ただアトラス王国との国交はずっと昔に途絶えていると本で読んだことがあった。
この大陸には3つの大きな国がある、一番大きいのがサンソレイユ帝国。太陽王と言われる太陽神の化身たる偉大な皇帝が支配する国、レミリアの住んでいたアトラス王国は海神の末裔の王が治める国、そして、今いるムーンティア王国。ムーンティア王国は古くは月の国と言われていたが、今は完全に鎖国されている謎の多い国だ。サンソレイユともアトラスとも一切の交流を行っていないがこの国の王族は月の神の血を引いていて強い魔力を持っていると言われている。
それだけでも謎めいているのだが、このムーンティア王国は外部からの侵入が出来ないように高い塀で覆われており、唯一の入り口である、試練の門は魔法がかかっていて容易には開かず、しかもその門を抜けてしまうと二度と帰れなくなると言われている。
(うそ、その国に私きちゃったの?それもルーファスがこの国の王子様???)
あまりに色々なことがありすぎてレミリアは混乱する。そんなレミリアをまるで砂糖菓子よりも甘い甘い眼差しでルーファスが見つめきたので思わず目を反らす。とても恥ずかしかったから。
「ようこそ、我がムーンティア王国、永遠の夜の国へようこそ。太陽の姫君レミー。ずっと僕は君を待っていたよ。」
「太陽の姫君?」
言われたことのない言葉に首を傾げたレミリアにルーファスは囁く。
「レミー、君は太陽のような人だからそう呼ばせてはくれないかい?」
「ええええええええ、あ、あ」
なんて恥ずかしいことをこの男はいうのだとレミリアは本気で思ったが、それが不快では全くなくむしろ幸せでなんだかずっと忘れていた泣きたい感情が芽生えて来る。
(これが夢でもとても幸せだな……)
そうして、レミリアはルーファスに自分から初めて抱き着いた。彼からはふんわりと沈丁花のような良い香りがした。それがとても愛おしくて仕方なかった。
それなのに、何故か飢えることも体が汚れることもない。その不思議な現象に疑問を持ったが、そもそも猛毒を飲んでここに居て、しかも架空の友人だったルーファスが実体化していること自体がおかしいのでその辺りは幸せに免じて考えることを放棄している。
ルーファスはレミリアが目を覚ますと必ず傍らにいて幸せそうに眼を細めているか、髪を撫でるか、優しい声で話しかけるかでレミリアを甘やかした。
そして、昨日、レミリアはルーファスに声をかけた。
「ねぇ、ルー。前に聞いた私ゲツライコウの咲く丘を見てみたいわ」
「ああ、約束いていたね。そうだねふたりで見に行こう。今行く?それとも少ししてから行く?」
「じゃあ明日行きたいわ」
そう答えた、レミリアをルーファスは困ったように笑った。レミリアが初めて見る表情だった。
「明日は無理だよ。だってこないもの」
「えっ?」
「でも、君が目を次に覚ました時というなら大丈夫だよ。君との約束は絶対に守りたいから」
「それって一晩寝たら明日よね?」
その言葉にルーファスは何か考えているようだ。これは多分レミリアに何かを説明しようとしているということがわかった。
「あのね、レミリア、一緒にこの部屋をでようか」
そう言うとレミリアの手をルーファスが優しく握る。びっくりして赤くなるレミリアを見たルーファスはが美しく笑う。まるで極上のビスクドールか何かのような作り物より美しい顔がレミリアの心臓を殺しに来る。
(本当に美しい人って無自覚で怖い)
「無自覚じゃないって言ったらどうする」
「……ルー私の心読めるの?」
「まさか、でも君は顔に出やすいからすぐわかるよ」
レミリアはゆでだこのように真っ赤になる。そして、頭から湯気でもでそうなレミリアをルーファスはニコニコしながら眺めている。少し意地悪なその様子に余計に胸が高鳴る。
そして、ずっと閉じこもっていた部屋を出たレミリアはそれはそれは驚いた。そこはとても美しい宮殿だった。
アトラス王国の王宮も立派だったが、レミリアはここのが美しいと思った。丸い玉ねぎ型の美しい屋根を持つその宮殿は、随所に細やかな細工がされている。そして、白銀の象牙色に輝いている。さらに空に輝く青い大きな満月も相まってまるで月の宮殿のようだった。
「ここ、お城じゃない」
「そうだよ。レミー、僕はちゃんと君に名前を告げていなかったね、僕の名前はルーファス・アイデース・ムーンティア。ここムーンティア王国の王太子だよ」
永遠に続きそうな長い渡り廊下でルーファスはレミリアの前に跪いて手の甲へキスをする。大きな窓から見える青い満月の下で行われたそれはまるで王子様がお姫様に誓いをする絵本の1ページのように美しい光景だった。
あまりの出来事に真っ赤になったレミリアを満足そうに見つめたルーファスが少し憎たらしくなる。
ムーンティア王国はこの大陸にある王国のひとつだ。ただアトラス王国との国交はずっと昔に途絶えていると本で読んだことがあった。
この大陸には3つの大きな国がある、一番大きいのがサンソレイユ帝国。太陽王と言われる太陽神の化身たる偉大な皇帝が支配する国、レミリアの住んでいたアトラス王国は海神の末裔の王が治める国、そして、今いるムーンティア王国。ムーンティア王国は古くは月の国と言われていたが、今は完全に鎖国されている謎の多い国だ。サンソレイユともアトラスとも一切の交流を行っていないがこの国の王族は月の神の血を引いていて強い魔力を持っていると言われている。
それだけでも謎めいているのだが、このムーンティア王国は外部からの侵入が出来ないように高い塀で覆われており、唯一の入り口である、試練の門は魔法がかかっていて容易には開かず、しかもその門を抜けてしまうと二度と帰れなくなると言われている。
(うそ、その国に私きちゃったの?それもルーファスがこの国の王子様???)
あまりに色々なことがありすぎてレミリアは混乱する。そんなレミリアをまるで砂糖菓子よりも甘い甘い眼差しでルーファスが見つめきたので思わず目を反らす。とても恥ずかしかったから。
「ようこそ、我がムーンティア王国、永遠の夜の国へようこそ。太陽の姫君レミー。ずっと僕は君を待っていたよ。」
「太陽の姫君?」
言われたことのない言葉に首を傾げたレミリアにルーファスは囁く。
「レミー、君は太陽のような人だからそう呼ばせてはくれないかい?」
「ええええええええ、あ、あ」
なんて恥ずかしいことをこの男はいうのだとレミリアは本気で思ったが、それが不快では全くなくむしろ幸せでなんだかずっと忘れていた泣きたい感情が芽生えて来る。
(これが夢でもとても幸せだな……)
そうして、レミリアはルーファスに自分から初めて抱き着いた。彼からはふんわりと沈丁花のような良い香りがした。それがとても愛おしくて仕方なかった。
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