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僕を取り巻く世界

高校生って面倒くさいね

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僕はロクシーに約束した事もあって、少し状況が進展した気がして、浮かれていたかもしれない。だから朝から憲吾が僕の側にいつもの様に来て、おはようって言いながら俺の肩を組んだ時拒否しなかったんだ。

いつもなら絶対、鬱陶しいって振り払ってた筈だ。でも、僕はそもそも爛れた生活にどっぷり浸かっていた訳だし、スキンシップには実は抵抗がない。


みんなに好奇な視線を浴びて嫌だっただけで、そう、言うなれば、憲吾は僕の中でその頃には「友達」枠に入ってた訳で。正門から下駄箱までの案外長い道のりを、僕たちはいつものように一方的に憲吾が喋るあれこれを、僕は時々合いの手を入れながら聞いていた。

「…だからさ、守、俺と付き合わねぇ?」

僕は話半分に聞いていたけれど、さすがにその言葉には引っ掛かった。いつもより近い憲吾は僕を覗き込んで、もう一度、なんて事ない様に明るく言った。


「守、俺、お前の彼氏になりたいって言ったんだけど。だめ?」

僕はそっと自分の肩から憲吾の手を外すと、立ち止まった憲吾を見上げて言った。

「…それってどう言う意味か分かって言ってるの?」

すると憲吾はクシャっと笑って答えた。

「俺もこんなタイミングで言うつもりは無かったんだけどさ。何か黙ってられなくて。今日の放課後、教室で待ってて。ちゃんと話したい。」


そう言うと、憲吾は手を振って先に下駄箱へと行ってしまった。僕はちょっと呆然として、どうしたものかと俯いた。すると後ろから来ていたのか三谷がやって来て、僕の様子を伺う様に覗き込んで、また下駄箱の方を見つめた。

僕がおはようと言って下駄箱へ向かって歩き出すと、三谷は一歩遅れてついて来て尋ねた。

「なぁ、…さっき二年の先輩何か言ってた?」


僕はもしかして聞かれていたのかなと思ったけれど、三谷には関係ない事だと思い返してチラッと三谷を振り返って言った。

「今日、ちょっと部活遅れてくかも。部長に言っておいてくれる?」

三谷は何か言いたげだったけど、僕は憲吾との話をどうするか考えてて、構っていられなかった。教室に着くと、掛かる声に適当に挨拶して席に着くと、僕は憲吾とのナインをスクロールして眺めた。


たわいもないやり取りがそこには重ねられていて、僕は獣人の世界からこちらに戻ってしまって、何とも処理できない心の葛藤と苦しみを、憲吾とのやり取りで和らげられていたのだと気づいた。

だからといって彼氏はないよね?




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