29 / 353
2章
2章10話(111話)
しおりを挟む
私とヴィニー殿下がそんな会話をしていると、アル兄様とシー兄様、ジーンがバルコニーに来た。みんな少し疲れた顔をしていて、目を丸くしてしまった。
「どうしたの?」
「……流石にちょっと踊り疲れて……」
「すごいよ、あの赤いドレスの子。ノンストップで踊り続けている……」
「こっちに来たから逃げてきた」
……私は思わず眉を下げて微笑んだ。会場へと視線を向けると確かにまだ踊っている。シー兄様がバルコニーの柵に寄りかかるように背中を預ける。そして、「ふー」と息を吐いた。
「シー兄様もお疲れのようですね」
「疲れた……と言うよりも、緊張した。オレ、こういう華やかな場所に滅多に行かないし」
「……そうなのですか?」
……あ、でも確かにシー兄様が舞踏会や貴族の集まりに行ったなんて聞いたことがない。騎士団に所属しているからか、そういう集まりにはあまり参加しないようにしていると聞いたことがある。……騎士団関係あるのかしら?
「シリル兄様より僕のほうがよっぽどお茶会に参加しているよ」
「そこはほら、アルはアンダーソン家の次期当主だし。顔を売っておかないと」
シー兄様に近付いて、アル兄様が不服そうに肩をすくめる。それに対してヴィニー殿下がくすくすと笑い、ジーンがおろおろとしていた。バルコニーに私たちが集まっているからか、ちらちらとこちらを窺うような視線を感じる。
「私はそろそろ戻りますね」
「では、私も」
「ジーンは来たばかりじゃない」
私がそう言うと、ジーンは緩やかに微笑んで、耳元でこう囁いた。
「男性三人と残るのは気恥ずかしいわ」
「……なるほど」
アル兄様とシー兄様は私にとって家族だし、ヴィニー殿下とも何度も話したことがあるから気にしたことがなかったけれど……そうよね、あまり話したことがない人と一緒に居るのは気まずいわよね。
「それじゃあ、私たちは先に戻るね」
ジーンと腕を組んで、三人に向けてにっこりと笑みを浮かべてから会場に戻る。……やっぱり会場は煌びやかだわ……。
「ジーン、お腹は空かない?」
「そうね、お腹空いたかも。美味しそうな料理が並んでいるし……、それに、エリザベスはたくさん食べないとね」
「……これでも身長伸びたってば」
「もっともっと、伸ばさないとね」
そう言って笑うジーンに、私は小さく微笑みを浮かべた。そして、私たちは料理の並んでいる場所へと向かい、美味しい料理を頂いた。……料理人が一生懸命に作っているのだ、私が食べたものは全部美味しかった。ジーンも美味しそうに食べていた。
「あ、あの、ごきげんよう」
「ごきげんよう、クラウディア様」
「わ、わたくしの名をご存知で……?」
「同じクラスですもの」
自己紹介で自分が留学生だと言っていたから、一番印象に残っている。クラウディア様。ここからかなり離れた国の王族らしい。末の王女だから、出来ればこの国に留まりたいと話していた。
「嬉しいですわ、わたくし……国では印象が薄いようで……」
しょんぼりと肩を落として……いえ、声のトーンも落ちている……。きっと、自分に自信がない人だ。俯いてばかりいた、以前の自分を思い出して私は彼女の手を取った。
「並んでいる料理は食べまして? 口に合えば良いのですが……。私が食べた中なら、こちらの料理がお勧めですわ。ジーンはお気に入りある?」
「私はこの料理かしら」
私とジーンでクラウディア様に料理を勧めると、クラウディア様はちょっと戸惑ったように私たちを見る。それでも勧めた料理を食べてくれた。
「美味しい……!」
「良かった!」
本当に美味しかったのだろう、彼女の表情が綻び、パクパクと料理を口に運ぶのを見て、私はホッとした。
「どうしたの?」
「……流石にちょっと踊り疲れて……」
「すごいよ、あの赤いドレスの子。ノンストップで踊り続けている……」
「こっちに来たから逃げてきた」
……私は思わず眉を下げて微笑んだ。会場へと視線を向けると確かにまだ踊っている。シー兄様がバルコニーの柵に寄りかかるように背中を預ける。そして、「ふー」と息を吐いた。
「シー兄様もお疲れのようですね」
「疲れた……と言うよりも、緊張した。オレ、こういう華やかな場所に滅多に行かないし」
「……そうなのですか?」
……あ、でも確かにシー兄様が舞踏会や貴族の集まりに行ったなんて聞いたことがない。騎士団に所属しているからか、そういう集まりにはあまり参加しないようにしていると聞いたことがある。……騎士団関係あるのかしら?
「シリル兄様より僕のほうがよっぽどお茶会に参加しているよ」
「そこはほら、アルはアンダーソン家の次期当主だし。顔を売っておかないと」
シー兄様に近付いて、アル兄様が不服そうに肩をすくめる。それに対してヴィニー殿下がくすくすと笑い、ジーンがおろおろとしていた。バルコニーに私たちが集まっているからか、ちらちらとこちらを窺うような視線を感じる。
「私はそろそろ戻りますね」
「では、私も」
「ジーンは来たばかりじゃない」
私がそう言うと、ジーンは緩やかに微笑んで、耳元でこう囁いた。
「男性三人と残るのは気恥ずかしいわ」
「……なるほど」
アル兄様とシー兄様は私にとって家族だし、ヴィニー殿下とも何度も話したことがあるから気にしたことがなかったけれど……そうよね、あまり話したことがない人と一緒に居るのは気まずいわよね。
「それじゃあ、私たちは先に戻るね」
ジーンと腕を組んで、三人に向けてにっこりと笑みを浮かべてから会場に戻る。……やっぱり会場は煌びやかだわ……。
「ジーン、お腹は空かない?」
「そうね、お腹空いたかも。美味しそうな料理が並んでいるし……、それに、エリザベスはたくさん食べないとね」
「……これでも身長伸びたってば」
「もっともっと、伸ばさないとね」
そう言って笑うジーンに、私は小さく微笑みを浮かべた。そして、私たちは料理の並んでいる場所へと向かい、美味しい料理を頂いた。……料理人が一生懸命に作っているのだ、私が食べたものは全部美味しかった。ジーンも美味しそうに食べていた。
「あ、あの、ごきげんよう」
「ごきげんよう、クラウディア様」
「わ、わたくしの名をご存知で……?」
「同じクラスですもの」
自己紹介で自分が留学生だと言っていたから、一番印象に残っている。クラウディア様。ここからかなり離れた国の王族らしい。末の王女だから、出来ればこの国に留まりたいと話していた。
「嬉しいですわ、わたくし……国では印象が薄いようで……」
しょんぼりと肩を落として……いえ、声のトーンも落ちている……。きっと、自分に自信がない人だ。俯いてばかりいた、以前の自分を思い出して私は彼女の手を取った。
「並んでいる料理は食べまして? 口に合えば良いのですが……。私が食べた中なら、こちらの料理がお勧めですわ。ジーンはお気に入りある?」
「私はこの料理かしら」
私とジーンでクラウディア様に料理を勧めると、クラウディア様はちょっと戸惑ったように私たちを見る。それでも勧めた料理を食べてくれた。
「美味しい……!」
「良かった!」
本当に美味しかったのだろう、彼女の表情が綻び、パクパクと料理を口に運ぶのを見て、私はホッとした。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
8,761
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。