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3章

3章9話(219話)

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 ジェリーがキースさんとレベッカさんを見ると私たちに向けて緩やかに首を左右に振った。彼らはぎゅっと互いの手を握って見つめ合っていた。

「二人の世界に入ると長いんですよ」

 見慣れているのか、ジェリーは肩をすくめて空を仰ぐように顔を上に向けた。つられるように私たちも空を見上げた。
 透き通るような青空に、白い雲がぷかぷかと浮かんでいてとても綺麗。建国祭の最後まで、こんなに良いお天気が続くと嬉しい。

「夜は星空が広がりそうですね」
「そうね。私が踊る時には出ているかも」
「星空の中でセンターか。綺麗だろうな」

 ヴィニー殿下の言葉に、私は顔を彼に向けて小さく笑った。

「むしろ暗くてよく見えないかもね?」
「うーん、それは……どうだろうね?」

 ヴィニー殿下がニヤッと口角を上げるのを見て、私とジェリーは顔を見合わせてから首を傾げた。
 その言葉の意味を、夜のステージで知ることになる。

「……あの、レベッカさん。私とジェリーの血が繋がっていること、誰に聞いたのですか?」
「この子から。そして、主人からは例の女性に手を出していたこと、クリフ様からは、それが魔力の影響であったことを教えられました。……そして、エリザベス様。例の書物のことなのですが……、ジェリーしか触れることが出来ないのです。触れようとすると具合が悪くなり……、かと言ってジェリーに頼むのも……」
「あ、持ってみましたが、私は大丈夫でした」
「……でしたら、後日、私が引き取りに行きます。すっかり遅くなってしまってすみません」

 レベッカさんは「いいえ」と首を緩やかに振った。
 例の書物――あの魔法書のことだ。どうやら、カナリーン王国の王族の血を引く者しか持てないようね。……どうしてそんなものをマザー・シャドウが持っていたのかしら……。彼女が消えた今となっては、真相は闇の中、ね。

「えっと、ヴィンセント殿下とリザお姉様はどうしてこちらに? 休憩中ですか?」
「うん、建国祭ってすごい人だからね。君たちも休憩?」
「いいえ、リザお姉様の姿が見えたので挨拶に来ただけです。建国祭、お互い楽しみましょうね」

 そう言うとジェリーたちは椅子から立ち上がり一礼してから「それでは」と行こうとしたので、私はジェリーに声を掛けた。

「待って、ジェリー。夜のダンスが終わったら、控室まで来てくれないかしら? そして、そのまま一緒に行きましょう」
「え、私が控室まで行って良いのですか?」
「ええ、警備の人たちに話しておくわ。待ってるね」
「はい!」

 ジェリーが元気よく返事をして、軽く手を振って私たちの元から去って行った。私も手を振り返して、小さく息を吐く。
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