世にも不幸なレミリア令嬢は失踪しました

ひよこ麺

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第五章:真実の断片と

104.海の側近と不幸令嬢02

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「そうか。兄上が僕を助けることがないことは知っている。あの人は面倒なこと全てに関心がないのだから」

「クリストファー殿下??」

ほんの一瞬だけ、側近はクリストファーが正気であるように思えた。しかし、その後はまた、抱きしめているレミリアに話しかけ続けるだけでとても正気ではなかった。

そんなクリストファーを見つめながら、自身の今後を考えて側近は泣きたい気持ちになった。クリストファーは元々跡は継がない予定ではあった。それでも臣下降下する先が公爵家であることも決まっていたし、それが有力なヴァーミリオン公爵家であることが確定していたこと、母親である王妃も公爵家の令嬢で、アトラス国の二大公爵家に連なる方であることを考えて、子爵家の娘の息子で先に生まれただけの王太子より仕えるべき相手と考えていた。それなのに……。

側近はそんなクリストファーを置いて、一旦あらたな隠れ家の外に出た。

(今からでもアトラス国へ報告すべきか、しかしそうなると……)

クリストファーを売ることになる。今もだいぶ旗色が悪いのにさらに悪くなることをどうしても考えてしまう。しかし、これ以上なにかが起これば、自身ともども失脚を免れない。

そう考えて、しかしそれでも今更アトラス国へ連絡することを側近は躊躇していた。サンソレイユ帝国への潜入用の隠れ家もひとつ崩壊させてしまっているという事実も彼を迷わせる要因であった。

アトラス国はサンソレイユ帝国に、間者を放っていた。それは昔から行っている行為であるがそれが今まで掴まれなかったのは隠れ家に魔法の道具があったからだ。しかし、その道具も先ほどガサ入れされて押収された可能性が高い。そうなると魔法の力を持たないアトラス国にとって、古からの大切な魔法道具を失うというこれまた大きな失態を犯したことになる。

そんなことを悩んでいた時だった。

「随分悩んでいるようだな」

男の声が突如背後からして振り返り、思わず固まる。そこには何故か側近が見限ったアトラス国の王太子が立っていたからだ。

(こんなところに来るはずはないのに……)

「ああ、肉体ごととなるとこちらへ簡単にこれないね。しかし精神体だけなら簡単に世界どこでもいける。まぁ本来の肉体が無防備になるのであまり試さないのだけれどね」

「精神体、でもその幽霊にはみえませんが……」

「幽霊ではないからだな。それより君に聞きたいことがある。君はクリストファーの側近。君の主である私の弟はどこにいる」

それは側近が間違いなく彼の行方を知っていると分かっているような聞き方だった。
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