世にも不幸なレミリア令嬢は失踪しました

ひよこ麺

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第三章:恋獄の国と悲しいおとぎ話

47.前世の物語と不幸令嬢(ルーファス視点)19

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「っう……」

その銃声と共に飛び出した敵兵の放った弾丸が、僕の左足のかかとらへんを打ち抜いた。激痛が走りバランスを崩した僕はギリギリでレミーナの手を取った状態のまま、高い建物の上から、地面へ墜落していった。

「殿下!!!!!」

聞きなれないヨミの叫び声が聞こえてきた。けれどそれもはるか遠くからだ。

(まずい、このままではレミーナに怪我をさせてしまう)

なんとか地面ギリギリで魔法を再度発動したのでなんとか着地はできたが、足から血が流れて元々魔法の強化で立っていた足はさらに怪我を負ったこともあり立っているだけでも激痛が走る様になってしまった。

「ルーファス様」

レミーナが泣いているのが分かる。これだけ怖い思いをしたのだ悲しくなって当然だ。僕はレミーナを抱きしめた。

その腕の中に確かなぬくもりを感じる。このぬくもりを守るために僕はなんとしても逃げないといけない。魔法でもう一度空を飛ぼうとした時だった。

「ルー。みいつけた」

もっとも聞きたくない声が、すぐ側で聞こえた。そちらを見ればいままでもずっと狂っていると思っていた男が、その今までを塗り替えるくらい狂った顔でこちらをニタリと笑いながら見ていた、その手には血に染まった、銀色に輝く剣が握られている。

「トリス……」

「レミーナ、ああ、よくもだましたな。俺のいとおしいルーファスを奪おうなんて」

「何を言ってるの?元々ルーファス様は私の婚約者です。そしてずっとお互い愛を育んできたのです」

「そうだ、僕はレミーナを愛している、永遠に」

「嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!!!」

狂った男の剣がこちらへ向けられた。それから庇うようにレミーナの前に立つ。

「嘘はだめだよ、ルー。これ以上嘘をつくなら、口がきけないようにしてしまうよ、いや口だけじゃない。まず歩けないようにしないと、手も使えないようにしないと、そして目もみえなくていい。全部全部奪ってしまおう、そうして俺以外が君を愛せないって証明しないと。ははははあはははははは」

けたたましい狂った笑い声をあげて、剣が振るわれた。急いでバリアの魔法をかける。しかし先ほど撃たれた足から血が流れ続けているせいでいつ倒れてもおかしくない。

腕に中にいるレミーナの体温の暖かさとは逆に自身の体がどんどん冷たくなるのが分かる。

(レミーナだけでもなんとか救いたい……)

しかし、救う方法がないまま、いよいよ、トリスの凶刃が僕の体を貫こうとしたその時……

「ルーファス様、危ない!!」

目の前が真っ赤に染まるとはまさにそれを刺すのだろう。僕を庇ったレミーナの胸に深々とそれが突き刺さったのだ。

「レミーナぁああああああああああああああああああああああ」
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