74 / 160
貴族学院
アル兄様の話
しおりを挟む
「サミュエルは優秀らしいね。噂が私たちの所まで届いているよ。」
僕の部屋で、ソファに向き合ってお茶を飲みながらアル兄様がそう言った。最近は僕も兄様たちに添い寝を断って、時々眠る前に部屋でお茶を飲みながら色々な話をしている。
僕は兄様の優しい微笑みににっこり笑い返して言った。
「僕には真面目に頑張ることしか…。それほど体格的には恵まれてませんから武芸に秀でる事は出来なくても、戦略を学んだり幅広い知識を得るのも楽しいです。」
アル兄様は眉を上げて僕に尋ねた。
「最近、エイデンから剣のレッスンは受けていないのかい?来年は契約するのだから、今から頼っても構わないんだよ?」
僕はアル兄様から目を逸らして呟いた。
「…ただでさえ兄様の従兄弟だからって契約して下さるのに、負担掛けたくありませんから。」
僕が思わずそう言うと、兄様は急に眉を顰めて僕に尋ねた。
「何か誤解があるようだ。一度ゆっくりエイデンと話したほうが良いと私は思うけどね。まぁ、私は可愛いサミュエルがいつまでも純真でいてくれるほうが嬉しいから、無理に誤解を解かなくても良いが…。
そうは言っても、サミュエルがそんな悲しげな顔を見せるのは心が痛むよ。」
そう言って何か聞きたげに僕を見つめたけれど、僕自身もはっきりしないこの胸の痛みの原因を兄様に話せる訳が無かった。そんな僕の様子を見た兄様はため息をつくと、立ち上がって僕の頭を撫でるとおやすみのキスをして部屋を出ていった。
僕は兄様の飲み残したカップの中の紅茶の揺らぎを見つめながら、目前に迫った学期前休暇後に寮生活に入らなければならないのを落ち着かない気持ちで考えていたんだ。
今の初級の勉強が、選択式の興味の持てる分野に分かれるのは楽しみだった。デビュー前にアル兄様やエイデン様に指導してもらったお陰で剣捌きも何とか合格点に達して、騎士科に進級も決まった。
けれど、寮生活でのお兄様契約が僕には気が重かった。いっそエイデン様じゃなければ良かった。そうしたら余計な期待をせずに単純に先輩後輩として過ごせただろう。
そんな風に考えていたせいなのかどうか、休暇前にエイデン様が侯爵家に遊びに来た。そんな時に限ってエドワードもアル兄様も留守で、僕がエイデン様と二人で過ごさなくてはならなくなった。
僕は少し強張った顔で、エイデン様に微笑み掛けると遠乗りに誘った。僕はずっと考えていたお兄様契約の解消を申し出るつもりだった。僕にはそれが一番の正解の様な気がしたから。
僕の部屋で、ソファに向き合ってお茶を飲みながらアル兄様がそう言った。最近は僕も兄様たちに添い寝を断って、時々眠る前に部屋でお茶を飲みながら色々な話をしている。
僕は兄様の優しい微笑みににっこり笑い返して言った。
「僕には真面目に頑張ることしか…。それほど体格的には恵まれてませんから武芸に秀でる事は出来なくても、戦略を学んだり幅広い知識を得るのも楽しいです。」
アル兄様は眉を上げて僕に尋ねた。
「最近、エイデンから剣のレッスンは受けていないのかい?来年は契約するのだから、今から頼っても構わないんだよ?」
僕はアル兄様から目を逸らして呟いた。
「…ただでさえ兄様の従兄弟だからって契約して下さるのに、負担掛けたくありませんから。」
僕が思わずそう言うと、兄様は急に眉を顰めて僕に尋ねた。
「何か誤解があるようだ。一度ゆっくりエイデンと話したほうが良いと私は思うけどね。まぁ、私は可愛いサミュエルがいつまでも純真でいてくれるほうが嬉しいから、無理に誤解を解かなくても良いが…。
そうは言っても、サミュエルがそんな悲しげな顔を見せるのは心が痛むよ。」
そう言って何か聞きたげに僕を見つめたけれど、僕自身もはっきりしないこの胸の痛みの原因を兄様に話せる訳が無かった。そんな僕の様子を見た兄様はため息をつくと、立ち上がって僕の頭を撫でるとおやすみのキスをして部屋を出ていった。
僕は兄様の飲み残したカップの中の紅茶の揺らぎを見つめながら、目前に迫った学期前休暇後に寮生活に入らなければならないのを落ち着かない気持ちで考えていたんだ。
今の初級の勉強が、選択式の興味の持てる分野に分かれるのは楽しみだった。デビュー前にアル兄様やエイデン様に指導してもらったお陰で剣捌きも何とか合格点に達して、騎士科に進級も決まった。
けれど、寮生活でのお兄様契約が僕には気が重かった。いっそエイデン様じゃなければ良かった。そうしたら余計な期待をせずに単純に先輩後輩として過ごせただろう。
そんな風に考えていたせいなのかどうか、休暇前にエイデン様が侯爵家に遊びに来た。そんな時に限ってエドワードもアル兄様も留守で、僕がエイデン様と二人で過ごさなくてはならなくなった。
僕は少し強張った顔で、エイデン様に微笑み掛けると遠乗りに誘った。僕はずっと考えていたお兄様契約の解消を申し出るつもりだった。僕にはそれが一番の正解の様な気がしたから。
60
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の兄、閨の講義をする。
猫宮乾
BL
ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
僕はただの平民なのに、やたら敵視されています
カシナシ
BL
僕はド田舎出身の定食屋の息子。貴族の学園に特待生枠で通っている。ちょっと光属性の魔法が使えるだけの平凡で善良な平民だ。
平民の肩身は狭いけれど、だんだん周りにも馴染んできた所。
真面目に勉強をしているだけなのに、何故か公爵令嬢に目をつけられてしまったようでーー?
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?
義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。
竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。
あれこれめんどくさいです。
学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。
冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。
主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。
全てを知って後悔するのは…。
☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです!
☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。
囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる