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第2章

登校

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 非常に残念なことに。


 いや、本来なら非常に有難いことなんだろうが。


 俺の身体は死ぬほど丈夫だった。


 あんなに穏やかとは言えなかったぼっち人生においてでさえ、俺は今まで一度も、

「学校へ行きたくない」

 と、思ったことはなかった。


 母さんが汗水垂らして働いた金で、俺は学校に通うことが出来ている。

 それをずる休みして、むざむざ無駄にするわけにはいかないと考えていたのだ。


 特に高校なんてそうだ。

 義務教育でないのに、生活費のことだってあるのに、母さんはちゃんと授業料やなんやらを払ってくれている。


 もちろん俺だってバイトしているが。


「学校へ行きたくない」
 
 なんて思ったことがないというよりは、そんなことを思うなんて罰当たりだ、というのが俺の気持ちだった。


 ――しかし。


 超行きたくねぇ。

 マジで。


 あそこまで人にボロクソ言われたことがなかったから、西寺によって俺のか弱いメンタルはズタボロだった。

 怠い気もするし、体調悪い気もする。


 嫌過ぎて心臓がバクバクいってる。


 だが、残念なことに。

 非常に残念なことに、俺は根っからの健康体だった。


 普段から不摂生せず、ていうか不摂生する時間も金もないが。

 超優良児な俺の身体は、いつも通り、いやいつも以上に元気だった。


 日頃の善行がここで俺の背中を容赦なく刺してくる。


「ねえ、大丈夫? 圭」


 今朝、俺の様子がいつもと違うことに気づいた母さんがそう声をかけてくる。

「何がだ?」


 俺は冷静を装いながら、制服に着替えていた。

「顔色、かなり悪いけど――熱測った?」

「ああ……。うん」


 俺の先程までつけていた体温計は、何度測っても、36.5をキープし続けていた。


 すなわち、なんの問題もない。

「36.5だった」

「そう。じゃあ、問題ないのね」


 母は少し安心したように一息つき、慌ただしく家から出て行く。

「行ってきまーす!」

「母さん!」


 俺はその背中に向けて叫んだ。

「母さん、弁当は? 持った?」

「大丈夫! ちゃんと入ってるわ! ――行ってきまーす!」


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