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3章
3章1話(211話)
しおりを挟むマザー・シャドウとの対決から数ヶ月が経ち、建国祭がスタートした。
建国祭では今年の舞姫――貴族では、私とジーン、ディアが朝、昼、夜、の三回、決められたステージで踊ることになっている。とはいえ、最終日は朝に踊るだけらしい。人気投票の結果を発表しないといけないから。
イヴォンは無事に予選を突破して本選へと足を進めた。
「……緊張して来たわ」
「大丈夫よ、あれだけ練習したのだから」
「そうよ、気合入れていきましょう!」
そう意気込むディアの肩が震えていた。私とジーンは顔を見合わせて、それからぎゅっとディアに抱き着いた。
私たちの体温を感じ取って、ディアは驚いたように身体を硬直させたけど、すぐにふふっと笑ってくれた。そして、目を閉じて、ゆっくりと深呼吸をしてから空を見上げる。
「うん、もう大丈夫。がんばれるわ」
ディアが私たちに顔を向ける。芯の強そうな視線を受けて、ジーンと顔を見合わせてうなずいた。
私たちの格好は、ディアの故郷の民族衣装だ。踊りは大体全ステージ同じだけど、衣装は違う。衣装を変えたり、センターを変えることで変化をつけている。……つもり。
ディアの故郷の民族衣装は、半袖のブラウスに袖なしのボディス、踵まであるスカートとエプロン。それぞれ、衣装の色は別だ。
私たちは用意されたステージへ足を進める。
外にあるステージだから、観光客や国民たちが集まっている様子がよくわかる。……こんなにたくさんの人たちが集まっているなんて……! 私が驚いて目を見開いていると、ジーンがスタスタと歩いていく。手を振りながら。私とディアも、ジーンを真似して手を振りながらステージを歩く。
リハーサルと同じ場所に立ち、すっとカーテシーをすると、わぁぁああ、と歓声が聞こえた。辺りを見渡すと、見知らぬ人たちがこちらを見て手を振り返しているのがわかった。特に、小さな子たちは私たちが手を振ると手を振り返してくれるみたい。
「――ウォルテア王国へようこそ!」
私たち三人の声が、街の中に響いた。
今日のために、構成された魔法のおかげだ。この魔法を構成したひとりに、ヴィニー殿下がいる。建国祭にはたくさんの人が関わっているから、少しでも感謝の気持ちを伝えたい。私たちの踊りで、みんなを楽しませることが出来るのなら……。
「今年はレーベル王国からの留学生、クラウディア王女の協力のもと、オリジナルダンスを作りました。簡単なステップもありますので、皆さんも覚えて一緒に踊ってくださいね!」
私たちが今日、朝のセンターであるディアへと手を向けると、ディアが緊張したように前に出て、カーテシーをしてから顔を上げて微笑みかける。
「――わたくしたちのダンス、是非、楽しんで行ってください!」
ディアの言葉が終わるのと同時に、音楽が流れる。私たちは互いに顔を見てうなずき合い、この日のために練習して来たダンスを披露した――……。
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