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第2章

魔王城②

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「では、」


 魔王は私を地面に降ろした。


「我が城へ案内しよう」

「ええ……」


 了承したものの、1つ疑問点がある。

「ここからあの城までってことよね?」


 私は城の方角を指さした。

「ああ」

「遠くない?」


 城は、この紫色のもやの先に部分的に見えていた。

 瘴気は濃く、少し先の景色さえ見えない。

 ここから見える城のサイズ感的にも、結構な距離を歩かなければ辿り着けないような雰囲気だった。


「むむ」


 魔王は少し口をすぼめた。

「お前はわがままだな。人間の貧弱な身体でも、それくらいは歩けるだろう」

「誰が貧弱ですって! ーーまあ、いいわ。頑張って歩くわよ」


 確かに、私はこれからここで一生を過ごすのだ。

 きっと1人で外へ出る機会もあるだろう。

 そんなときに一々、人、いや魔族の手を借りるのは申し訳ない。


「素直でよろしい」


 魔王は偉そうに頷き、ローブの下から自分の腕を伸ばした。

 真っ黒な布の先に少し見えた細い指先から、爆発音とともに鈍い光が発生する。


 すると、瘴気が一気に吹っ飛び、城までの一筋の道が出来上がった。


「へぇ」

 私は思わず感嘆の声を漏らした。


「凄」

「こんなもの、最低限だーーお前も練習すれば出来るようになるぞ」

 褒められて嬉しいのか、自慢げに魔王は言う。

「無理よ。だって私、魔法の才能がないもの」


 魔法が使えるのは、一部の人間だけだ。

 早い話が、私はその一員ではなかった。

 他の人々と同じ、特殊能力を持たない一般人である。


「何を言う」


 魔王は顔を顰めた。


「先ほど、お前の身体に余の魔力を入れてやったではないか」

「そんなことで出来るようになるの?」


 他人の魔力で、魔法が使えるようになるのだろうか。


 純粋に疑問に思って、そう尋ねた。


「知らん。余に人間のことなどわからぬ」

「そ、そうですか……」


 適当なこと言いやがって、この人。


「それでは、行くとしよう」

 魔王はそう言って、1人でさっさと道を歩き始める。


「ちょ、ちょっと待ってよ!」


 私は慌てて置いてかれまいと、走って魔王を追いかけた。
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