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恋愛相談

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「嫉妬……?」


 今まで、考えたことのない言葉を聞いて、私は困惑した。


 「嫉妬」という言葉自体は知っている。

 でも、私の人生の中では、一度もその感情を認知したことがなかった。


「そう、嫉妬です」

 ジェーンは繰り返した。


 彼女は変わらずメイドらしく丁寧な口調で話していたが、その声は若干上ずっていた。


「ソフィア様は、ルーク様が誰かと2人っきりで会っているのが嫌だったのでしょう? それを教えてくださらなかったのが、嫌だったのでしょう?」

「ええ」

「なら、きっとそれは嫉妬です。自身の好きな人が他の人のことを好きになってしまうのが怖くて、イライラしてしまうんです」

「好き……?」


 私は自分の頬に手を当てた。


「私が、ルークのことを好きだってこと?」

「もちろんそれは、まだわかりません。そういうものは、友人間や家族間でも起こったりはしますからね」

 ただ、とジェーンは続ける。


「今まで、ソフィア様はルーク様に嫉妬したことがないのでしょう?」

「ええ」

「ということは、進歩です」

「進歩?」

「はい。ソフィア様にとって、ルーク様の立ち位置が変わったのです。ルーク様が離れていくのが、嫌に思うようになったのですよ」

「そう……」


 進歩かどうかはわからないが、ジェーンの意見はかなり説得力があるように思えた。


「それで、私はどうすれば良いのかしら?」

「どうすれば良い、とは?」

「私、こんなふうな気持ちになったこと初めてなのよ。だって、殿下の婚約者だったころは、嫉妬なんてしてはいけないと思っていたから。そうしないようにしていたから」


 きっとルークに嫉妬するようになったのは、その婚約者としての重圧から解き放たれ、気が緩んでしまったからなのだろう。


「嫉妬は悪じゃないですよ」

 ジェーンは優しく言った。

「自然なことです。大丈夫ですよ」

「でも私、少しルークにきつく当たってしまったの。どうしましょう」

「簡単です。謝ればいいんですよ」

「どうやって?」

「昨日はごめんなさい。あなたが他の女子生徒と2人っきりでいると聞いて、嫉妬してしまったんですーーとか?」

「恥ずかしいわ」

「ソフィア様」


 ジェーンは真剣な眼差しを私に向ける。

「これはチャンスです」

「チャンス?」

「そうです。未だ殿下のことが忘れられないソフィア様が、前に進むための。ちゃんと他の男性方に目を向けられるようになるためにも、ここは踏ん張り時です」

「踏ん張り時」

「ここで自分の気持ちに素直にならなければ、お言葉ですが、ソフィア様は前に進めません」

「そう……」


 私はしばし悩んだのち、頷いた。


「わかったわ。そうすることにする」

「頑張ってくださいね、ソフィア様」


 ジェーンは、にっこりと微笑んだ。
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