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東京遠征
ご無沙汰してます桂木先生
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俺は急に怖い話を聞いてぞっとしてしまった。思わず二人の腕に手を回してぎゅっと組んだ。
「なぁに、岳。怖くなっちゃった?まぁ、俺たちの側にいたら大丈夫だからね。ふふ、一人になっちゃだめだよ?」
そう叶斗になだめるように言われて、俺はなんだかすっかり自分が幼稚園児の様になってしまった気がして、がっかりしてしまった。それから夕方まで2カ所回ることが出来た俺たちは、なんとなく大学の雰囲気も掴めて、すっかりやり遂げた気分だった。もちろん明日も何箇所か回る予定だったけれど、今日は店仕舞いの気持ちでいたのは確かだ。
その時、普段ピクリとも鳴らない俺のスマホが鳴った。桂木先生からだった。俺が慌てて受話器を指で払うと、桂木先生の柔らかな声が聞こえてきた。
俺が電話を終えるのを新と叶斗が待っていたので、俺はスマホを持ち上げて言った。
「新幹線で、先生に連絡とっただろ?先生ほら助教授で忙しいから、会えるかどうかちょっとわからないって言う返事があったんだけど、時間が急に空いたらしくて、今から来れるかって。先生にはお世話になったから、顔出したいんだけど、いいかなぁ。もしあれだったら、俺だけで行ってくるけど。」
すると叶斗が呆れて言った。
「言ってるそばから一人になろうとするんだから。そう言う危機管理なんだよね。一緒に行くよ、もちろん。どこの大学病院?」
俺が大学病院の名前を言うと、新が眉を上げて、桂木先生がΩでその大学の助教授なんてかなり凄いと言った。俺たちは駅近くで手土産を購入すると、指定された大学病院の展望席カフェテリアに向かった。
大学病院だけあって医者のほとんどがαらしい風貌だった。ホールや、廊下を歩いていると、やっぱり俺の事をジロジロと見てくる。ただ、さすがにみんな研究熱心と言うべきか、普通の人が見てくる感じとはちょっと違って、じっとりというか分析するような眼差しというか、まぁ見られる方としてはやっぱり居た堪れない。
しばらくカフェで待っていると、慌てた様に桂木先生がやって来た。以前地元で会った時より、少し疲れた様子の桂木先生は、柔らかく微笑んで口を開いた。
「やあ、岳君久しぶりだね。元気だったかい?相変わらず二人にマーキングされているんだね。それはそれで、私も安心だ。やはり、以前よりずっとオメガっぽくなったね。君は会う度に変わっていくから、非常に興味深いよ。良かったらこの後で、簡単な血液検査に協力してくれないか?データが欲しいんだが。大丈夫?」
俺は桂木先生にお世話になってるので、お安い御用だと頷いた。学校生活やその後の生活状況など聞き取りされて、先生は少しメモを取った。
「私が思っているより、ずっとうまくオメガに順応しているよ。その2人のおかげかな?Ωに変異する前に、αが側にいてくれた事は、ずっと意味があったね。もともとαが側にいなくても、いつかはΩに変わったはずだから、この状況で変異したのは良かったと思うよ。
まぁ岳君にとってみれば青天の霹靂だろうから、同情の余地はあるけれどね。それでも考えようによっては、ベストだと思うよ。」
俺も多分そうなんだろうと、二人を見つめると、二人もニヤニヤしながら俺を見返して来た。まったく、こいつらを図に乗らせるのは癪だけど、確かに感謝してるんだ俺も。
「そうだ、ちょっと後から人が来るんだけど会ってみてもらえるかな。Ω研究を手伝ってもらってる一般人なんだけどね。なかなか多才な男なんだよ。実は私のパートナーの弟でね。昔からよく知っているから人物保証は任せてくれ。多分君たちも知ってるんじゃないかな?
グレイ企画の灰原って知らないかな?」
「なぁに、岳。怖くなっちゃった?まぁ、俺たちの側にいたら大丈夫だからね。ふふ、一人になっちゃだめだよ?」
そう叶斗になだめるように言われて、俺はなんだかすっかり自分が幼稚園児の様になってしまった気がして、がっかりしてしまった。それから夕方まで2カ所回ることが出来た俺たちは、なんとなく大学の雰囲気も掴めて、すっかりやり遂げた気分だった。もちろん明日も何箇所か回る予定だったけれど、今日は店仕舞いの気持ちでいたのは確かだ。
その時、普段ピクリとも鳴らない俺のスマホが鳴った。桂木先生からだった。俺が慌てて受話器を指で払うと、桂木先生の柔らかな声が聞こえてきた。
俺が電話を終えるのを新と叶斗が待っていたので、俺はスマホを持ち上げて言った。
「新幹線で、先生に連絡とっただろ?先生ほら助教授で忙しいから、会えるかどうかちょっとわからないって言う返事があったんだけど、時間が急に空いたらしくて、今から来れるかって。先生にはお世話になったから、顔出したいんだけど、いいかなぁ。もしあれだったら、俺だけで行ってくるけど。」
すると叶斗が呆れて言った。
「言ってるそばから一人になろうとするんだから。そう言う危機管理なんだよね。一緒に行くよ、もちろん。どこの大学病院?」
俺が大学病院の名前を言うと、新が眉を上げて、桂木先生がΩでその大学の助教授なんてかなり凄いと言った。俺たちは駅近くで手土産を購入すると、指定された大学病院の展望席カフェテリアに向かった。
大学病院だけあって医者のほとんどがαらしい風貌だった。ホールや、廊下を歩いていると、やっぱり俺の事をジロジロと見てくる。ただ、さすがにみんな研究熱心と言うべきか、普通の人が見てくる感じとはちょっと違って、じっとりというか分析するような眼差しというか、まぁ見られる方としてはやっぱり居た堪れない。
しばらくカフェで待っていると、慌てた様に桂木先生がやって来た。以前地元で会った時より、少し疲れた様子の桂木先生は、柔らかく微笑んで口を開いた。
「やあ、岳君久しぶりだね。元気だったかい?相変わらず二人にマーキングされているんだね。それはそれで、私も安心だ。やはり、以前よりずっとオメガっぽくなったね。君は会う度に変わっていくから、非常に興味深いよ。良かったらこの後で、簡単な血液検査に協力してくれないか?データが欲しいんだが。大丈夫?」
俺は桂木先生にお世話になってるので、お安い御用だと頷いた。学校生活やその後の生活状況など聞き取りされて、先生は少しメモを取った。
「私が思っているより、ずっとうまくオメガに順応しているよ。その2人のおかげかな?Ωに変異する前に、αが側にいてくれた事は、ずっと意味があったね。もともとαが側にいなくても、いつかはΩに変わったはずだから、この状況で変異したのは良かったと思うよ。
まぁ岳君にとってみれば青天の霹靂だろうから、同情の余地はあるけれどね。それでも考えようによっては、ベストだと思うよ。」
俺も多分そうなんだろうと、二人を見つめると、二人もニヤニヤしながら俺を見返して来た。まったく、こいつらを図に乗らせるのは癪だけど、確かに感謝してるんだ俺も。
「そうだ、ちょっと後から人が来るんだけど会ってみてもらえるかな。Ω研究を手伝ってもらってる一般人なんだけどね。なかなか多才な男なんだよ。実は私のパートナーの弟でね。昔からよく知っているから人物保証は任せてくれ。多分君たちも知ってるんじゃないかな?
グレイ企画の灰原って知らないかな?」
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