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隣国
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私たち家族は国境を越え、隣国に向かった。
観光するわけではないので、すぐに隣国の行政局へ向かう。
馬車の道のりは長かった。
隣の国だから、関所を渡ればすぐに入国出来るのだが、いかんせん私たち家族は中央都市に住んでいるし、そこから辺境へ行き、そして関所を経て隣国の中心部へ向かうとなると、かなりの日数がかかるのだ。
しかし、私は嬉々として、学園に休暇届を出した。
あのリアムとジニーの仲睦まじい様子を目に入れてしまうこともしばらくないし、ランスのおかげでその問題をすっかり忘れてしまうことさえ出来たからだ。
馬車旅の最中、私たちはランスの思い出話で盛り上がった。
「お前は本当に、ランスが大好きだったな」
と、お父様はからかうように言った。
「子どものころ、ランスに会いたい、会いたいといつも言っていた。それに、会えば会ったでくっついて離れなかった」
「もう、お父様ったら」
私は赤面する。
「ランスに会ったら、そんなこと絶対に言わないでくださいよ」
くすくすとお母様は笑う。
「あのときのこと、覚えてる? ――ほら、シャーロットが我が家の池に落ちてしまったときのことよ」
「ああ……」
父は懐かしそうに目を細めた。
「ええ」
私も頷いた。
いつだったか、私とランスが庭で遊んでいたとき、誤って池に落ちてしまったことがあったのだ。
私は驚いて身体をばたつかせ、溺れてしまっていた。
周囲に大人は誰もいなかった。
そのとき、ランスが池に飛び込み、私を陸まで泳いで救ってくれたのだ。
「イザベラの悲鳴が聞こえたとき、本当に驚いたわ」
と、お母様。
「でも、ランスが助けてくれたのは本当に幸運だったわね」
私は頷く。
「ええ。今でも感謝しています」
私は熱を出し、その数週間後ランスの家族は他国へ旅行に行ってしまった。
それが、私とランスが最後に会った日だったのだ。
私は今でもあのときのお礼を言えずじまいだ。
「私ね、」
窓の外を見つめながら言った。
「ランスに会ったら、あのとき助けてくれたお礼を言うつもりなんです。彼は覚えていないかもしれないけれど」
私たちが最後に会ったのは、10年前だ。
「覚えているわよ、きっと」
お母様は私に向かって優しく言った。
「ランスは優しくて聡明な子だったわ。きっと覚えているわ」
「そうね、きっとそうですよね」
私はお母様の励ましを聞いて、ゆっくりと深呼吸をした。
期待に胸を躍らせる私たちを連れて、馬車は隣国の道をゆっくりと進んでいっている。
観光するわけではないので、すぐに隣国の行政局へ向かう。
馬車の道のりは長かった。
隣の国だから、関所を渡ればすぐに入国出来るのだが、いかんせん私たち家族は中央都市に住んでいるし、そこから辺境へ行き、そして関所を経て隣国の中心部へ向かうとなると、かなりの日数がかかるのだ。
しかし、私は嬉々として、学園に休暇届を出した。
あのリアムとジニーの仲睦まじい様子を目に入れてしまうこともしばらくないし、ランスのおかげでその問題をすっかり忘れてしまうことさえ出来たからだ。
馬車旅の最中、私たちはランスの思い出話で盛り上がった。
「お前は本当に、ランスが大好きだったな」
と、お父様はからかうように言った。
「子どものころ、ランスに会いたい、会いたいといつも言っていた。それに、会えば会ったでくっついて離れなかった」
「もう、お父様ったら」
私は赤面する。
「ランスに会ったら、そんなこと絶対に言わないでくださいよ」
くすくすとお母様は笑う。
「あのときのこと、覚えてる? ――ほら、シャーロットが我が家の池に落ちてしまったときのことよ」
「ああ……」
父は懐かしそうに目を細めた。
「ええ」
私も頷いた。
いつだったか、私とランスが庭で遊んでいたとき、誤って池に落ちてしまったことがあったのだ。
私は驚いて身体をばたつかせ、溺れてしまっていた。
周囲に大人は誰もいなかった。
そのとき、ランスが池に飛び込み、私を陸まで泳いで救ってくれたのだ。
「イザベラの悲鳴が聞こえたとき、本当に驚いたわ」
と、お母様。
「でも、ランスが助けてくれたのは本当に幸運だったわね」
私は頷く。
「ええ。今でも感謝しています」
私は熱を出し、その数週間後ランスの家族は他国へ旅行に行ってしまった。
それが、私とランスが最後に会った日だったのだ。
私は今でもあのときのお礼を言えずじまいだ。
「私ね、」
窓の外を見つめながら言った。
「ランスに会ったら、あのとき助けてくれたお礼を言うつもりなんです。彼は覚えていないかもしれないけれど」
私たちが最後に会ったのは、10年前だ。
「覚えているわよ、きっと」
お母様は私に向かって優しく言った。
「ランスは優しくて聡明な子だったわ。きっと覚えているわ」
「そうね、きっとそうですよね」
私はお母様の励ましを聞いて、ゆっくりと深呼吸をした。
期待に胸を躍らせる私たちを連れて、馬車は隣国の道をゆっくりと進んでいっている。
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