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3章

3章13話(223話)

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 ヴィニー殿下が、私を迎えに来てくれたので、私はちらりと彼を見てからヴィニー殿下と一緒にみんなの元に向かった。
 めーちゃんって……? いえ、聞き間違いかもしれないし……、うん、あんまり考えないことにしよう。

「さてと、これからどうする? 明日もステージだし、軽くご飯を食べて解散が良いかしら?」

 旅芸人のステージを離れて、ジーンがそう尋ねてきた。私たちは顔を見合わせて、どうしようかと話しているとさっきの青年が声を掛けてきた。

「こんばんは」
「えっ? あ、さっきの……」

 みんな青年の登場にびっくりしていた。さっきまで、ステージの上にいたのだから当然と言えば当然だろう。

「いやぁ、さっきはありがとうね。みんなはこの国の人?」
「あ、わたくしは違います。レーベルク王国から留学してきました」
「留学? へぇ、そう言うのもあるんだ、この国。あ、そうだ。オレの名前はハンフリーって言うんだ。よろしくね」

 にこやかに自己紹介をするハンフリーさんに、私たちは少し困惑していた。どうして話し掛けて来たのかもわからないからだ。

「ソル、ルーナ、居るんだろ?」

 ――精霊の名前を呼ばれて、私は目を丸くした。……どうしてこの人が、私の精霊の名を知っているの? 初対面なのに……。ソルとルーナは警戒するように出てきて、ハンフリーさんに対して警戒しているように私の前に出る。

「精霊は姿って変わらないのかな。あれから三百年くらい経っているのに」
「三百年……?」
「カナリーン王国でめーちゃんがソルとルーナを創造してから。ああ、やっぱり記憶がないんだ」

 そう言うとハンフリーさんは少しだけ寂しそうに眉を下げた。そして私たちはと言うと……、ジーンが怪訝そうな表情を浮かべて彼を見ていたし、ディアは「三百年前……カナリーン王国……」とブツブツ呟いていたし、男性陣は私たちを庇うように前に出る。それを見たハンフリーさんが肩をすくめた。

「モテモテだなぁ」
「え……と……」

 なんて声を掛けたら良いのかわからなくて、戸惑いの声が出た。

「……君は一体、何者なんだ?」

 シー兄様の声は硬かった。その正体を見極めようとしていたのだろう。

「何者って、ただの旅芸人さ。……ちょっと、前世のことを覚えているだけの、ね」

 前世、の言葉を聞いて、私は――……いいえ、私たちは息を飲み込んだ、と思う。前世なんて、考えたこともなかった。

「……前世でエリザベスと関係があったのですか?」

 ジーンが困惑しながらも尋ねた。ハンフリーさんはにっこりと微笑んで大きく首を縦に動かし、私へと視線を向けると片目を閉じてウインクした。

「めーちゃんと夫婦だったんだ」
「ふ、夫婦!?」
「うん、めーちゃん、オレが死ぬ前に次に生まれ変わるなら人間が良いって言っていたから、ずっと探していたんだ」

 ……次に生まれ変わるなら、人間が良い? それでは、まるで……、人間ではないような言葉だ。
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