奴隷から始まる転生物語

フルーゲル

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出会いと始まり

2. 待ちうけていたもの

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隼人はまだ状況を飲み込めずにいた。
何をしたらいいかもわからずにあたふたしていると、少し離れたところが騒がしくなっていた。
奴隷にされたばかりの男が脱走を試みたのだがどうやら失敗したらしい。

「頼む…。もうこんなことは二度としない…!だから命だけは…命だけは!」

そう言ったのも束の間、その男の首元が爆発した。まわりには無数に飛び散った血の跡と焦げた匂いが充満し、その男の首と胴体は離れ離れになり転がっている。

「お前のような家畜にそんな猶予が与えられるわけがないだろぉ」

角と尻尾を生やし、悪魔のような出で立ちだ。
どうやらこいつがここを取り仕切っているらしい。

隼人は辺りを見渡すとあることに気がついた。虐げる者が悪魔のような魔人、虐げられる者が人間ということだ。

従わなければ即座に殺されてしまう。隼人がこんな恐怖を覚えたのは生まれて初めてだった。

無我夢中に働き一日を終えると鉄格子でできた暗い地下牢屋の中に放り投げられた。

置かれていたコブシぐらいの大きさのパン1つと水一杯が目に入ると貪るように食べ始めた。

すると
牢屋の端から声が聞こえてきた。

「よう兄ちゃん、ここでは見ない顔だな。新入りか?」

隅にの方に目を凝らすと、見窄らしい姿をした金髪でヒゲが生やし顔立ちの良い少し年上くらいの男が壁に寄りかかりながら座っていた。

内気な隼人だが急いでパンを水で流し込むとすぐに切り返した。

「こ…こ、ひがここはどこなんですか!!?あの悪魔はなんなんですか!?この首輪は…」

「まぁまぁ落ち着けって兄ちゃん。騒いだところでこの状況が変わるわけじゃねぇんだ。
おれはニック。兄ちゃんの名前はなんていうんだ?」

「隼人、十文字隼人です」

「ハヤトか。よろしくな。聞いたところだと魔人についてもよくわかってねぇようだな。ハヤトはあれか?記憶喪失ってやつか?」

「違います!!記憶は確かにあるんです。俺は違う世界からこの世界に飛ばされて気づいたら鎖で繋がれていたんです。」

「かっはっは!おもしれぇこというなハヤトは。まあいい、んで?どっから話せばいいんだ?」

俺はありとあらゆる質問をニックにぶつけ、やっとこの世界の情報を手に入れることができた。

この世界には2つの人種がいるらしい。1つは人間。もう1つは魔人。あのツノの生えた悪魔は人間の5倍の力を持っている。さらに上位魔人は魔法も使うらしい。
この2つの人種は争いを今も争い続けている。そしてここは魔人族の最北端の城であり、人間からの攻撃を防ぐための防壁を奴隷たちに作らせている。
そしてここに連れてこられ奴隷として扱われている者たちは皆、この争いに巻き込まれた被害者に過ぎなかった。村を滅ぼされ、生き残ったものはここで強制労働を虐げられている。
首輪は魔人の声によってどんな変化もさせられ、魔人にしか外せない。
というものだった。

おおよそのことは聞き終わり隼人に1つ疑問が残った。

「争っている?あの魔人たちと人間は争えているのですか?」

「ああそうさ。人間にも四騎士様っていうのがいてな!王都にいるらしいんだが、なんでも魔人を一瞬で何十匹も殺せるような強いやつがいるらしい。だけども俺たちの村なんか見て見ぬふり。おかげでこのざまさ。」

悲壮感を漂わせながら語るニックの気持ちとは裏腹に隼人は自分だけがここから助かる方法はないのか考えていた。
だがそんなものは存在しない。
存在したとしても隼人に死ぬというリスクを背負ってまで脱走する勇気など微塵も持っていない。なにせ、ただ真面目に人の言うことだけを聞いて生きてきたのだから。



