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高等部二年生
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「何っ!?」
「保!?」
怜くんの親衛隊員である二人が、七瀬くんに詰め寄ったのはぼくの指示だという言葉に、声を荒げたのは上村くんだけじゃなかった。
隣に座る眞宙くんがぼくの名前を呼びながら、こちらに大きく振り向くのを感じる。
逆サイドの隣に座っている親衛隊員からも驚きの視線を受けた。
そんな中、風紀委員長である上村くんの低い声が響く。
「湊川、どういうことか説明しろ」
「昨日の部屋でのことについて、七瀬くんに詳細を確かめて欲しいというぼくの意思を、彼らが汲んでくれたんだ」
「それがお前の指示だったと? 確かなのか?」
ぼくの答えを聞いて、上村くんは親衛隊員二人のほうへ鋭い視線を向ける。
肩を震わせる新山くんに、大丈夫だから、そう気持ちを込めてぼくは彼の手を握った。
「保……」
眞宙くんが静かにぼくの名前を呼んだ。
その声音が聞いたことがないほど冷たくて、背中に一瞬ヒヤリとしたものが走る。
けれど、ここで挫けるわけにはいかない。
「上村くん、ぼくの指示だったんだ。詰め寄る際に、つい力が入ってしまったのかもしれないけど、彼らにそれ以上の意思はなかった」
「お前が責任を取るんだな?」
「取る」
「名法院にも聞いた通りに報告するぞ」
「……うん」
きっとこれで、ぼくは完全に怜くんから嫌われるだろう。
そう思うと、少し返答に間が空いてしまった。
しかし発端は、ぼくが隣室から七瀬くんの部屋の様子を確認しようとしたことにある。
ならば最終的な責任も、ぼくが取るべきだ。
「はぁ……何故だ、湊川。お前なら、訊きたいことがあれば、直接問い質すだろう? 前に、お前自身がそう言ったんだぞ?」
上村くんの言葉に、いつかのやり取りが脳裏に浮かぶ。
〈湊川が個人的に文句を言いたいだけじゃないのか?〉
〈だったら、わざわざ提案なんかしないで、個人的に七瀬くんに文句を言うよ。みんなの前で言うのが大事なの〉
あれは食堂で、ぼくが七瀬くんとの対峙を提案したときの話だ。
正にその通りなので、そこを突かれると痛い。
「それに私はお前が親衛隊について、真摯に向き合っていることを知っている。人気のない場所に行くなと、一番注意しているのはお前だろう」
「……だからかな。おかげ様で人気のない場所についての情報が揃ってるんだ」
「保! いい加減にしなよっ!」
いつにない眞宙くんの大声に、体が跳ねた。
「上村くん、悪いけど、ちょっと保と席を外すよ」
「……分かった。私はこちらの二人から詳細を聞いておく」
えっ、と思ったときには、眞宙くんに腕を引かれて立たされていた。
「眞宙くん!?」
「今の保は、見ていられない」
眞宙くんはそう言うと、ぼくを引き摺るようにして風紀委員室から出た。
その先で、ぼくが眞宙くんに放り込まれたのは、隣の会議室だった。
よく南くんや柳沢くんといった親衛隊のたまり場になっている場所だ。けど、今は誰もいない。
眞宙くんはぼくを会議室に放り込むと、自分は中に入らずドアを閉じた。
「眞宙くん!?」
「しばらく頭を冷やすといいよ」
鍵はかかっていないはずなのに、取っ手に手をかけても、外から眞宙くんが押さえ込んでいるのか、ドアはビクともしなかった。
ガチャガチャという無慈悲な音だけが会議室に響く。
「どうしよう……」
何が眞宙くんの逆鱗に触れたのか分からない。
でも明らかに眞宙くんは怒っていて……。
閉じ込められた理由が分からず、途方に暮れたぼくは、力なく手近にあった椅子に腰を下ろした。
関係ない怜くんの親衛隊の事案に、付き合わせてしまったのが悪かったのかな。
それとも――。
どれくらい項垂れていただろう。
前触れもなく開かれたドアの音を聞いて、顔を上げる。
「まひ……怜くん!?」
「……」
驚いたことに、ドアの前に立っていたのは眞宙くんじゃなくて、怜くんだった。
しかも、いつになく表情のない怜くんに戸惑いを覚える。
怜くんは無言で会議室に入ると、椅子を一脚引き寄せ、ぼくと向き合う形で座る。
「どういうことだ」
怜くんの声は重く、その一言で、会議室内の空気が凍った。
風紀委員室での緊張感とは、まるで比べものにならない。
目の前に刃物を置かれたような、身動きのとれない空気に、ぼくは口を開くことさえ叶わなかった。
露出している肌がピリピリとした痛みを覚える。
どうして、怜くんが、ここに。
それも眞宙くん同様に、怒って。
言葉を発することもできず、疑問ばかりが頭の中をグルグルと回る。
答えないぼくに、怜くんが更に言葉を重ねた。
「眞宙から、風紀委員室でのことを聞いた」
あぁ……それで。
ようやく怜くんと眞宙くんが怒っている理由に合点がいった。
二人は知ったんだ、ぼくが親衛隊員に指示を出して、七瀬くんに詰め寄らせたことを。
眞宙くんが七瀬くんと一緒にいる姿を見たことはないけど、BLゲーム「ぼくきみ」の攻略キャラであることに違いはない。
ぼくの知らないところで交流があっても不思議じゃなかった。
二人は七瀬くんのために怒ってる。
だから、怜くんも眞宙くんも……こんなに本気なんだ。
風紀委員室で聞いた眞宙くんの声は、今まで聞いたことがなかったもので。
目の前にいる怜くんは、指先が凍ってしまいそうになるほど、冷たい雰囲気を漂わせていた。
こんな二人を、ぼくは知らない。
小さいころからずっと一緒だったのに。
体が、心が、震える。
七瀬くんは、二人をここまで変えてしまえる存在なんだと。
怜くんの怒気には、彼に嫌われてしまう恐怖とは、また別の怖さがあった。
「保!?」
怜くんの親衛隊員である二人が、七瀬くんに詰め寄ったのはぼくの指示だという言葉に、声を荒げたのは上村くんだけじゃなかった。
隣に座る眞宙くんがぼくの名前を呼びながら、こちらに大きく振り向くのを感じる。
逆サイドの隣に座っている親衛隊員からも驚きの視線を受けた。
そんな中、風紀委員長である上村くんの低い声が響く。
「湊川、どういうことか説明しろ」
「昨日の部屋でのことについて、七瀬くんに詳細を確かめて欲しいというぼくの意思を、彼らが汲んでくれたんだ」
「それがお前の指示だったと? 確かなのか?」
ぼくの答えを聞いて、上村くんは親衛隊員二人のほうへ鋭い視線を向ける。
肩を震わせる新山くんに、大丈夫だから、そう気持ちを込めてぼくは彼の手を握った。
「保……」
眞宙くんが静かにぼくの名前を呼んだ。
その声音が聞いたことがないほど冷たくて、背中に一瞬ヒヤリとしたものが走る。
けれど、ここで挫けるわけにはいかない。
「上村くん、ぼくの指示だったんだ。詰め寄る際に、つい力が入ってしまったのかもしれないけど、彼らにそれ以上の意思はなかった」
「お前が責任を取るんだな?」
「取る」
「名法院にも聞いた通りに報告するぞ」
「……うん」
きっとこれで、ぼくは完全に怜くんから嫌われるだろう。
そう思うと、少し返答に間が空いてしまった。
しかし発端は、ぼくが隣室から七瀬くんの部屋の様子を確認しようとしたことにある。
ならば最終的な責任も、ぼくが取るべきだ。
「はぁ……何故だ、湊川。お前なら、訊きたいことがあれば、直接問い質すだろう? 前に、お前自身がそう言ったんだぞ?」
上村くんの言葉に、いつかのやり取りが脳裏に浮かぶ。
〈湊川が個人的に文句を言いたいだけじゃないのか?〉
