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第三章:恋獄の国と悲しいおとぎ話

46.前世の物語と不幸令嬢(ルーファス視点)18

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(阻害魔法が効いているから絶対に気付かないはずだ)

そう思いながらも体の震えが止まらない。あの塔での出来事は僕の骨の髄までしみていて、正直トリスは恐怖の対象と化していた。

本来なら、殺してやりたいのだが今の僕はトラウマが強すぎてあいつの声が聞こえただけ怯えるほどになってしまっている。

(なんて無様なんだ。レミーナを救うと意気込んでおきながら、実際このありさまだなんて)

しばらく息を殺していたおかげかトリスの声は遠ざかっていった。

「レミーナは無事だろうか……僕があの時、君の手紙をベッドの中などに隠したせいで」

どうしてこうも悪い方にばかりことが進んでしまったのか、後悔ばかりが過るがそんなことよりここを抜け出す必要がある。

気を取り直して魔法で周囲の様子を見る。海の国の騎士たちがあわただしくしている。どこかに向かっているようだ。

(もしかしたら、その先にレミーナが居るかもしれない)

その足取りを追ったところ、城の奧へたどり着いた。そこにはレミーナとヨミと太陽の国の護衛と月の国の密偵がいた。

レミーナを守るように戦う彼らは本来なら城の外に出たいのだが、追い詰められて奥へ奥へと追い込まれている。このままでは城の最上階あたりまで追いつめられるかもしれない。

「このままではまずい、何か方法はないか……」

今この隠れ家にいるのは僕とわずかな密偵のみ。普通に行ったところで足手まといになるだけだ。

(何か良い方法はないだろうか……)

そう考えて、この隠れ家の魔法を思い出した。認識阻害系の魔法、これを使って敵陣側まで行って、この間のヨミのように空からレミーナ達を救えないだろうか。

いや、だとしたらヨミがこの間と同様わざと高層まで誘導しているのかもしれない。

(しかし万が一のことを考えたら、僕も手伝うべきだ)

そう考えて、映像を見ながら僕は密偵をひとり万が一のために残らせてそれ以外を連れて、城へ向かうことにした。

認識阻害魔法はうまくいったようで海の国の騎士達は僕らの横を素通りしていった。

そして、しばらくすると王城までたどり着いた。そのまま入ると見つかる可能性が上がるので、浮遊魔法にて該当箇所まで飛ぶことにした。

(これで何かあった時の保険になるはずだ)

ちょうどその時、目の前でヨミが隙をつかれて敵に攻撃されかけているのが見えた。

(危ない)

僕は咄嗟に魔法で近くにあったものを飛ばしてヨミを助けることができた。しかし、その魔法を使用したせいで僕がそこにいることがバレてしまった。

「殿下、隠れていろと言ったじゃないですか」

「この状況を見てもそんなことができるか」

小言を言うヨミに素知らぬ顔をしてレミーナの元へ僕は下りる。

「いままで助けてくれてありがとう。とても危険な目に遭わせてしまった」

「いいえ、ルーファス様、何としてもここから逃げ出しましょう」

晴れやかに微笑んだレミーナの美しさに胸が躍った、その手をとり浮遊しようとしたその時……

バン

ー渇いた銃声が響いた。
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