87 / 197
変異Ω
東京のアルファ
しおりを挟む
俺に名前を聞いて来たグレイ企画の灰原さんは、何を考えているのか分からない表情で俺を見つめた。単なる受験生の俺を気に掛ける灰原さんに、俺は戸惑って一瞬返事が遅れた。すると、灰原さんは苦笑して言った。
「いや、私は別に怪しい人間では無いよ。でも、そうだね。Ωの君にとっては怪しいアルファになるのかな?」
俺は灰原さんに心を見透かされた気がして、慌てた。
「いえ、そんな事はない…ような、あるような?」
すると灰原さんはクスクスと笑って僕に近づいて来た。
「ふ。君って正直だね。…私は君がもしかして、今東京で噂になってる変異Ωなのかなと思ったんだ。でも、君を見ていると、それ意外には思えなくなるな。君はβの中じゃ何だか人目を引く。かと言って、Ωだと言われると納得するんだけど違和感があるし。」
俺は灰原さんを睨んで言った。
「まるで俺を珍獣の様に言うんですね。」
すると灰原さんは、微笑んで言った。
「じゃあ、やっぱり君が変異Ωなんだね。」
俺はハッと我に返った。灰原さんは推測を言ったまでで、俺が変異Ωだとは言ってなかったって。俺は自分からカミングアウトしてしまったらしい。引き攣った俺に灰原さんはもっと近づいて、アルファらしい人を惹きつける笑顔を見せて言った。
「私は君に、とっても興味が湧いたよ。名前を教えてくれる?」
俺はジロリと灰原さんを睨んで言った。
「俺に鎌をかける様な小狡い相手に、名前を教えるのは嫌です。僕はあなたに興味ありませんし。でも、あなたは俺の名前など簡単に調べてしまうんでしょ?俺は東 岳です。もう話はないでしょ。さよなら。」
そう言って踵を返すと、俺は一瞬で腕を掴まれた。思わず反射で山伏で培った潜り抜けをして、灰原さんを後ろ手で押さえ込んだ。
「イタ、イタタッ。」
流石にガタイの良いアルファと言えども、背中に腕を押さえ込まれたら何も出来ない。俺は灰原さんの耳元に息を吹きかけて囁いた。
「勝手に人の腕を掴んで良いなんて誰が言った?まったくアルファは傲慢で困る。だから俺はアイツらしか信用できないんだ。」
そう言うと、ポカンとしている灰原さんに背を向けて手を振って立ち去った。でも一瞬、近づいた時に灰原さんのアルファのフェロモンを感じてゾクゾクしてしまった。俺ってアルファなら誰でも良いのかな…。はぁ。
OB説明会場で叶斗と新の顔を見て、妙にホッとしたのはアイツらに内緒だ。
「いや、私は別に怪しい人間では無いよ。でも、そうだね。Ωの君にとっては怪しいアルファになるのかな?」
俺は灰原さんに心を見透かされた気がして、慌てた。
「いえ、そんな事はない…ような、あるような?」
すると灰原さんはクスクスと笑って僕に近づいて来た。
「ふ。君って正直だね。…私は君がもしかして、今東京で噂になってる変異Ωなのかなと思ったんだ。でも、君を見ていると、それ意外には思えなくなるな。君はβの中じゃ何だか人目を引く。かと言って、Ωだと言われると納得するんだけど違和感があるし。」
俺は灰原さんを睨んで言った。
「まるで俺を珍獣の様に言うんですね。」
すると灰原さんは、微笑んで言った。
「じゃあ、やっぱり君が変異Ωなんだね。」
俺はハッと我に返った。灰原さんは推測を言ったまでで、俺が変異Ωだとは言ってなかったって。俺は自分からカミングアウトしてしまったらしい。引き攣った俺に灰原さんはもっと近づいて、アルファらしい人を惹きつける笑顔を見せて言った。
「私は君に、とっても興味が湧いたよ。名前を教えてくれる?」
俺はジロリと灰原さんを睨んで言った。
「俺に鎌をかける様な小狡い相手に、名前を教えるのは嫌です。僕はあなたに興味ありませんし。でも、あなたは俺の名前など簡単に調べてしまうんでしょ?俺は東 岳です。もう話はないでしょ。さよなら。」
そう言って踵を返すと、俺は一瞬で腕を掴まれた。思わず反射で山伏で培った潜り抜けをして、灰原さんを後ろ手で押さえ込んだ。
「イタ、イタタッ。」
流石にガタイの良いアルファと言えども、背中に腕を押さえ込まれたら何も出来ない。俺は灰原さんの耳元に息を吹きかけて囁いた。
「勝手に人の腕を掴んで良いなんて誰が言った?まったくアルファは傲慢で困る。だから俺はアイツらしか信用できないんだ。」
そう言うと、ポカンとしている灰原さんに背を向けて手を振って立ち去った。でも一瞬、近づいた時に灰原さんのアルファのフェロモンを感じてゾクゾクしてしまった。俺ってアルファなら誰でも良いのかな…。はぁ。
OB説明会場で叶斗と新の顔を見て、妙にホッとしたのはアイツらに内緒だ。
40
あなたにおすすめの小説