〈だったら、わざわざ提案なんかしないで、個人的に七瀬くんに文句を言うよ。みんなの前で言うのが大事なの〉
あれは食堂で、ぼくが七瀬くんとの対峙を提案したときの話だ。
正にその通りなので、そこを突かれると痛い。
「それに私はお前が親衛隊について、真摯に向き合っていることを知っている。人気のない場所に行くなと、一番注意しているのはお前だろう」
「……だからかな。おかげ様で人気のない場所についての情報が揃ってるんだ」
「保! いい加減にしなよっ!」
いつにない眞宙くんの大声に、体が跳ねた。
「上村くん、悪いけど、ちょっと保と席を外すよ」
「……分かった。私はこちらの二人から詳細を聞いておく」
えっ、と思ったときには、眞宙くんに腕を引かれて立たされていた。
「眞宙くん!?」
「今の保は、見ていられない」
眞宙くんはそう言うと、ぼくを引き摺るようにして風紀委員室から出た。
その先で、ぼくが眞宙くんに放り込まれたのは、隣の会議室だった。
よく南くんや柳沢くんといった親衛隊のたまり場になっている場所だ。けど、今は誰もいない。
眞宙くんはぼくを会議室に放り込むと、自分は中に入らずドアを閉じた。
「眞宙くん!?」
「しばらく頭を冷やすといいよ」
鍵はかかっていないはずなのに、取っ手に手をかけても、外から眞宙くんが押さえ込んでいるのか、ドアはビクともしなかった。
ガチャガチャという無慈悲な音だけが会議室に響く。
「どうしよう……」
何が眞宙くんの逆鱗に触れたのか分からない。
でも明らかに眞宙くんは怒っていて……。
閉じ込められた理由が分からず、途方に暮れたぼくは、力なく手近にあった椅子に腰を下ろした。
関係ない怜くんの親衛隊の事案に、付き合わせてしまったのが悪かったのかな。
それとも――。
どれくらい項垂れていただろう。
前触れもなく開かれたドアの音を聞いて、顔を上げる。
「まひ……怜くん!?」
「……」
驚いたことに、ドアの前に立っていたのは眞宙くんじゃなくて、怜くんだった。
しかも、いつになく表情のない怜くんに戸惑いを覚える。
怜くんは無言で会議室に入ると、椅子を一脚引き寄せ、ぼくと向き合う形で座る。
「どういうことだ」
怜くんの声は重く、その一言で、会議室内の空気が凍った。
風紀委員室での緊張感とは、まるで比べものにならない。
目の前に刃物を置かれたような、身動きのとれない空気に、ぼくは口を開くことさえ叶わなかった。
露出している肌がピリピリとした痛みを覚える。
どうして、怜くんが、ここに。
それも眞宙くん同様に、怒って。
言葉を発することもできず、疑問ばかりが頭の中をグルグルと回る。
答えないぼくに、怜くんが更に言葉を重ねた。
「眞宙から、風紀委員室でのことを聞いた」
あぁ……それで。
ようやく怜くんと眞宙くんが怒っている理由に合点がいった。
二人は知ったんだ、ぼくが親衛隊員に指示を出して、七瀬くんに詰め寄らせたことを。
眞宙くんが七瀬くんと一緒にいる姿を見たことはないけど、BLゲーム「ぼくきみ」の攻略キャラであることに違いはない。
ぼくの知らないところで交流があっても不思議じゃなかった。
二人は七瀬くんのために怒ってる。
だから、怜くんも眞宙くんも……こんなに本気なんだ。
風紀委員室で聞いた眞宙くんの声は、今まで聞いたことがなかったもので。
目の前にいる怜くんは、指先が凍ってしまいそうになるほど、冷たい雰囲気を漂わせていた。
こんな二人を、ぼくは知らない。
小さいころからずっと一緒だったのに。
体が、心が、震える。
七瀬くんは、二人をここまで変えてしまえる存在なんだと。
怜くんの怒気には、彼に嫌われてしまう恐怖とは、また別の怖さがあった。
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