二人のアルファは変異Ωを逃さない!

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

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灰原さん

楽しさの先に

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すっかりプールで気怠くなった身体は、夕食前の海辺への散歩でも重く感じられた。だからきっと灰原さんに繋がれた手が頼もしく思えたのだし、自然に受け入れてしまったんだと思う。

機嫌の良さを滲ませて夕陽のオレンジ色に照らされる灰原さんは、叶斗や新とは違う、俺を急かさずに待ってくれている包容力を感じさせた。俺より多分7~8歳年上の灰原さんは、社長業をしてるだけあって年齢以上に、落ち着きがあるんだろう。


「灰原さん、仕事は好きですか。」

俺の唐突な質問に、灰原さんは眉を少し動かしただけで、頷いて言った。

「好きだね。私がやってるのは父の会社の関連事業だけど、大学生の頃に自分で立ち上げた会社だからね。愛着はあるよ。将来的には父の会社の方もやるのかなとも思ってるけど、まだ父も若いし自由にやらせて貰ってるよ。…岳くんはこれから大学を選ぶ段階か。いいね、どんな将来も選べる。」


僕は海の波間に揺れる白い泡を見つめながら呟いた。

「俺、こうなる前は弁護士になろうかななんて、ぼんやり思ってたんです。地元の国立行って。そう言う意味でも何者でもなれた自分がいたんです。でも、変異オメガになんてなってしまった。

俺の将来はどうなるんでしょうね。桂木先生の言う通りなら、俺は2人以上の番を持って、子供を沢山産むんでしょ。そうしたら、自分の人生なんてあるのかな。

俺は何のために大学へ行くのかもよく分からなくなってしまった。いっそ山に篭って修行三昧してる方がマシな気がします。」


そう言って苦笑した俺に、灰原さんは手をぎゅと握って言った。

「将来の事なんて誰にも約束なんてされてないよ。だから全ては自分次第だと思うな。岳くんは勉強好きだろ?だったら、大学で色々なことを学べることは悪い道じゃない。その中で、何かやってみたい事が出来るかもしれないよ。

それに番ったからと言って、子供を作るって決まってる訳でもないしね。今の岳くんにそんな先の想像はちょっと早いだろう?…義兄さんが言ったこと気にしてるの?」


僕は探るような灰原さんの視線を避けて、すっかり夕陽の落ちた薄暗い海を見つめて言った。

「…俺は前みたいな大騒動は避けたいんです。自分じゃ全然覚えてないですけど、相当迷惑掛けたでしょ。だから番うことだけは俺の中じゃ最優先事項かもしれません。受験よりもね。…今夜はサンプルよろしくお願いします、灰原さん。」




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