それからも過酷な労働は続いた。環境は変わっても隼人の根本は変わらない。気づけばまた会社員時代と同じようなことをしていた。考えることをやめ、ただ従う。

結局はこの世界に来るきっかけになった一言も他人任せだったのだ。ここが違う環境なら、周りが違う人たちなら、親がいたなら、きっと誰かが導いてくれる。そんな甘い考えだったのだ。




だがそんな隼人にもニックは気を使って話かけつづけてくれた。最初は素っ気なく返していたがここ最近はニックに根負けし話に付き合ってやっている。
人とこんなに深く関わったのは初めてかもな。

隼人の中で何かが少しずつ変わり始めていた。






それでも、この少ない食事と比例しない重労働はついに限界を迎え、重い荷物を運ぶ途中でに倒れてしまった。

ここでは使えなくなったものはゴミのように殺され捨てられる。


俺もとうとう殺されてしまうのか。
やり直しても意味がなかったじゃねぇかよ。
こんな思いするなら死んだほうがマシか…


そう頭の中で呟いた隼人に思いもよらない出来事が起こった。



隼人が倒れたことに気づいたニックは昨日食べ残し隠し持っていた半分のパンを顔の横に置きそっと囁いた。

「お前が死ぬのはまだ早い。俺はもともと病気を抱えていてな。そう長くはない。自分の死期が近づいてることぐらい自分でわかるさ。俺の分まで生きろ隼人」

ニックは近くにあった大きな石を掴み魔人に投げつけた。

「村のみんなをよくも殺してくれたな。テメェらのためになんて働くなら死んだほうがマシだ!」

そして全力で走りながら大声をあげることで注目を集め魔人を引きつけた。

すぐに捕らえられ魔人がニックの周りを輪になるように囲んだ。

その隙に隼人はニックの置いていったパンを必死に食べた。
そしてニックの方を見あげると魔人の間からニックの顔が見えた。

ニックはこっちを見て、にかっと笑った。目があった途端にニックの首は弾け飛んだ。


なんで俺なんかのために…
隼人は立ち上がり、重い荷物を担いだ。俺が倒れていたことは魔人に気づかれていなかった。

隼人は大粒の涙を流しながらも体を動かし続けた。



そして長かったこの日の労働が終わった。
地下牢に帰るといつも一緒にいたニックのことを思い出し涙が溢れて止まらなくなった。


隼人は他人にここまでよくされたことがなかった。


思い返すと隼人は親の顔も見たことがない。
小さい頃から児童養護施設で育ち、その中でも仲間外れにされていた。

そんな環境のなかで愛情を知らずに育った隼人が初めて触れた愛だった。




何かを失って悲しいと感じたのも初めてだった。
胸が苦しい。とてつもなく苦しい。なんでこんなにも苦しいんだ。
隼人にはこの苦しさがなんなのかもわからなかった。


魔人が憎い。憎くてたまらない。
なぜ、こんなところで言いなりになっているのだろう。
憎い。憎い。
自分の命がなくなってもいいからあいつらを殺してやりたい。


悲しみと憎しみの感情が渦巻く隼人の脳裏にニックの言葉が蘇った。

〝俺の分まで生きろ隼人″

そうだ俺はあの人の分まで生きなければいけない。
こんなところで命を燃やし尽きることなんてできない。

今までは自分のことしか考えてこなかったし他人のために生きるなんてもってのほかだった。

そんな隼人の心の底からある1つの強い感情がふつふつと胸を熱くする。

俺もニックみたいな人になりたい。。

自分の命を削ってまでも他人の命を救う。そんな勇気のあるやつに。。



そう強く思った瞬間、隼人の周りを覆うように光り輝く粉が降り注いだ。

そして部屋を埋め尽くすほどの白い光が広がった後、その中心からから小さな妖精が現れた。


そう、この世界に彼を誘ったあの妖精。ピニーである。

















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