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2章
2章93話(194話)
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「ディアは踊り、得意かしら?」
「得意……というほどでもないけれど、国にいた時にはおばあ様から習っていたわ」
「ジーンは得意そうよね」
「そこまで得意というわけではないけれど……。まぁ、こういうのは練習あるのみよ」
……やらなきゃいけないことがいっぱいだわ。舞踏会のダンスに、舞姫のダンス。そして、なによりも優先させたいのは、マザー・シャドウとの対峙。彼女と対峙する前に、アミュレットの作り方をみんなに広めないと……。
「パートナーのことは後で考えるとして、ディアはあの白いドレスで舞踏会に出るの?」
「え? ええ、そのつもりよ」
「なら、それに合わせたコーディネートを一緒に考えましょう。エリザベスからもらったアミュレットを組み合わせて、ね」
ぱちんとディアに向かってウインクを投げるジーンに、ディアはぱぁっと表情を明るくさせた。私が渡したアミュレットをつけてくれるらしい。なんだか嬉しいけれども気恥ずかしい気分。最初にそう言われたからかな?
「エリザベスも後でコーディネートを考えましょうね」
「入学祝いパーティーの……」
「ダメ」
……最後までいう前に止められてしまった。こういう時のジーンには、お任せしたほうが良さそう。私が「あとでね」と声を掛けると、満足げにうなずいてディアへと顔を向けて色々とコーディネート案を話し始めた。ディアはちょっと戸惑いながらも真剣にジーンの話を聞いている。
その日、イヴォンは夜に帰って来て、改めて私たちに力を貸して欲しいと頭を下げた。
私たちは顔を見合わせて、当然でしょう、と返した。その時のイヴォンの不安に揺れていた瞳が段々と煌めいてくのを見て、私はほんの少しだけ安堵した。
「ハリスンさんにはなんて言ったの?」
「時間をちょうだいって。あなたと並ぶための時間を」
きゃあ、とジーンと私が両手を組んで騒ぐ。ディアは消灯時間ギリギリまで、私たちの部屋で一緒に話した。ディアもそれを聞いて頬を赤らめていた。一番真っ赤だったのは、やっぱりイヴォンだったけれど。
「……私、がんばってみるわ。次の休日にエントリーしてくる」
「応援しているわ、イヴォン」
「わ、わたくしも……!」
「私も!」
どこか吹っ切れたようにも見えるイヴォンに、応援の言葉を伝えるジーン。それに続くように私たちも言葉を伝えた。イヴォンはにこっと微笑んで「ありがとう」と優しい声色で言う。
「……プロポーズされた時は混乱してしまったけれど、もしかしたら丁度良い機会なのかもしれないわ」
「丁度良い機会?」
「……どうして私が彼を好きになったのか、見つめ直す機会」
照れたように視線を下げるイヴォンに、私とジーン、ディアはやっぱりきゃあと騒いだ。身近な人の恋愛話だ。思わずはしゃいでしまう。
「ハリスンさんは、どうやってイヴォンの騎士になったの?」
つい、そう尋ねてしまった。イヴォンは「話していなかったっけ?」と首を傾げる。私たちがこくりとうなずいたのを見て、頬に手を添えてゆっくりと息を吐き……懐かしむように目を細めた。
「……落としたハンカチをね、拾ってくれたの」
「得意……というほどでもないけれど、国にいた時にはおばあ様から習っていたわ」
「ジーンは得意そうよね」
「そこまで得意というわけではないけれど……。まぁ、こういうのは練習あるのみよ」
……やらなきゃいけないことがいっぱいだわ。舞踏会のダンスに、舞姫のダンス。そして、なによりも優先させたいのは、マザー・シャドウとの対峙。彼女と対峙する前に、アミュレットの作り方をみんなに広めないと……。
「パートナーのことは後で考えるとして、ディアはあの白いドレスで舞踏会に出るの?」
「え? ええ、そのつもりよ」
「なら、それに合わせたコーディネートを一緒に考えましょう。エリザベスからもらったアミュレットを組み合わせて、ね」
ぱちんとディアに向かってウインクを投げるジーンに、ディアはぱぁっと表情を明るくさせた。私が渡したアミュレットをつけてくれるらしい。なんだか嬉しいけれども気恥ずかしい気分。最初にそう言われたからかな?
「エリザベスも後でコーディネートを考えましょうね」
「入学祝いパーティーの……」
「ダメ」
……最後までいう前に止められてしまった。こういう時のジーンには、お任せしたほうが良さそう。私が「あとでね」と声を掛けると、満足げにうなずいてディアへと顔を向けて色々とコーディネート案を話し始めた。ディアはちょっと戸惑いながらも真剣にジーンの話を聞いている。
その日、イヴォンは夜に帰って来て、改めて私たちに力を貸して欲しいと頭を下げた。
私たちは顔を見合わせて、当然でしょう、と返した。その時のイヴォンの不安に揺れていた瞳が段々と煌めいてくのを見て、私はほんの少しだけ安堵した。
「ハリスンさんにはなんて言ったの?」
「時間をちょうだいって。あなたと並ぶための時間を」
きゃあ、とジーンと私が両手を組んで騒ぐ。ディアは消灯時間ギリギリまで、私たちの部屋で一緒に話した。ディアもそれを聞いて頬を赤らめていた。一番真っ赤だったのは、やっぱりイヴォンだったけれど。
「……私、がんばってみるわ。次の休日にエントリーしてくる」
「応援しているわ、イヴォン」
「わ、わたくしも……!」
「私も!」
どこか吹っ切れたようにも見えるイヴォンに、応援の言葉を伝えるジーン。それに続くように私たちも言葉を伝えた。イヴォンはにこっと微笑んで「ありがとう」と優しい声色で言う。
「……プロポーズされた時は混乱してしまったけれど、もしかしたら丁度良い機会なのかもしれないわ」
「丁度良い機会?」
「……どうして私が彼を好きになったのか、見つめ直す機会」
照れたように視線を下げるイヴォンに、私とジーン、ディアはやっぱりきゃあと騒いだ。身近な人の恋愛話だ。思わずはしゃいでしまう。
「ハリスンさんは、どうやってイヴォンの騎士になったの?」
つい、そう尋ねてしまった。イヴォンは「話していなかったっけ?」と首を傾げる。私たちがこくりとうなずいたのを見て、頬に手を添えてゆっくりと息を吐き……懐かしむように目を細めた。
「……落としたハンカチをね、拾ってくれたの」
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