【本編完結】魔王と周りに恐れられる辺境伯ですが他人の婚約者に手を出したと噂の伯爵令息にずっと片思いしています

ひよこ麺

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04.魔王様と平伏す童貞豚野郎(ルカ視点)

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辺境伯領へ向かう、馬車の中で僕は死刑宣告を受けた囚人のようにただ震えていた。当たり前だこのまま行くと僕は殺される。

まだ、死にたくない。大体僕はまだ童貞だ。だからこそ賠償金があんなに莫大なんて絶対おかしい。なんとしてもこの童貞を捨てるためにも生き延びて見せる。

そのためなら、僕を大嫌いであろう、恐怖の大魔王へんきょうはくさまに思い切りおべっかを使う。しかしまずどれくらい嫌いかのバロメーターを測ってみよう。

「……辺境伯様、僕を前線に送られるのですか?」

「何故そう思う??」

あ、だめだ。これ聞いただけで殺されてしまう。もうね、見たことないくらい表情が歪んでる。いつもは無表情なのに、表情がものっそい歪むくらい僕は嫌われているらしい。こわいこわすぎる恐怖の大魔王へんきょうはくさま

しかし、ここで負けたら僕は童貞で散る。童貞のまま身綺麗なまま戦火に焼かれて死ぬ。言葉にすれば美しいけど実際はもうエグイ童貞の死体になってしまう。絶対にそんなのはいやだ。

「だって、いや、あの……辺境伯様は昔から僕がお嫌いですよね?」

ままよ!確信を突いてもう聞いちゃえ。どうせ嫌われてるもん。あ、でも流石にこの馬車で密室殺人by恐怖の大魔王へんきょうはくさまなイベントは勘弁してほしいけど……

「はっ?」

僕が確信を突きすぎたからか、今日イチ鋭い瞳が僕を射抜く。それはごみクズを見ているような見下した暗黒の目だった。

思わず喉から声が漏れた。こわいこわすぎる恐怖の大魔王へんきょうはくさま

もう完全にちびりそうになり震えている僕にさらに辺境伯様は追い打ちをかけるように、表情を変えた。それは地獄の底からやってきた悪鬼だってチビって泣いて命乞いするレベルの表情だった。少しチビった。

「ひぃいいいいいいいいいいいいい、すいません、なんでもします。なんなら靴だって舐めますから殺さないでくださいお願いします」

こうなれば、素直に死にたくないと伝えるしかない。もう靴を唾液でピカピカに磨くくらい全然出来るさ、童貞で死ぬくらいならなんでもしますから……。

「なんでもするのか?」

そう答えた顔が完全に地獄より出でたる最も呪われし者くらい怖い。だからはっきりした声で、

「はい!!!お望みなら靴を舐めてピカピカにだってします、あ、足りないならケツの穴だって舐めます」

絶対服従のポーズをとる。僕は無害な元放蕩息子です。女の子のお尻ばっかり追ってきたけど一度も相手にされていないだめな豚野郎です、だからそんな豚野郎にご慈悲をと内心思いながら、ひれ伏した。

しかし、いつの間にかデフォルトの無表情に戻っている辺境伯様は何も言わない。これまずったかな。そう思って再度、会話を試みる。

「あの、辺境伯様?」

「靴もケツの穴も舐めないでいい。俺のことは辺境伯様でなくギルと呼べ」

想像の斜め上をいく言葉だった。待て待て、なんでいきなり愛称で呼ばせようとするんだ?訳が分からないので聞いてみる。

「えっ、そんな恐れ多い……辺境伯様は上司ですし……」

「上司が許可している」

そう穢れない眼でいわれた。なんか豚野郎とか思っていた自分の汚らわしさが露呈する感じで泣きたくなった。

「では、ギル様……」

と力なく答えた、瞬間血の雨が降った。

文字通り、何故かギル様が血を拭いたのだ。いやいや、怖いって。これ最悪僕が手を下したとして処刑とかされるんじゃないか?

そう考えたら怖くって僕はただ俯くことしかできなかった。
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