ヤンデレ王子とだけは結婚したくない

第1章

計画

　ともかく、作戦を変更するしか道はなかった。


　婚約者に選ばれてしまったのだから、仕方がない。

　一体全体、あの殿下がどういう理由で私を婚約者にえらんだのかは知らないけれど。


　結果的に、私は彼の婚約者になってしまった。


　ストーリーをねじ曲げることは、登場人物には許されないのか。


　ただ、まだ救いの道はある。


　マクシミリアン殿下の方から、婚約破棄を申し出てもらうことだ。

　主人公が登場する前に。


　そうすれば、私は死なずに済む。


　もちろんこれは乙女ゲームで、攻略対象はマクシミリアン殿下以外にも存在する。

　主人公がどのルートを選択するかどうか、今の段階ではわからない。


　しかし、そうだからとしても。

　嫌な死に方をする可能性が1つでもあるなら、私は全力で回避したい。


　この世界の仕組みについて、私はまるでわかっていないけど。


　前世での私の記憶によると、マクシミリアン殿下は人気キャラだった。

　非公式人気キャラランキングを片っ端から調べてみても、隠れルートキャラなのにも関わらず、彼は上位に君臨していた。


　つまり、主人公に自我があるタイプか、それともただの空っぽな器かどうかはともかく、奴が選ばれる可能性は大いにありうる。


　もしそうなった場合、私に逃げる場所はなくなってしまう。


　しかしだからと言って、安易に婚約破棄してもらおうと暴れ回ったら、それこそ死へのエレベーターに飛び乗るようなもの。


　彼は、ハリエットの壮絶な虐めによって、性格がねじ曲がってしまう。


　つまり。

　私が暴れ回れば、最悪、ヤンデレという名の化け物が誕生してしまうかもしれない。
　

　私は今、彼を傷つけず、いかに婚約破棄してもらうかという無理ゲーをスタートする方法を選ぶしかなかった。