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第22話 絶望と進むべき道(大公視点)
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「どうして、こんなことになった、なってしまったんだ……スタシス」
最愛の人である妻のスタシスが何者かに刺されて、重症を負った。それも私が実の息子であるフェリックスを取り戻しに隣国へ行っている間に起こった凶行だった。
犯人はまだ見つかっていないが、現場には竜の鱗が落ちていた。そこから帝国では王国の関与を疑っている。しかし、私はどうしても腑に落ちなかった。
王国は竜神の血筋を持つためその名残で喉元に逆鱗と言われる鱗が1枚生えている。それを襲われた際に妻が掴んで剥がしたものが現場に残っていたと言われたが、逆鱗はそもそも竜神の血筋にとって大切なものであるため簡単に触れられないように普段彼らは首元を覆う服のほかにプロテクトの魔法や、道具も装着している。
そこまで保護されている逆鱗を剥がすとなると、意識不明から目覚めたばかりで体力の戻っていなかったスタシスには難しいと私は考えていた。
さらに、もうひとつ私には気になることがあった。
国に戻りすぐに私はスタシスを見舞い、病室を厳重な警備体制にするように命じてから、一度家へ帰宅した。
帰るなり涙を流しながらエリックが、部屋までやって来て甘えるように私にしがみついてきた。
「父上、母上が刺されるなんてどうして……」
「ああ、誰がこんな惨いことをしたんだ、絶対に犯人を見つけなければいけない」
当たり前のことを答えた私に、エリックが神妙な顔で静かに言った。
「実は、僕、母上を襲った犯人に心あたりがあるのです」
「本当か、それは誰なんだ?」
エリックの言葉に私は思わず興奮した。もしそれが事実なら早く証拠を捉んでそいつを捕まえたいと思ったからだ。
「それは……フェリックスです。犯人が竜神の血筋とのことですが、僕のことを恨んでいるフェリックスが王国の人間を使って母上を襲わせたに違いありません」
エリックはまるでそれが真実のように私に告げたが、フェリックスが結婚して暗殺者を仕向けたとしたらあまりに動きが早すぎるし、そもそもフェリックスがスタシスを狙う理由がない。
もし暗殺による復讐をフェリックスが望むなら申し訳ないが皇后を狙うだろうと私は考えた。
「なぜ、エリックはそう思った?フェリックスがスタシスを狙う理由などないだろう?」
「父上、本当にそう思いますか?フェリックスはずっと僕を羨んでいた。そのフェリックスが最も憎む相手は自分を痛めつけた皇后でも、無関心だった皇帝陛下でもなく、自身に愛情を与えるふりをして最終的に人身御供に差し出した父上だと思いませんか?そしてその父上の一番大切なものを傷つけてやろうと……」
「やめろ。それ以上の言葉は必要ない」
私はエリックの言葉を遮った。あまりにも醜悪で聞いているだけで吐き気がした。その様子を勘違いしたのかエリックはわざとらしく困ったような顔をする。
「……父上、信じたくないかもしれませんが、フェリックスが犯人です。だから罪に問うために帝国から王国へ皇帝陛下が調査の通達をしたそうですよ」
「兄上が……」
鱗が事件現場に落ちていただけで、王国にそのような通達をすることは最悪、国際問題になりかねない。それを理解しているはずの兄上がなぜそんな愚かな真似をしたのか、そこまで考えた時、ひとつの恐ろしい仮説が浮かんでしまった。
エリックはスタシスが自身の息子でないと叫んだことで、エリックとフェリックスが入れ替えられたという事実を知ったのではないか。
そして、そこからすぐに実の父である皇帝陛下に入れ替えの事実を伝え、その結果なんらかの密談をしたのではないだろうか。さらに、密談をした結果、入れ替えの真実を知るスタシスを襲い事実を闇に葬ることになった。
そこまで考えて、私はボーンフォトの存在を思い出す。あれは、今もスタシスの病室に厳重に保管されているはずだ。
(……なんにせよエリックには私が何かに勘づいていることは伏せなければいけない……)
私は咄嗟にエリックの主張に納得した態度をとった。
「そうだな、この件は王国側にも調査を依頼しないといけない」
「ええ、そうです。母上のために……」
私が騙されたと思ったエリックが一瞬、笑みを浮かべた気がして背筋が冷たくなった。
フェリックスと入れ替わっていると知らなかったこともあり、ついこの間まで実の息子として誰よりも愛していたはずのその子が今は恐ろしい化け物に見えた。
そのまま、エリックが部屋を去って寝静まったころに、私はスタシスの居る病院に戻った。そして、最も恐ろしい想像通りにボーンフォトが持ち去られている事実を確認した。
(……スタシス、フェリックス)
私のせいでもっとも大切なふたりを傷つけてしまった。
許されるなんて思えないが、なんとしてもこの先に起ころうとしていることだけは食い止めないといけない。考えをまとめているとき、王国から奇妙な内容の手紙が私宛に届いた。
その手紙は不思議なことに開いた時は白紙だったが、私が奇妙に思い顔を近づけた瞬間、以下の文章が浮き出した。
どうやら、送り主を認証して読めるようになる仕組みの魔法の手紙らしい。
『大公殿下
貴殿が、実の息子に対して、少しでも償いをしたいのであれば『鱗に付着した血液』と『大公夫人の指先の状況』について正しい情報を調査し、帝国と王国の話し合いの場にて公開していただきたい』
用件のみが簡素に書かれたそれを、私はそっと懐にしまった。自身がすべきこと、進べき道がその時決まった。
最愛の人である妻のスタシスが何者かに刺されて、重症を負った。それも私が実の息子であるフェリックスを取り戻しに隣国へ行っている間に起こった凶行だった。
犯人はまだ見つかっていないが、現場には竜の鱗が落ちていた。そこから帝国では王国の関与を疑っている。しかし、私はどうしても腑に落ちなかった。
王国は竜神の血筋を持つためその名残で喉元に逆鱗と言われる鱗が1枚生えている。それを襲われた際に妻が掴んで剥がしたものが現場に残っていたと言われたが、逆鱗はそもそも竜神の血筋にとって大切なものであるため簡単に触れられないように普段彼らは首元を覆う服のほかにプロテクトの魔法や、道具も装着している。
そこまで保護されている逆鱗を剥がすとなると、意識不明から目覚めたばかりで体力の戻っていなかったスタシスには難しいと私は考えていた。
さらに、もうひとつ私には気になることがあった。
国に戻りすぐに私はスタシスを見舞い、病室を厳重な警備体制にするように命じてから、一度家へ帰宅した。
帰るなり涙を流しながらエリックが、部屋までやって来て甘えるように私にしがみついてきた。
「父上、母上が刺されるなんてどうして……」
「ああ、誰がこんな惨いことをしたんだ、絶対に犯人を見つけなければいけない」
当たり前のことを答えた私に、エリックが神妙な顔で静かに言った。
「実は、僕、母上を襲った犯人に心あたりがあるのです」
「本当か、それは誰なんだ?」
エリックの言葉に私は思わず興奮した。もしそれが事実なら早く証拠を捉んでそいつを捕まえたいと思ったからだ。
「それは……フェリックスです。犯人が竜神の血筋とのことですが、僕のことを恨んでいるフェリックスが王国の人間を使って母上を襲わせたに違いありません」
エリックはまるでそれが真実のように私に告げたが、フェリックスが結婚して暗殺者を仕向けたとしたらあまりに動きが早すぎるし、そもそもフェリックスがスタシスを狙う理由がない。
もし暗殺による復讐をフェリックスが望むなら申し訳ないが皇后を狙うだろうと私は考えた。
「なぜ、エリックはそう思った?フェリックスがスタシスを狙う理由などないだろう?」
「父上、本当にそう思いますか?フェリックスはずっと僕を羨んでいた。そのフェリックスが最も憎む相手は自分を痛めつけた皇后でも、無関心だった皇帝陛下でもなく、自身に愛情を与えるふりをして最終的に人身御供に差し出した父上だと思いませんか?そしてその父上の一番大切なものを傷つけてやろうと……」
「やめろ。それ以上の言葉は必要ない」
私はエリックの言葉を遮った。あまりにも醜悪で聞いているだけで吐き気がした。その様子を勘違いしたのかエリックはわざとらしく困ったような顔をする。
「……父上、信じたくないかもしれませんが、フェリックスが犯人です。だから罪に問うために帝国から王国へ皇帝陛下が調査の通達をしたそうですよ」
「兄上が……」
鱗が事件現場に落ちていただけで、王国にそのような通達をすることは最悪、国際問題になりかねない。それを理解しているはずの兄上がなぜそんな愚かな真似をしたのか、そこまで考えた時、ひとつの恐ろしい仮説が浮かんでしまった。
エリックはスタシスが自身の息子でないと叫んだことで、エリックとフェリックスが入れ替えられたという事実を知ったのではないか。
そして、そこからすぐに実の父である皇帝陛下に入れ替えの事実を伝え、その結果なんらかの密談をしたのではないだろうか。さらに、密談をした結果、入れ替えの真実を知るスタシスを襲い事実を闇に葬ることになった。
そこまで考えて、私はボーンフォトの存在を思い出す。あれは、今もスタシスの病室に厳重に保管されているはずだ。
(……なんにせよエリックには私が何かに勘づいていることは伏せなければいけない……)
私は咄嗟にエリックの主張に納得した態度をとった。
「そうだな、この件は王国側にも調査を依頼しないといけない」
「ええ、そうです。母上のために……」
私が騙されたと思ったエリックが一瞬、笑みを浮かべた気がして背筋が冷たくなった。
フェリックスと入れ替わっていると知らなかったこともあり、ついこの間まで実の息子として誰よりも愛していたはずのその子が今は恐ろしい化け物に見えた。
そのまま、エリックが部屋を去って寝静まったころに、私はスタシスの居る病院に戻った。そして、最も恐ろしい想像通りにボーンフォトが持ち去られている事実を確認した。
(……スタシス、フェリックス)
私のせいでもっとも大切なふたりを傷つけてしまった。
許されるなんて思えないが、なんとしてもこの先に起ころうとしていることだけは食い止めないといけない。考えをまとめているとき、王国から奇妙な内容の手紙が私宛に届いた。
その手紙は不思議なことに開いた時は白紙だったが、私が奇妙に思い顔を近づけた瞬間、以下の文章が浮き出した。
どうやら、送り主を認証して読めるようになる仕組みの魔法の手紙らしい。
『大公殿下
貴殿が、実の息子に対して、少しでも償いをしたいのであれば『鱗に付着した血液』と『大公夫人の指先の状況』について正しい情報を調査し、帝国と王国の話し合いの場にて公開していただきたい』
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