メビウスの輪を超えて 【カフェのマスター・アルファ×全てを失った少年・オメガ。 君の心を、私は温めてあげられるんだろうか】
大波小波
BL
梅ヶ谷 早紀(うめがや さき)は、18歳のオメガ少年だ。
愛らしい抜群のルックスに加え、素直で朗らか。
大人に背伸びしたがる、ちょっぴり生意気な一面も持っている。
裕福な家庭に生まれ、なに不自由なく育った彼は、学園の人気者だった。
ある日、早紀は友人たちと気まぐれに入った『カフェ・メビウス』で、マスターの弓月 衛(ゆづき まもる)と出会う。
32歳と、早紀より一回り以上も年上の衛は、落ち着いた雰囲気を持つ大人のアルファ男性だ。
どこかミステリアスな彼をもっと知りたい早紀は、それから毎日のようにメビウスに通うようになった。
ところが早紀の父・紀明(のりあき)が、重役たちの背信により取締役の座から降ろされてしまう。
高額の借金まで背負わされた父は、借金取りの手から早紀を隠すため、彼を衛に託した。
『私は、早紀を信頼のおける人間に、預けたいのです。隠しておきたいのです』
『再びお会いした時には、早紀くんの淹れたコーヒーが出せるようにしておきます』
あの笑顔を、失くしたくない。
伸びやかなあの心を、壊したくない。
衛は、その一心で覚悟を決めたのだ。
ひとつ屋根の下に住むことになった、アルファの衛とオメガの早紀。
波乱含みの同棲生活が、有無を言わさず始まった……!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
オメガ大学生、溺愛アルファ社長に囲い込まれました
こたま
BL
あっ!脇道から出てきたハイヤーが僕の自転車の前輪にぶつかり、転倒してしまった。ハイヤーの後部座席に乗っていたのは若いアルファの社長である東条秀之だった。大学生の木村千尋は病院の特別室に入院し怪我の治療を受けた。退院の時期になったらなぜか自宅ではなく社長宅でお世話になることに。溺愛アルファ×可愛いオメガのハッピーエンドBLです。読んで頂きありがとうございます。今後随時追加更新するかもしれません。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
落ちこぼれβの恋の諦め方
めろめろす
BL
αやΩへの劣等感により、幼少時からひたすら努力してきたβの男、山口尚幸。
努力の甲斐あって、一流商社に就職し、営業成績トップを走り続けていた。しかし、新入社員であり極上のαである瀬尾時宗に一目惚れしてしまう。
世話役に立候補し、彼をサポートしていたが、徐々に体調の悪さを感じる山口。成績も落ち、瀬尾からは「もうあの人から何も学ぶことはない」と言われる始末。
失恋から仕事も辞めてしまおうとするが引き止められたい結果、新設のデータベース部に異動することに。そこには美しいΩ三目海里がいた。彼は山口を嫌っているようで中々上手くいかなかったが、ある事件をきっかけに随分と懐いてきて…。
しかも、瀬尾も黙っていなくなった山口を探しているようで。見つけられた山口は瀬尾に捕まってしまい。
あれ?俺、βなはずなにのどうしてフェロモン感じるんだ…?
コンプレックスの固まりの男が、αとΩにデロデロに甘やかされて幸せになるお話です。
小説家になろうにも掲載。
アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました
あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」
穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン
攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?
攻め:深海霧矢
受け:清水奏
前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。
ハピエンです。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
自己判断で消しますので、悪しからず。
オメガ転生。
桜
BL
残業三昧でヘトヘトになりながらの帰宅途中。乗り合わせたバスがまさかのトンネル内の火災事故に遭ってしまう。
そして…………
気がつけば、男児の姿に…
双子の妹は、まさかの悪役令嬢?それって一家破滅フラグだよね!
破滅回避の奮闘劇の幕開けだ!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる