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3章
3章6話(216話)
しおりを挟むアンダーソン家で二週間、共に過ごしていたからか、ジェリーはすっかり私に懐いたようだった。そして、自分の出生のことも知り(マザー・シャドウが聞かせたらしい)、それから一気に仲良くなった。
……十三年、一緒に暮らして来た妹(ジュリー)よりも、ずっと仲が良くなった気がする。
「ごきげんよう、ヴィンセント殿下。……紹介しますね。父と母です」
すっと身を横に引いて、紹介してくれた。
ジェリーはブライト家の人たちとたくさん話して、本音でぶつかり合って和解したそうだ。
「初めまして、ヴィンセントです」
「初めまして、エリザベスです。……あの」
ヴィニー殿下と私は立ち上がって、ジェリーのご両親に挨拶をした。私が彼女の父母に尋ねようとすると、ジェリーが私の片腕に抱き着いて来た。そして、緩やかに首を振る。
「……初めまして、レベッカ・ブライトです」
「……娘がお世話になっております、キース・ブライトです」
……優しそうな人たちだ。……その人たちの仲を、マザー・シャドウが引き裂いたのね……。でも、彼女たちは元に戻ることを決意した。
「リザお姉様のダンス、とても素敵でしたわ」
「見てくれたの? ありがとう、ジェリー」
そんな会話をしている私たちを、レベッカさんもキースさんも微笑ましそうに見ていた。
「どうぞ、座ってください。席はまだありますから」
「ありがとうございます」
ヴィニー殿下の言葉に、二人とも椅子に座った。私たちも座りしん、と沈黙が広がった。すると、ソルとルーナがジェリーのご両親をじっと見て、こう言った。
「後遺症もなくてなによりだ」
「――後遺症?」
ソルの言葉に、私たちは思わずソルを見つめた。ソルはばさりと翼を広げて、「そうだ」と続ける。
「マザー・シャドウの魔力を浴び続けていただろう。あれは人を狂わせることに徹している魔力だ」
「あんまりにも長く浴び続けると、考え方が変になったりするよ」
「……あの、それだと私が一番浴びていることになると思うのだけど……?」
マザー・シャドウと一番付き合いが長いのは私だろう。
「エリザベスは大丈夫」
「そういう風に出来ているから」
ソルとルーナの言葉に、私は「どういうこと?」と眉を顰めた。
「そ、そう言えば、リザお姉様は旅芸人たちのことをご存知ですか?」
「旅芸人?」
ジェリーが不穏な気配を察知したのか、パンっと両手を合わせて尋ねる。私が首を緩やかに振ると、彼女は旅芸人のことについて話してくれた。
「建国祭に来ているみたいですよ。いろいろなことを見せてくれるようです」
「へぇ……。時間が合えば行ってみたいな」
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