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第1章

イベント

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 全く仲良くなる気配がなかった。


 計画を作ったの誰だなんて、過去の自分の胸倉を掴みたいくらい、何もうまくいっていなかった。


 殿下の婚約者になってしばらくしたけれど。

 殿下とは、仲良くなった兆しが全く見えない。


 相変わらず、質問しても短い答えしか返ってこないし。

 向こうから、話を膨らませようともしてこない。


 定期的に両親たちから、

「どうだ? ハリエット。マクシミリアン殿下とは仲良くしてるのか?」

 なんて探りを入れられるけど。


 なんとも答えようがない。


「仲良くしてますよ」

 そう嘘をつけばそれまでだけど、嘘をついたところで私にメリットがないし。


 それで変に食いつかれて、

「じゃあいつもどんな話をしてるの?」

 なんて聞かれようものなら、もうどうしようもなくなる。


 どんな話をしてるですって?


 そもそも、話なんて出来ていない。

 だってあの子、言葉のキャッチボールが下手くそ過ぎるもの。


 人と会話すればするほど、相手と仲良くなれるってよく言うけれど。


 あんな不毛な会話で、一体どうやって仲良くなれるというのだろうか。


 私は疲れていた。


 それと同時に、前世で友人の言っていた言葉をはっきりと思い出す。


「二次元と三次元の好みって、やっぱ違うよね。二次元じゃ明るい人が好きだけど、三次元じゃ陽キャ無理だし。真逆だわ」


 それを聞いた当初は、いまいちピンと来なかったけれど。


 今ならわかる。


 駄目だわ。

 私、リアルのマクシミリアン殿下、駄目だわ。


 二次元じゃ、マクシミリアン殿下みたいなタイプ、凄く好きだった。


 物凄く面倒で、かつヤンデレ。

 感情がクソデカであればあるほど、私の心は歓喜で震えていた。


 だけど、現実じゃそうはいかない。


 リアルは、選択肢がいくつか設定されているわけじゃないし、彼を楽に口説けるための補助輪もついていない。


 つまり、物凄く面倒かつヤンデレ男子は、ハイパー面倒。


 最悪だ。

 なんで生まれ変わってすぐに、こんな目に遭わなくちゃいけないんだろう。


 週1でやってくる地獄に怯えながら日々を過ごしている私。

 一向に先が見えない中、とうとう最初のイベントがやってきた。


 私がマクシミリアン殿下の婚約者として、初めて表舞台に登場する日である。

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