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 なんとなくわかっていた。


 なんとなくそうだろうとは。


 ジニーは男爵令嬢だ。

 そんな身分の低い彼女が、国王主催の舞踏会に参加することは本来出来ない。

 そもそも、招待状すら届くはずがない。


 それなのに行くという彼女の言葉から、リアムから誘われたと察するのは容易だった。


 わかっていたこととはいえ、動揺してしまう。


 そんな私を見て、ジニーはわざとらしく首を傾げた。

「どうしたの? シャーロット様」

「い、いいえ。何も……」


 私は少し愕然とした。


 リアムは、私にジニーを連れていく旨を伝えていない。

 つまり、私が何も知らなければ。


 舞踏会に行って初めて私はジニーの参加を知る。

 リアムはジニーをエスコートし、婚約者である私のことは放置。


 私は1人ぼっち。


 どういうことかというと。

 公爵子息リアムは、婚約者であるシャーロットではなく、浮気相手である男爵令嬢を選んだ。

 わざわざ国王主催、すなわち王族や高位貴族たちの前でその浮気相手をエスコートすることは、シャーロットではなくジニーが一番大切な存在で、寵愛しているということをアピールすることだ。

 私に恥をかかせたいのか、それともそこまでリアムの考えが及んでいないのか。


 少なくとも、リアムが浅はかであることに変わりはない。


「で」

 私はジニーの言葉を繰り返す。

「舞踏会について、教えてほしいと?」

「ええ、そうなの」

 ジニーは頷く。

「ドレスとか、ダンスの練習とか、舞踏会におけるマナーとか。私、知らないのよ」

「残念ですが」


 私は出来るだけ失礼のないよう、目を伏せる。

「私も、舞踏会は今回が初めてなんです」

「えっ」


 そもそも、国王陛下は舞踏会という派手なものを好まない。

 それは王妃陛下も同様で、王子はまだ小さい。


 もちろん高位貴族が個人的にパーティを開き、私の下に招待状が届くこともあるが、私は今まで一度もそれに参加したことがない。


 理由はもちろんリアム。

昔でも今でも、あの男は私を嫌っている。


当然、パーティは楽しいものではなくなるだろう。

 王族主催でなければ、舞踏会について出席義務はない。

 リアムは何度も参加しているようだが、私はずっと回避し続けていた。


「私に聞くよりも、何度も参加しているリアムに直接教えてもらう方が的確ですよ。それに、私にはランスの面倒を見るという仕事もありますし。時間もありません――それでは、失礼します」

「えっ、ちょっと」


 今度こそ私はジニーにそう言って、足早に自分の席に戻った。
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