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貴族学院
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王都で遠乗りに行くのは久しぶりだった。学院入学前は兄様やエイデン様達と何度か王都の市街の外れの美しい湖まで出掛けていたものだった。
僕が学院が入学すると皆もそれぞれ忙しく、最後にここまで来たのはエドワードと一緒に訪れた秋の日だっただろうか。今もすっかり葉は落ちていたけれど、冬というにはもう寒さも緩んで、枝の先端は芽吹きの準備なのかピンク色に色づいていた。
僕はほんのりピンク色に染まった冬枯れの林を、ゆっくりと先に立って馬を歩かせていた。この季節に遠乗りする様な物好きはいなかったみたいで周囲にはひと気が無く、それはまるで二人ぼっちの世界の様に思われた。
僕はこれが最後になるかもしれないと無意識に奥歯を噛み締めて、湖の見える乾いた草地に馬を止めるとサッと降りた。僕の後からゆっくりとついてきたエイデン様は何もいわなかったけれど、僕に微笑みかけるとさっと優雅に馬から降りた。
僕はその美しい姿を、もう目の前では見られなくなるかもしれないと目に焼き付けた。僕の様子を伺うようにエイデン様は馬の首筋に手をやりながら、僕を見つめて言った。
「何か、今日のサミュエルは様子が変だね…。アルにもサミュエルの様子が変だって聞いたんだけど、詳しくは教えてくれなかった。…それにそうして大人っぽい表情をしていると、サミュエルがまだ騎士科前だって事忘れてしまいそうだ。」
そう言ってくしゃりと微笑むんだ。僕はそんなエイデン様になんて切り出して良いか分からなくなってしまった。どうして良いか分からなくなった僕は、慌てて近くの木に愛馬のシリーの手綱を引っ掛けると先に立って湖へと近づいた。
朝晩はまだキンと冷え込む水辺は透き通るような透明感で、風が渡るにつれて水面を揺らした。僕は湖の美しさにただ息をゆっくりと吸い込んで知らずに笑みを浮かべていたみたいだ。
いつの間にか隣に立っていたエイデン様に僕の手をそっと握ぎられて、僕はハッとしてエイデン様を見上げた。馬から降りた時に解いたのか、胸まで伸びた艶のある黒髪はサラリと揺れて、水辺の反射した光を纏う緑色の瞳は僕に目を逸らす事を許さなかった。
ああ、僕はエイデン様が好きなのかもしれない。エイデン様は15歳には見えない恵まれた身体で、疲れ知らずの凄腕の剣士として学院では知られていて、僕たち初級科は黒龍の騎士とこっそり呼んでいるほどだ。
出会った頃から優しくてカッコいいエイデン様に僕は心酔していたけれど、去年の領地での遠乗りでキスされた時から僕はエイデン様を好きになっていたんだ。
僕は喉につかえる、ぎゅっとした苦しさを堪えながらエイデン様を見つめて言った。
「エイデン様、僕、エイデン様とお兄様契約しません。」
僕が学院が入学すると皆もそれぞれ忙しく、最後にここまで来たのはエドワードと一緒に訪れた秋の日だっただろうか。今もすっかり葉は落ちていたけれど、冬というにはもう寒さも緩んで、枝の先端は芽吹きの準備なのかピンク色に色づいていた。
僕はほんのりピンク色に染まった冬枯れの林を、ゆっくりと先に立って馬を歩かせていた。この季節に遠乗りする様な物好きはいなかったみたいで周囲にはひと気が無く、それはまるで二人ぼっちの世界の様に思われた。
僕はこれが最後になるかもしれないと無意識に奥歯を噛み締めて、湖の見える乾いた草地に馬を止めるとサッと降りた。僕の後からゆっくりとついてきたエイデン様は何もいわなかったけれど、僕に微笑みかけるとさっと優雅に馬から降りた。
僕はその美しい姿を、もう目の前では見られなくなるかもしれないと目に焼き付けた。僕の様子を伺うようにエイデン様は馬の首筋に手をやりながら、僕を見つめて言った。
「何か、今日のサミュエルは様子が変だね…。アルにもサミュエルの様子が変だって聞いたんだけど、詳しくは教えてくれなかった。…それにそうして大人っぽい表情をしていると、サミュエルがまだ騎士科前だって事忘れてしまいそうだ。」
そう言ってくしゃりと微笑むんだ。僕はそんなエイデン様になんて切り出して良いか分からなくなってしまった。どうして良いか分からなくなった僕は、慌てて近くの木に愛馬のシリーの手綱を引っ掛けると先に立って湖へと近づいた。
朝晩はまだキンと冷え込む水辺は透き通るような透明感で、風が渡るにつれて水面を揺らした。僕は湖の美しさにただ息をゆっくりと吸い込んで知らずに笑みを浮かべていたみたいだ。
いつの間にか隣に立っていたエイデン様に僕の手をそっと握ぎられて、僕はハッとしてエイデン様を見上げた。馬から降りた時に解いたのか、胸まで伸びた艶のある黒髪はサラリと揺れて、水辺の反射した光を纏う緑色の瞳は僕に目を逸らす事を許さなかった。
ああ、僕はエイデン様が好きなのかもしれない。エイデン様は15歳には見えない恵まれた身体で、疲れ知らずの凄腕の剣士として学院では知られていて、僕たち初級科は黒龍の騎士とこっそり呼んでいるほどだ。
出会った頃から優しくてカッコいいエイデン様に僕は心酔していたけれど、去年の領地での遠乗りでキスされた時から僕はエイデン様を好きになっていたんだ。
僕は喉につかえる、ぎゅっとした苦しさを堪えながらエイデン様を見つめて言った。
「エイデン様、僕、エイデン様とお兄様契約しません。」
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