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2章
2章4話(105話)
しおりを挟む公爵令嬢として過ごした時間はたったの二年。だけど、その二年の間に色々なことがわかった。私がお茶会に参加すれば仲良くなろうと近付いて来る人は多かったけれど、その仲良くなろうには確実な下心があった。私を利用しようとする人たちも結構居たし……。それを感じ取って、二度目は行かなかったりもした。
お茶会に招待する人にも悩んで、アル兄様に助言をいただくために手紙を書いたり……、いや、アル兄様との手紙のやり取りはアル兄様がアカデミーに入学してから途絶えたことはないのだけどね。
そのアル兄様からワンポイントアドバイスをいただいた。
『シリル兄様の勘とは別を選ぶこと』
……アドバイス……? と思ったけれど、どうやらシー兄様には選んだことと逆のほうが良い選択になるという良くわからない能力があるらしい。これも巫子の血なのだろうか……?
「リザ、どうかした?」
「ううん、ちょっと思い出しちゃって……」
パーティー会場につくと、階段の前で女性に囲まれている人たちが見えた。……見覚えのあるような……と思ったら、囲まれていたのはアル兄様たちのようだ。私たちに気付くと大きく手を振った。……心なしか、助けてくれと言われているような気がする。
私たちは顔を見合わせて、それからアル兄様たちのところへ向かった。
「リザ! 入学おめでとう!」
わざとらしく大きな声でそう言うアル兄様に、アル兄様たちを囲んでいた女性たちがぴたりと動きを止めて、それからじろっと私を見た。……おお、迫力があるなぁ。でも、大丈夫。私はもう、誰かに怯えることはしないから。
「ありがとうございます、アル兄様。アル兄様、私の友人を紹介致しますわ」
「ああ、手紙で読んで知っていたけど、直接紹介してくれるなんてリザは優しいな! それじゃあ、レディたち、ぼくらはこれで!」
にこやかに微笑みを浮かべるアル兄様に、女性たちは「えー!」と言う声を合唱した。……アル兄様、モテているのねぇ。そして、ヴィンセント殿下もモテているみたいだけど……何だか、表情が違うわ。私と会っていた時と……。ヴィンセント殿下は私のほうに近付いて来た。
……どうしたんだろう?
「久しぶりだね、エリザベス嬢。僕の贈ったペンダント、使ってくれてありがとう」
――あ~、わかりやすい牽制だ。さっきまで無表情だった人が私に対しては笑顔だし……、私は少し考えて、ヴィンセント殿下の言葉に乗ることにした。
「ごきげんよう、ヴィンセント殿下。ええ、肌身離さず。ヴィンセント殿下も、私が贈ったペンダントを使ってくださっているのですね、ありがとうございます」
にこっと微笑みを浮かべてそう言うと、女性たちの目がつり上がった。
「僕も肌身離さず。このペンダントをしていると調子が良いんだ」
それは良かった。女性たちが何か言いたそうだったけど、私は公爵令嬢なので中々口を出せないみたい。……養子ってことは広く知られているだろうけど、アンダーソン家の力は強いみたいだ。
「こんなところに集まっていては、他の人たちに迷惑だね。エリザベス嬢、僕にも君の友人を紹介してくれる?」
「もちろんですわ」
ヴィンセント殿下はそう言うと、パーティー会場への階段を上がる前に手をすっと差し出された。エスコートしてくれるみたい。私はその手を取って階段を上った。婚約者候補だもの、不自然ではないわよね……。
パーティー会場に入る前に、私たちは足を止める。ジーンはアル兄様、イヴォンは……誰? 知らない人にエスコートされて来た。誰だろう……、と思ったけれど、何だか一度お会いしたことがあるような顔だなぁと……。誰だったかしら?
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