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運命の発情期
灰原side突然の連絡
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岳くんに関する事だけ繋がる電子音が空気を揺らした時、私はビクリと身体を強張らせた。手元に浮かび上がるメッセージを見た私の緊張感が伝わったんだろう。会議中の部下たちが私を一斉に見つめた。
「…大事な連絡だ。橘、社長室に一緒に来てくれ。」
それだけ言って手元のPCを閉じると、脇に抱えて何も言わずに会議室を出た。部下たちが顔を見合わせて、事情を知りたがっていたけれど、説明する余裕は無かった。
…それにどうせいずれ分かる事だ。私が番った事は。
「誠、どうしたんだ。もしかして東君の件か?」
私を追いかける様に廊下に出て来た社長秘書の橘は、昔から気の合うアルファの友人だ。今は秘書をやってもらっているが、社長代理も兼ねている有能な男だ。
「…発情期がもう来てるかもしれないと言う事だ。俺は東京から急いで現地に向かうから、しばらく代理を頼む。こんな事もあろうかと仮スケジュールは1ヶ月見越して用意してあるから、橘に代行をお願いしたい。」
社長室に入ると橘はPCを広げて、慌ただしくあちこちへと連絡を取り始めた。私は机の足元から小型のトランクを引っ張り出すと部屋のドアへ向かって歩き出した。
「おい、車で行くのか?」
橘の心配そうな声に、私は苦笑して背中の橘に手を振りながら答えた。
「安心しろ。自分じゃ運転しないから。流石に気が散って事故ったら困るからな。」
灰原家の車に乗って岳くんの住む地方都市へ向かいながら、私は一人感慨深い気持ちで目を閉じていた。さっきから身体は熱くなっていて、下手にフェロモンを飛ばしそうで無意識に落ち着かせようと腕を組んだ。
岳くんが発情期スタートしそうだと叶斗君からメッセージを貰って、私はずっと待ち望んでいたこの瞬間がやって来たのだとじわじわと実感していた。自分の番を持つ、それは今までリアリティのない事だったのに、岳君と出会ってから足早に自分の願いとして浮かび上がって来た。
岳くんは全くもってΩらしくない。所謂Ωというイメージを覆す様な振る舞いと性格をしている。それはΩである前にβであった事もそうだろうし、山伏の修行をして来た事も作用しているんだろう。
望まなくてもΩやアルファに絡みつく様な視線や態度を取られることの多かった私は、あの日甘い香りの岳くんに後ろ手に締め上げられた時にすっかり落ちてしまったんだ。私は思わず思い出し笑いして、岳くんと今夜か明日にでも番う事に自然微笑みが浮かび上がって来た。
「誠様、ご機嫌ですね。そんな笑顔は最近見せられなかったのに、何か喜ばしい事でもございましたか?」
小さい頃から私や家族の送迎をしてくれている三枝は、ミラー越しにそう揶揄ってくる。すっかり落ち着いた三枝に私はニヤリと笑って尋ねた。
「三枝、お前が結婚したのは何年前だったかな。」
すると三枝は眉を上げてイタズラっぽい表情で言った。
「そうですね、10年前になりますか。あの時は随分誠様に揶揄われたものです。誠様も丁度お年頃でしたしね。」
私はクスクス笑って、確かに新婚の三枝に際どい質問ばかりした事を思い出した。私はミラー越しに三枝に笑いかけて言った。
「じゃあ今度は私に、多少のことなら揶揄い返してもいいよ。多分私も惚気たくなるだろうから。でもそれは1週間後だけどね。」
すると三枝は目を見開いて少し興奮した声で私に言った。
「…良いニュースが聞けるんですね!?それは良い。ははは、灰原家にとっても素晴らしいニュースですね。」
「…大事な連絡だ。橘、社長室に一緒に来てくれ。」
それだけ言って手元のPCを閉じると、脇に抱えて何も言わずに会議室を出た。部下たちが顔を見合わせて、事情を知りたがっていたけれど、説明する余裕は無かった。
…それにどうせいずれ分かる事だ。私が番った事は。
「誠、どうしたんだ。もしかして東君の件か?」
私を追いかける様に廊下に出て来た社長秘書の橘は、昔から気の合うアルファの友人だ。今は秘書をやってもらっているが、社長代理も兼ねている有能な男だ。
「…発情期がもう来てるかもしれないと言う事だ。俺は東京から急いで現地に向かうから、しばらく代理を頼む。こんな事もあろうかと仮スケジュールは1ヶ月見越して用意してあるから、橘に代行をお願いしたい。」
社長室に入ると橘はPCを広げて、慌ただしくあちこちへと連絡を取り始めた。私は机の足元から小型のトランクを引っ張り出すと部屋のドアへ向かって歩き出した。
「おい、車で行くのか?」
橘の心配そうな声に、私は苦笑して背中の橘に手を振りながら答えた。
「安心しろ。自分じゃ運転しないから。流石に気が散って事故ったら困るからな。」
灰原家の車に乗って岳くんの住む地方都市へ向かいながら、私は一人感慨深い気持ちで目を閉じていた。さっきから身体は熱くなっていて、下手にフェロモンを飛ばしそうで無意識に落ち着かせようと腕を組んだ。
岳くんが発情期スタートしそうだと叶斗君からメッセージを貰って、私はずっと待ち望んでいたこの瞬間がやって来たのだとじわじわと実感していた。自分の番を持つ、それは今までリアリティのない事だったのに、岳君と出会ってから足早に自分の願いとして浮かび上がって来た。
岳くんは全くもってΩらしくない。所謂Ωというイメージを覆す様な振る舞いと性格をしている。それはΩである前にβであった事もそうだろうし、山伏の修行をして来た事も作用しているんだろう。
望まなくてもΩやアルファに絡みつく様な視線や態度を取られることの多かった私は、あの日甘い香りの岳くんに後ろ手に締め上げられた時にすっかり落ちてしまったんだ。私は思わず思い出し笑いして、岳くんと今夜か明日にでも番う事に自然微笑みが浮かび上がって来た。
「誠様、ご機嫌ですね。そんな笑顔は最近見せられなかったのに、何か喜ばしい事でもございましたか?」
小さい頃から私や家族の送迎をしてくれている三枝は、ミラー越しにそう揶揄ってくる。すっかり落ち着いた三枝に私はニヤリと笑って尋ねた。
「三枝、お前が結婚したのは何年前だったかな。」
すると三枝は眉を上げてイタズラっぽい表情で言った。
「そうですね、10年前になりますか。あの時は随分誠様に揶揄われたものです。誠様も丁度お年頃でしたしね。」
私はクスクス笑って、確かに新婚の三枝に際どい質問ばかりした事を思い出した。私はミラー越しに三枝に笑いかけて言った。
「じゃあ今度は私に、多少のことなら揶揄い返してもいいよ。多分私も惚気たくなるだろうから。でもそれは1週間後だけどね。」
すると三枝は目を見開いて少し興奮した声で私に言った。
「…良いニュースが聞けるんですね!?それは良い。ははは、灰原家にとっても素晴らしいニュースですね。」
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